幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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 菜都美の出生届を提出して、俺は社会的に菜都美の父親になった。

「真が父親か」と篤志は言った。

 菜都美を抱っこしながら、篤志を見ると、すかさずキスをされた。


「俺と真が結婚して、真は俺の妻にするつもりだったのにな」


「ごめん」と謝って、俺は黙った。


「カナダでは普通に同性婚ができたんだ。二人でカナダ支社に行って、カナダで住むのもいいかと思ったけど、菜都美がもう少し大きくなってからじゃないと、予防接種の事とか大変だよな」

「ごめん」


 俺は菜都美を抱きしめた。


「勝手に保護者になるって決めた。でも」

「怒ってないよ。俺達には子供を産むことができないから、俺は菜都美の親になれて嬉しい。一緒に育てて行こう」

「ありがとう」

「戸籍上真が父親だけど、俺も父親になるよ。真がママになってもいいけど」

「それは無理があるよ」

「この際、カミングアウトして、結婚しないか?ここの役所は婚姻証明書を出してくれる。いろんなサービスも受けられるらしいし」

「篤志は結婚してもいいのか?」

「真はしたくないのか?」

「なんだか色々ありすぎて。少し待ってくれる?環境も変わるし、会社にも慣れてからでもいいかな?」

「勿論いいよ」

「そろそろマンションに行こう。引っ越し業者が来る」

「うん」

「赤ちゃんは生後一ヶ月は外に出さない方がいいらしいよ。母親が言っていた。免疫がないから病気になると大病になるらしい」

「俺達、連れ回してるよ」

「俺のマンションに行ったら、できるだけ休ませてやろう」

「うん」


 俺は腕の中の小さな菜都美を抱きしめた。

 マンションに到着すると、引っ越し業者が待っていた。


「すみません」と謝罪を言って、篤志の部屋に運んでもらう。


 篤志もカナダから戻ったばかりで、荷物が散乱していて、部屋の中がぐちゃぐちゃになってしまう。

 篤志は急いで、自分の荷物を篤志の仕事部屋に押し込んだ。

 部屋自体は、クリーニングを頼んでいたので、綺麗でソファーやベッドも埃もなかった。

 俺の荷物を引っ越し業者に寮に取りに行ってもらった。

 お金は余分にかかるが、菜都美に負担をかけたくはないから、菜都美を篤志に預けて、俺だけ連れて行ってもらって、荷ほどきしてない荷物を運んでもらった。

 近所なので、引っ越しは直ぐ終わった。荷物は空き部屋に置いてもらった。

 引っ越しが終わってから、篤志と菜都美のベッドを組み立てて、寝室に置いた。

 ベビーラックはリビングに置いて、菜都美を寝かせた。

 環境が変わって、大きな目を見開いている。

 泣くかなと思ったけれど、なんとか堪えてくれた。

 その間に、篤志と片付けをしてしまう。

 篤志の借りているマンションはファミリー向けだったので、何かと広い。

 寝室は一つ。

 三部屋個室があって、一部屋に篤志はパソコン等を置いている。

 俺にも一部屋もらって、仕事部屋にするつもりだ。

 残りの部屋は菜都美の部屋にするつもりだ。

 今は、実家から持ってきた物を置いている。

 少しずつ片付けていこうと思っている。
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