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学生期 16

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…そしてその夜。


「そういやエーデル。昼に聞くのを忘れてたんだが、ウチが今なんか大変な事になってるんだって?」


キッチンで弟や妹と一緒に翌日の料理の仕込みをしてる最中にふと昼間のハンターの話を思い出したので、俺は世間話のように確認する。


「え?大変な事って?」

「なにやら変な噂話が流れてるとか」

「…どこでそれを?」


弟は不思議そうに聞いたかと思えば俺の返答に手を止めて真剣な顔になって尋ねてきた。


「昼に行ったダンジョンで。ハンターから聞いた」

「…兄様…」

「…ごめん兄さん。僕ら、父様から兄さんには言うな…って口止めされてたから…」


俺が軽い感じで返すと妹は困ったように弟を見て、弟が仕方ない…って感じで謝りながら黙ってた理由を話す。


「まあ何かしらの理由があるんだろうよ」

「うん。魔石絡みだから兄さんに余計な心配をかけないように、って」

「あと、この騒ぎのせいでお兄様が責任を感じて行動を自重するようになるかもしれないから、絶対に知られないようにしろ…とも言われました」


俺の適当な返事に弟と妹が父親から聞いた口止めの理由を話し始める。


「行動を自重?」

「兄さんが大人しくなるんじゃないか…って心配してるんじゃない?ダンジョンに行かなくなるとか、修行をやめるとか」

「ああ、なるほどね」


俺が不思議に思いながら聞くと弟は父親の思惑を予想しながら答えるので、俺は魔石絡みだからか…と納得して返した。


「最初に噂を広めた人達は魔法協会側で処罰したみたいだけど…それで広まった噂が収まるわけじゃないし、その噂を口実に利用して他の貴族達も動いてるから近い内に立ち入り調査を受けるんだって」

「立ち入り調査?」

「身の潔白を証明するための茶番だよ。二時間ぐらいお茶して帰って『何もありませんでした』って声明を出してもらう予定みたい」


弟の話を聞いて俺が疑問を尋ねると笑いながら説明する。


「へー」

「無い物はどんなに血眼になって探してもありませんもの。魔法協会の上層部も政府もソレを理解しているのですけど、ポーズとしてやらないと噂に踊らされた人達を抑えきれないそうです」

「そこまでいってるのか…確かに面倒な事態に巻き込まれているな」

「全くだよ。あ、でも魔法協会の上層部は直ぐに謝罪に来てた、って父様や母様は言ってた」


妹が呆れながら言うので俺が意外に思いながら返すと弟も呆れたように言い、思い出すように話す。


「つまりは下っ端とか協会員の暴走か…まあ秘匿事項は上層部とか政府の方でも一握りしか知らない秘密だし、ソレを知らせるわけにもいかんから止めるための説明も大変だし…で、色んな方面で面倒な事態になってんのか」

「うん。でも一応兄さんは知らない事になってるから気にしないでね?」

「いつも通り過ごしてくれませんと私達がお父様に怒られてしまいます」


だいたい現状を把握出来たので俺がややこしく思いながら言うと弟と妹が念を押すように釘を刺してきた。


「まあ俺には関係ないっていうんなら知らぬ存ぜぬで通すよ」

「お願い。そういや特別クラスはどうだった?上級生の引率だなんて大変だったでしょ?」


俺の了承に弟は笑った後にすぐさま話題を変えてくる。


「いや?やっぱり上級生だけあって優秀でしっかりしてたよ。引率者なんて必要か?って思うぐらいにはな」

「そうなんだ」


俺が否定して返すと弟は意外そうに返す。


「俺は何もしなかったし…上級生達も第五階層のオーガを倒せるぐらいには強かったぞ」


貴族にそんな強さが必要か分からんけど…と、俺は上級生を褒めつつおどけるように疑問を言う。


「一応いずれ人の上に立つ身分だからね。ある程度の実力は必要でしょ」

「確かにな…でも正直な所を言うと、魔法を連発しまくれば初心者用のダンジョンのボスぐらいなら普通に倒せるはずなのに…なんでわざわざ近接武器を使って苦戦してるんだ?って疑問に思うわけよ」


困ったように笑いながら答える弟に俺はダンジョンで感じた更なる疑問をぶつけた。


「…それは…」

「ま、なにかしらの考えがあっての事なんだろうけどよ」

「…でも確かに…学校では基本的に実践や実技でもほとんど魔法を使うよね?『授業だから』っていったらそれでおしまいだけど…」


弟が言い淀むので俺が適当に流して締めると弟は考えながら不思議そうに言う。


「決闘とかの個人戦でも魔法戦だからな…やっぱり何かしらの意味があるのかもしれん。エーデル、お前がもし野外学習に行く事があったらその理由を教えてくれ」

「あ。うん、分かった」


俺も少し考えながら返すもさっぱり分からなかったので弟にその疑問の答えを託す事に。
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