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青年期 117

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「……っ!俺は……負けたのか…!?」


一分ほどで目を覚ましたのか青年は上半身を上げると驚きながら立ち上がる。


「戦場だと死んでいたぞ。訓練を怠るからだ、情けない奴め」

「ち、違う!今のは何かの間違いだ!油断して…そう!油断していたからだ!」

「…戦場でそのような言い訳が通じると思っているのか…」


おじさんがキツイ口調で言うと青年は言い訳し始め、おじさんは頭痛を堪えるようにこめかみに手を当てながら呆れながら呟く。


「もう一度だ!もう一度勝負しろ!」

「なんとも見苦しい…勝負というのは一回限りだと、あれほど…」

「いいですよ」


再戦を求めてくる青年におじさんが冷たい目を向けながら突き放すような事を言い出すので俺は遮るように了承した。


「よし!次はちゃんと本気を出す!」

「ただし。次の勝負で俺に負けたら成人するまで父親の言う事には絶対に逆らわない事…という条件を付けさせてもらいます。それでもよろしいですか?」

「…ははは!それはいい!なんともありがたい条件だ!」

「くっ…!なんだと…!」


やる気になって剣を構える青年に俺が条件を突きつけるとおじさんが笑って賛同し、青年は歯軋りするような反応をする。


「そちらが勝てば父親の口出しが無くなるのならば相応の条件だと思いますが…どうします?」

「お前が本気になれば勝てると言うのなら受けろ。さもなくばさっさと負けを認めて訓練に励んでこい」

「まあさっきの様子を見る限りでは…万が一俺に勝てたところであのお姉さんに負けるでしょうね」


俺の確認におじさんは面白がりながらも厳しい口調で命令するので俺は挑発するように煽った。


「…分かった。その条件を受けてやる」

「では早速誓約書を作成する。次の勝負は一時間後だ、しっかり準備をするんだな」

「ああ」


青年が了承するとおじさんが仕切るように言い、青年は頷いてどこかへと歩いて行く。


「…おそらく次は殺すつもりで来るだろう…家族内の問題に巻き込む形になってしまい申し訳ない」

「いえいえ、とんでもない。条件を出したのは自分ですし」


おじさんの申し訳なさそうな…謝罪するような発言に俺は拒否するように返す。


「しかし…止めるのが遅れてしまえば死亡する、という万が一の恐れが出てしまった」

「大丈夫ですよ。当主様が相手ならともかく訓練を怠るような息子には万が一も無いでしょうし…二度の勝利で報酬を増やしてくれるならありがたいです」

「分かった。息子に勝った時には報酬の増額を約束しよう」


俺がおじさんを立てつつ雰囲気を変えるように金の話に持っていくとおじさんの表情が柔らかくなり、了承してくれる。



…そして一時間後。



おじさんと青年が紙の内容を確認し合ってお互いに紙にサインをした。


「…さっきはまぐれだった、って事を思い知らせてやる」

「見たところ防具を着けてるぐらいしか変化はありませんけど…素手の俺を相手に防具って意味あります?」

「貴様も武器を取れ!今度は油断せず対等な条件で叩きのめしてやる」


おじさんとのやりとりが終わった後に青年が剣を抜きながら闘志を剥き出しにして言い、俺の茶化すような確認に青年は剣を突きつけて命令してくる。


「…俺としては素手の方が戦い易いんですが…まあやり方を合わせてあげましょう」

「…舐めているのか?」


俺が微妙な表情をしながら格上の余裕を見せ、空間魔法の施されたポーチから金属の棒を取り出して構えると青年は怒ってるかのように聞く。


「おや?命のやりとりがしたかったんですか?違うでしょう?あくまで『手合わせ』、試合形式なのですからコレで十分です」

「…ふー…そうか。死ね」


俺がおちょくるように確認しながら理由を話すと青年は息を吐いて冷静になったように覚悟を決めた表情で冷たく返す。


「あっはっは、死ねとはなんと物騒な。そんな出来もしない事を軽々しく口にはしない方が良いですよ?」

「…くっ…!」


青年の距離を詰めての切り掛かりを軽く避け、振るう剣を金属の棒で次々と弾きながら俺は余裕を見せて馬鹿にするように煽った。


「振りが甘い、踏み込みが浅い、重心もブレている…せっかく剣速は速くてもこれじゃ重さが足りずに威力が出ない」

「…!黙れ!!」


キンキンと鉄同士が軽くぶつかる音を鳴らしながら俺が呆れた様子で指南するように告げると、青年は恥ずかしがってか怒るように叫ぶ。


「まあでもコレで自分の足りない所や課題に気づけました?」

「なっ…!?」


俺が最後に素手で剣を掴んで止めながら聞くと青年は驚愕してそれどころじゃなさそうなので…


「では終わりましょうか」

「がっ…!」 


俺は無刀取りの要領で剣を奪って適当な場所に放り投げ、金属の棒で側頭部を叩いて気絶させる。


「…俺の勝ちですね」

「素晴らしい…!いや、見事だ。訓練を怠けていて普段よりも腕が鈍っているとはいえ、まさか我が息子がここまで相手にならぬとは…!素晴らしい!」

「…ありがとうございます」


俺が剣を拾って勝利を宣言するとおじさんが拍手して驚きながら褒めてくるので俺はとりあえずお礼を言う。
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