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青年期 288

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…そんなこんな雑談しながら歩き、女の子を自室へと招き入れた。


「紅茶とジュースどっちが良い?」

「じゃあ紅茶で」

「…はい」

「ありがと。…お菓子かなんか無いの?」


俺の確認に女の子がそう答えるので空間魔法の施されたポーチから大きい水筒を取り出してカップに注ぐと…


女の子は一口飲んでお礼を言い、笑いながら冗談混じりで食べ物を要求してくる。


「図々しい女だな…何が良い?」

「え。この前のクッキー以外もあるの?」


俺も冗談で返すように呟いて確認すると女の子が意外そうに確認し返す。


「この前の遠征と違ってココはホームだから用意出来るもんはいっぱいあるぞ」

「大福とかおはぎとか?じゃあ…この紅茶に合いそうな洋菓子とかで」


俺の返答に女の子は例に和菓子を挙げてきたくせに少し考えて何故か洋菓子を選ぶ。


「…『紅茶に合う』っていったら…マドレーヌとかフィナンシェとか…」

「わ!うまそう!でもマドレーヌとフィナンシェって一緒じゃない?」


俺が考えながら空間魔法の施されたポーチから紙皿やお菓子の入った容器を取り出して提供すると女の子は喜びながら疑問を尋ねる。


「作り方とか食感がちょっと違う」

「…うまっ!確かに表面のサクッとした感じは一緒だけど、軽さと言うかふんわり感と言うか…しっとりさ加減が違うかも…うま」

「あとはマフィンとか…カステラもどうだ?」

「フィナンシェのナッツのヤツうまっ!マフィンもアーモンド風味で、カステラなんてザラメ仕様じゃん!ヤバっ!どれもうま過ぎ!」


俺の説明に女の子はマドレーヌを一個、一口で食べた後に感想を言い…


フィナンシェと食べ比べながら違いを話すので俺が更にお菓子を追加で出すと、素手でつまんでパクパク食べながら幸せそうな顔をした。


「バームクーヘンもあるぞ。作るのが面倒だったけど」

「いや待って多過ぎ!マジで色んなもん用意出来んじゃん!」

「そりゃな。ポテチとか大学芋とかスイートポテト…シュークリームにエクレア、ケーキ…」

「もういい!マジで全部食べたくなるし、食べ過ぎる自信あるからやめて!今出てるだけでも贅沢過ぎるんだからこれ以上いいよ!」


更にバームクーヘンを一ロール出すと女の子は驚きながらストップをかけるように言い、俺が他に提供出来るモノの種類を話すと女の子は耳を塞いで早口で止めるように返す。


「じゃあバームクーヘンは片付けるか」

「待って。やっぱり一口、一切れちょうだい」

「…はいよ」

「…うっまぁ…めちゃくちゃしっとりしてて口の中の水分を持ってかないお高いやつじゃん…」


俺は容器を取り出して片付けようとするも女の子が人差し指を立てて要求し…一切れだけ切ってあげると女の子はしっかりと味わうように食べて感想を呟く。


「水分を持ってくヤツもあるぞ」

「…これ以上は流石にガチでやめとく」


俺が別の容器を取り出して見せると女の子は目を瞑って遠慮するように断り、カステラを一切れつまんで食べる。




ーーーー




「ふぅ…美味しかった。ご馳走さーん」

「そりゃ良かった」

「カステラとかフィナンシェの作り方教えて。自分でも作って食べたい!」

「えーと…フィナンシェはこの本だっけ?…違う…これか」


女の子は食後の挨拶をすると作り方を聞いて来るので俺は本棚からレシピの乗った料理本を探す。


「本棚とかあるんだ、意外」

「魔導書とかは盗まれたら困るから持ち歩いてるが料理の本は盗まれても困らねぇからな、また買えば良いし。っと、コレとコレ」


女の子が意外そうに言い、俺は理由を話しながら本の内容を確かめて目的のページを開いてテーブルの上に置く。


「…フィナンシェは『フィナンシュ』なんだ…しかもカステラは『カスティーラ』になってる…」

「まあ国が違えば言葉も微妙に違うってこった。俺が知ってる言葉と似たような言葉やいっぱいあっても全く同じ言葉はあまり無いし」

「…国どころか世界も違うからなぁ…」


レシピを読んで軽く驚きながら呟く女の子に俺がそう返すと微妙な顔で呟かれた。


「レシピは写してけよ。この本は隣のドードルで買ったやつだからまた買いに行くのも面倒だし」

「分かった。じゃあ他のも見せて」

「他のってマドレーヌとか?」

「ソレは知ってるからいい。そうだな…シュークリームとか?」


俺は紙とペンをテーブルの上に置いて告げると女の子はペンを取って要求し、例を挙げて確認したら少し考えて種類を挙げる。


「…シュークリームは…確かこの本だったかな?」

「…ってか良く見たらソレ全部料理の本?」

「おう。それ以外の本は無い」

「ちゃんとしっかり勉強してたんだ…てっきり前世で勉強して経験とか技術を引き継いでると思ってたのに…」


俺が本を探しながら呟くと女の子は本棚に置かれてる本の量を見て驚いたように聞き、肯定して返すと女の子が意外そうに呟く。


「それなら普通に宮廷料理人とか目指さねーか?いくら食材調達するためとはいえ、危険なダンジョンになんて入らないだろ」

「…確かに。調理技法を使えば別に魔物素材じゃなくても美味しいものが作れるわけだし」


俺の反論に女の子は少し考えて納得しながら返した。
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