子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 116

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「では報酬を」

「はっ!こちらです」

「え?報酬は多分お嬢さんからもう貰ってるかと思うんですけど…」

「追加報酬だ。王都への移動中に襲撃された娘の救出と王都滞在中の護衛、そしてココまでの護衛と大変助けられた礼として受け取ってくれ」


おじさんは近くに居た兵士に指示を出すと兵士が返事をして袋を差し出してきて、俺が拒否るように言うと理由を説明してくる。


「はあ…ではありがたく」

「ラスタから来た傭兵団については聞いていたが…腕の立つ者達の集まりだそうじゃないか」

「ありがとうございます」


俺が微妙な顔で袋を受け取るとおじさんは猟兵隊を評価するように褒め、とりあえず俺はお礼を言う。


「その団長ともなれば相当できるのだろう…どうだ?私と手合わせをしてみないか?」

「手合わせ…ですか?」

「私に勝てば賞金をやろう」

「…いえ、やめておきます。流石に怪我をさせて今後に支障が出てしまうと困るので…」


おじさんの提案に俺は少し考えて断った。


「ふっ…そうか。だが無理強いはできんからな、残念だ」

「申し訳ございません」

「いや、謝る必要は無い。…が、申し訳ないと思うのならこちらの頼みを聞いて貰えないだろうか?」


おじさんは残念そうに受け入れ、俺が謝ると謝罪を拒否した後に付け入るように確認してくる。


「なんでしょう?」

「私の愚息である嫡男を叩きのめして欲しい。この領内では私を除いて自分に勝てる者は居ないから、と最近では訓練すらまともに受けなくなってしまっている」


頼む。と、おじさんは頭を下げてお願いしてきた。


「構わないですが…大丈夫ですか?」

「ああ、遠慮はいらない。世の中上には上がいる…と言う事を骨身に沁みさせてくれ」

「…分かりました」


俺の確認におじさんが肯定するので俺は本当に大丈夫か?と思いながら了承する事に。


「息子を訓練場へと呼んでくれ」

「はっ!」

「では、訓練場へと案内しよう」

「お願いします」


おじさんは兵士に指示を出した後にそう言って部屋から出て行くので俺も後からついて行くように部屋を出る。


「…ココが屋内訓練場だ」

「おおー…中々広い場所だ…」


宮殿の端っこにある学校の体育館のような広い空間のある建物に案内され、俺は中を見て意外に思いながら呟く。


「…なんだよ親父、こんなトコに呼び出して…また修行にかこつけて息子に暴力を振るう気か?」


5分ぐらいすると青年が兵士と一緒にやって来て気怠そうに嫌味や皮肉を言う。


「いや、お前には今からこの人と戦ってもらう」

「…はあ?なんだソイツ?親父正気か?」


おじさんの俺を紹介するような返答に青年は驚いて馬鹿にするように確認した。


「この人に勝てたら次はヘレネー殿とだ。その二人に勝てたらもう何も言わん。お前の好きにしろ」

「本当だな?親父。ソイツとあと一人のヤツに勝てればもううるさい小言とかは無しだぞ?」

「ああ。二言は無い」


おじさんが俺が負けた時の保険的な事を言って投げやりな感じになると青年の表情が変わって確認し、おじさんは肯定しながら頷く。


「じゃあやってやるよ。…その前にお前誰だ?どこから来た?」

「これでもラスタの傭兵団『猟兵隊』の団長でございます。以後お見知り置きを」

「ラスタだぁ?敵国のヤツじゃねえか!親父何考えてんだよ!」


青年はニヤリと笑って了承すると不思議そうに聞いてくるので俺が軽く自己紹介をすると、青年は怪訝そうな顔で俺を指差しながらおじさんに意図を尋ねる。


「世の中にはお前より強い人間がごまんと居る。そういった強者達に打ち勝ち、領民や国民を守らねばならぬというのに最近のお前にはその気概が感じられん」

「はっ、説教はよしてくれ。それにこんな奴が強者だって?この程度なら何人居ようが負ける気がしねぇけどな」


おじさんの説教を流すように青年は飽き飽きした様子で返し、俺を見た目で判断して舐めるように言う。


「…だがまあ、ラスタのレベルを図るのには丁度いいかもな…」

「お手柔らかにお願いします」


青年は頭を掻いて呟くと腰に差してた剣を抜いて構え、俺は煽るように余裕の態度で告げた。


「おい、お前は武器を構えねぇのか?」

「必要とあらば構えますが?」

「はっ!構えなくていい!そのまま速攻で終わらせる!」


青年の問いかけに俺が聞き返すように言うと青年は鼻で笑って素早く距離を詰めてくる。


「…がっ!?」


…俺は袈裟斬りに振り下ろされた剣の腹を手の甲でいなして軌道をズラし…


青年の懐に入って服を掴んで脚を払うと一本背負いの形で床に背中を叩きつけた。


そしてそのまま馬乗りになって青年の首を絞める。


「か…っ!!」

「おっと…落ちたか」


青年はなんとか抵抗しようと剣を振ろうとするが手を上げた瞬間に気絶したようで俺は首から手を離して立ち上がる。


「…素晴らしい…!なんと無駄の無い動きだ…!」

「ありがとうございます」

「…これで目を覚ましてくれるといいのだが…」

「…そうですね」


おじさんの驚きながらの感嘆したような呟きに俺がお礼を言うとおじさんはため息を吐きながら呟き、俺は青年の言動を思い出しながら微妙な顔で返した。
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