悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   

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10   結婚について

3   ビエントの苦悩

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 しばらく実家に帰ります   リリー





 たった1行の手紙を見て、ビエントは呆然とした。
 部屋にはリリーの侍女の姿もない。

「家出か?」

 心当たりは、たくさんある。
 冬の洋服も買ってやれなかったし、誕生日祝いもしてやれていない。
 何よりダンジョンの攻略を終えたリリーに、両親はその功績を褒めることもなく、たった一言で済ませてしまった。
 あの時のリリーの落胆した顔を思い出す。
 アトミス嬢には功績を称えた言葉を伝えたのに、リリーにはその言葉はなかった。アトミス嬢の婚約破棄の役目を終えて、リリーにはやること終えたとばかりに実家に帰ってしまった。

 ビエントも気にはなっていたが、急に入った公務が立て込んでいて、リリーを構う余裕はなかった。
 過ぎてしまったことは、もう取り戻すことはできない。
 リリーは愛されていないと孤独を抱えてしまったかもしれない。
 侍女を連れて出て行ったのなら、すぐには戻るつもりはないのだろう。
 ビエントは婚約の笛を吹くが、リリーにその音は聞こえない。
 リリーの部屋は震えるほど冷え切っている。開けられた窓から冬の冷気が入ってくる。それでも、その窓を閉めることはできない。戻ってきて欲しい。
 ビエントが窓枠に足をかけたとき、ビエントの側近が声をかけてきた。

「殿下、国王陛下がお呼びです」
「わかった」

 窓枠にかけた足を下ろして、ビエントは明るい廊下に足を向ける。
 振り向いて、マントと王冠に飾られたトルソーを見る。美しい杖を背中に背負った姿は凜々しい。
 戦場でのリリーはビエントが見たこともないほど凜々しい姿をしていたのだろう。
 時間を戻すことができるのなら、リリーが戦場から戻って来た日からやり直したい。
 明るい廊下に出て、リリーの部屋の扉を閉める。



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