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青年期 10

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…テントの外に出た後、男が各テントを回りながら武器の無償譲渡の話をして行くと…


男に言われた場所に立って待っていた俺の所にたくさんの人達が武器を求めてやって来る。


「槍をくれ!槍!」

「剣が貰えると聞いてきたが!」

「はいはい。ある分だけしか無いけど、みんな落ち着いて取り合ったり喧嘩しないようにねー」


手を差し出しながら要求してくる男達に俺が戦場で拾った剣と槍と矢を地面に置いていくと…


「俺はコレだ!」

「俺はコレ!」

「この槍は俺が貰う!」


みんな武器の状態を確かめる事なく我先にと武器を取ってテントに帰って行く。


「ははは、凄い騒ぎだな」

「やあ少年。また面白い事をしているな」

「…あ」


地面に置いた武器がどんどん無くなっていき、群がって来た人の数が減って行くと知り合いのハンター達が笑いながら声をかけてきた。


「噂の傭兵とは君の事だったのか」

「ハンターなのに軽装の傭兵がいる、と聞いて直ぐに分かったよ」

「…少年が来た、という事はどうやらこの戦いは我々が勝ったも同然だな」


話を聞きつけたのか、更に続々と知り合いのハンター達が俺の所へと集まって来る。


「…知り合いか?」

「うん。ダンジョンの方で知り合った」

「彼もハンターかい?」

「そうだ。先の出陣で一緒になった」


男の問いに俺が答えると爽やかな青年が尋ね、俺が言う前に男が自分で答えた。


「へぇ…じゃああの突撃部隊の一人、と言うわけか…」

「その割には元気そうだな。先に戻って来た者達は皆ボロボロの様子だったが…」

「見た目ほどでは無いが…軽傷で済んだのはコイツの近くに居たおかげだろうな」


他のハンターの言葉に男は俺を示しながら自分がまだマシな状態である理由を予想して話す。


「ははは!謙虚だなぁ。謙虚な実力者だと話が通じるからありがたいものだね」

「あの敵兵の中に突っ込み、生きて戻れたのは実力がある証だ」

「うんうん。ハンターじゃない一般の傭兵ならほとんどが途中で脱落してただろうからね」

「…あの状況で一人も欠ける事なく生還出来たのは、確かに奇跡に近かったように思う」


ハンター達が男を褒めるように言うと男は照れ臭そうにしながら思い出すように当時の状況を説明する。


「そうだね。二度目の突撃の時に反対側の兵達が連携して脱出口を空けてくれたおかげでなんとかみんな生還出来たけど…アレが無かったら半分ぐらいしか生き残れなかっただろうね」

「…それほどまでに過酷な状況下だったのか…」

「だがそのおかげで敵兵達が乱れ、前線を押し返せたと聞く」


俺は奇跡ではなく他の指揮官が有能だったからこその結果である、って事を教えるとハンター達が難しそうな顔をした。


「…そんな状況下でも当たり前のように無傷で武器まで拾う余裕があるお前さんには驚くよ」

「ははは!流石だね!」

「少年ならばソレが出来ても特に驚く事もあるまい」

「ダンジョン内ですら一切の装備を着けずに進む事が出来るからねぇ。最下層でも普段着のままって…最初見た時は目を疑ったよ」


男の呆れたような発言に他のハンター達は驚く事もなく笑いながら納得する。




「…貴殿が先の出陣で傭兵をまとめあげた者か?」

「うん。俺だけど」

「…ではコレを」


俺がハンター達と談笑してると一人の兵に確認するように話しかけられたので肯定すると一枚の封筒を渡された。


「コレは?」

「中身を見れば分かるはずだ。では」


封筒について聞くも兵士は忙しいのか説明する事もなく戻って行く。


「中身は?」

「…『委任状』って書いてある」

「「「委任状?」」」


ハンターの問いに俺が封筒を開けて中に入ってる紙を見ながら返すと他のハンター達も不思議そうな顔をする。


「『戦場において押し込まれていた前線を押し戻す要因を成した功績を認め、傭兵達への指揮権を与えるものとする』だって」

「えっ!?」

「なんと!」

「たった一戦で昇格とは…!」

「…来たばかりの俺が選ばれる、って事は人手不足もそこまでか…って感じもするねぇ」


紙に書かれている内容を読み上げるとハンター達が驚くので、俺はなんとも言えない顔で中に入ってた平たいバッジを見ながら返した。


「…しかし、『傭兵達の指揮権』とはどこまで適用されるものなのか…」

「だよね。10人50人100人と部隊の人数で出来る事がだいぶ変わるからなぁ…ちょっと聞いてくる」


ハンターの一人が顎に手を当てて考えながら呟くので俺も賛同しつつ、侯爵の下へと詳しく聞きに行く事に。


「すみませーん、この委任状についての話を聞きたいんですけど…誰に聞けば良いです?」

「…委任状?少々お待ちください」


侯爵の居たデカイ家へと行って門の前に居る兵士に尋ねると兵士は不思議そうな顔をして家の中へと入って行く。


「…こちらへとどうぞ」


5分ほどで戻って来た兵士は朝の時と同じく庭へと通してくれる。


「お前か。話を聞きたいと言うのは?」


相変わらずおっさんは大きなテーブルに大量の書類を広げている状態のまま尋ねてきた。


「はい。この委任状での指揮権の範囲の確認へと参りました」

「書いてある通りだ。ここに来た傭兵達の指揮を頼む。他の者は領内の兵を率いるので手一杯だからな」


俺が確認をするもおっさんは曖昧なまま答えて理由を話す。


「…お手を煩わせて申し訳ありません。もう一度確認を。傭兵達の指揮範囲…どれほどの人数を率いる事が可能なのかを聞きたいのですが…」

「…そういう事か…全てだ。お前には傭兵全員の指揮を許可しよう」


俺は面倒くせえと思いながら先に謝って詳細を確認すると予想外の返答が。


「全員!?…全員となるとかなりの人数になりますが、本当に俺なんかが指揮してもよろしいのですか?」

「理由は話した通りだ、軍議への参加も許可する。任せたぞ」


俺が驚きながら再度確認するとおっさんは書類に目を向けながら話を打ち切るように言う。


「は、はあ…精一杯努めさせてもらいます」

「…待て」


こんな簡単に決めていいのか…?と思いながら返して戻ろうとしたらおっさんに呼び止められた。


「お前、名はなんと言う?指揮を任せる人間の名前ぐらいは聞いておかんとな」

「…リデックです。『リデック・ゼルハイト』」

「ゼルハイトか。良い名だな…ん?ゼル、ハイト…?」


おっさんに名前を尋ねられたので軽く自己紹介をするとおっさんは笑って褒めた後に不思議そうな顔で呟く。


「まさか…あのゼルハイト子爵家の…!?」

「はい」

「なるほど。噂は聞いているぞ、去年だったか学園に通っていた息子が『生意気な後輩がいる』と話していたな」


おっさんが驚きながら確認するので頷くと思い出すように話し始める。


「…身分を隠し、傭兵として働くのには何か理由があるのだろうが…まあいい。とにかく任せたぞ」


私は今忙しいのだ…と、おっさんはまたしても書類に目を向けながら話を打ち切るように言うので俺は今度こそ戻る事に。


「…話は聞いたな?」

「はい」

「これからは軍議の時に呼ぶ。参加するかは自由だが、生き残りたければ参加する事だ」

「分かりました」


門の近くで指揮官であろう男達が自己紹介もせずに急に話しかけてくるので俺は適当に返事した。
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