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青年期 353

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「…マジか!」

「どうかしたんですか?」


拠点の自室で報告書を読んでた俺が分身の死による記憶共有に驚愕しながら立ち上がると、紙に何かを書き込んでいるお姉さんが不思議そうに尋ねてくる。


「分身が、俺が死んだ。っていうか殺された」

「え?…え!!??」


俺の報告にお姉さんは一瞬理解してないように呟くと直ぐに驚愕しながら立ち上がった。


「ヤバいわー。流石は厄災の魔女とか呼ばれるだけはある…どんな技術を持ってるかを知るために様子見してたらそのまま死んだ」

「…今の坊ちゃんに攻撃が通ったんですか…?」

「流石に鉄が余裕で溶けるレベルの高温の炎をくらえば俺でも火傷するから、それ以上の温度の攻撃ともなればそりゃ死ぬよ」


俺が若干ヒきながら経緯を軽く話すとお姉さんは信じられないかのように呟くので、俺はツッコミを入れるように返す。


「まあでも変化魔法を一回しか使ってないおかげで魔力の消費がほぼ無いのが幸いか」

「…なんでそんな危険過ぎる攻撃をされてるのに変化魔法を使ってないんですか?」

「使う暇なく一気に決められた。やっぱ事前に治せるところを見せたのが痛かったかぁ…」


俺の不幸中の幸い的な言い方にお姉さんがドン引きした顔で聞き、俺は『使わなかった』ではなく『使えなかった』と女の半端ない実力を暗に知らせるように返して反省しながら呟く。


「あ、流石に今回は鍛錬とかでわざと使わなかったわけではないんですね」

「うん。『厄災の魔女』の呼称に相応しい…全く名前負けしてない強さだね。初見殺しがめちゃくちゃ多い上に最終的に俺を殺せるほどの高威力の技まで持ってる」


お姉さんが安心したように言うので俺は肯定しながら女の圧倒的なまでの強さを教える。


「…坊ちゃんがそこまで褒めるって事はマーリン様が封印という方法を選んだのも頷けますね…」

「まあとりあえず魔力の消耗はほぼ無いし、第二ラウンドといこうか」


お姉さんの頷きながらの呟きに俺は流すように返して変化魔法を使ってスライム化からの分身をした。


「…やっぱり坊ちゃんソレ反則ですって。もう相手の手札はほぼ割れて対策が取れる状態での再戦って…」

「「『再戦』というよりも『再開』。アッチは終わった気になってるかもしれないけどコッチは俺がやられるまで終わってないわけだし」」


お姉さんが微妙な顔をしながらも呆れた感じで言うが俺と分身の俺は否定して訂正するように返す。


「ええ…」

「じゃあ行って来るか」

「おう」


お姉さんは困惑したように呟くが分身の俺は無視して女の所へと向かおうとするので俺はそれを見送る。


「…にしても良く考えたら人間相手に分身の俺が死ぬってのも初めてだな」

「一応自分同士の鍛錬も人間相手では?」

「自分は流石にノーカンでしょ」


俺が椅子に座って意外に思いながら言うとお姉さんは意地悪そうに笑って揚げ足を取るような確認をしてくるが俺は軽く流す。



ーーー



「やあ、待った?」

「!?な…!な、んで…!」


分身の俺は急いで平原へと向かった後に座って休んでる女に待ち合わせのように声をかけると、女は直ぐに振り返った後に驚愕しながら信じられないものを見るような目で分身の俺を見た。


「ふっふっふ…実は『変わり身の術』という技があってね。攻撃が当たる瞬間に身代わりとして用意してる物と入れ替わるんだ」

「ありえない…!だって…跡形も残らず灰になって消えたはずなのに…!」


分身の俺が得意気に笑って忍術の事を話すも女は信じずに否定するかのように返す。


「灰になって消えたのは俺の代わりの人形か木人ってところかな?この技の良いところはねぇ、手応えがちゃんとあるから死体を確認されるまで気づかない…って部分だよ」

「…なるほど。どうやら本当に仕留め損ねた、と」

「死体を確認出来ないほどの大技を使ったのが仇となったね。本来なら後ろからの不意打ちで死んでたよ?」


分身の俺の嘘を重ねての説明に女は納得して理解したように目つきが変わり、分身の俺は嘘がバレたり怪しまれないよう女の非を挙げて警戒を促した。


「…どうせあなたならやらないでしょう?」

「その通り。俺がソレをやるとしたらそれは形振り構ってられない時だけなんだ」

「私じゃ力不足だと言いたいの?後悔しないでよ」

「さあ、第二ラウンドの始まりだ」


女が煽るように確認し、肯定すると何故か挑発と捉えられ…


女は怒ったようにドラゴンに変身するので分身の俺は戦いの再開を告げるように言う。


「…コレはなるべくなら使いたくはなかったんだけど…」


女が形態変化せず、竜人にならずにドラゴンの姿のまましょうがないといった様子で呟くと身に纏う炎の範囲がめちゃくちゃに広がり…


その中心である女の所へと炎が収束するような感じで纏っている炎の範囲が狭まっていく。


「…ん?あれ、コレってもしかしてヤバくね?」


女の力を溜めるかのような行動を見て分身の俺は背中にゾワっと悪寒が走るような感覚がしたので若干ビビりながら呟いた。


「はあっ!!」


キイイィンとなにやら甲高い音が聞こえたと思えば女が技を発動するように叫び…


女を中心に今までとは比にならないほどの規模の大爆発が起きる。
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