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学生期 15

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…それから二時間後。


生徒達はまだ第四階層から先に進めず魔物達に苦戦を強いられていた。


「ん?おお!少年じゃないか!久しぶりだな」

「え?ああ」


俺が生徒達を見守っていると近くを通った一人のハンターの男が声をかけてくる。


「一人ですか?」

「ああ。この階層に用があってな、第四までなら俺一人でも十分だ」

「そうですか。でも気をつけてくださいね」


俺の問いに男が笑って返すので俺は念のため注意を促す。


「大丈夫だ、無茶はしないさ。それより…最近噂で聞いたんだが、なんかまた面倒な事に巻き込まれてるみたいだな。大丈夫なのか?」

「えっ?俺が?…なんかあったかな…?」

「ゼルハイト家は君の実家だろう?」


男は笑った後に逆に心配したように聞いてくるので俺が驚きながら聞き返すと不思議そうに確認してきた。


「え?」

「…何も知らないのか?…そうか、すまん」


俺がまたしても驚きながら聞くと男は察したように気まずそうな顔をして謝る。


「何かあったんですか?」

「ああ……うーむ…しかし……俺がこの場をごまかして切り抜けたとていずれ他のハンターから聞く事になるだろうから、隠しても無駄か…よし。今の内に話しておこう」


俺の問いに男が困り顔をしながらも葛藤したように腕を組んで呟き、言い訳のように独り言をしながら決心したように言い出す。


「あくまで噂でしかないが、なんでも『ゼルハイト家が反乱や内乱を起こそうとしている』という言いがかりをつけられていてな」


俺が黙って続きを待っていると男は前置きをした後に話し始めた。


「まさか…!」

「そのような難癖をつけられたらたまったもんじゃないだろうな…」


その内容に驚いていると男が同情するように呟く。


「なぜそのような噂が?」

「事の発端は魔法協会らしい。が、当の魔法協会の上層部や政府はその噂が流れ始めると即座に噂の内容について否定した」


俺の疑問に男はよく分からない事を言い始める。


「魔法協会…?」

「これも噂でしかないが…なんでも『最近魔法協会に魔石を卸さないのは怪しい』『きっとゼルハイト家が貯め込んでいるに違いない』『軍事利用のために大量の魔石を貯めている』と、魔法協会の奴らが色んな所で愚痴っていたそうだ」


魔石なんてモンがそんな簡単に手に入るワケがないってのによ。と、男は呆れたように肩を竦めながら噂が広まった経緯を話してくれた。


「なるほど…そしてソレを聞いた人達が噂を広めた…」

「そういう事になる。あまりの噂の広がりに『ゼルハイト家には近々立ち入り検査や監査が入る』って噂も出てるが…」

「…全然知らなかった…」

「…まあ、あくまで噂だ。子供に不要な心配はかけたくなかったんだろう」


ハンターの男は更に新しい噂を口にするので俺がびっくりしながら呟くと笑いながらフォローするように返す。


「…ありがとうございます」

「いや、事情を察せずに軽々しく聞いた俺も悪かったからな。まあ…なんだ。噂はあくまで噂なんだからあまり気にするなよ」

「はい。ありがとうございました」


俺がお礼を言うと男は気を遣ったかのような事を返すのでもう一度お礼を言う。


「…おっと、俺はそろそろ行かないと…少年、またな」

「はい」


すると男は腕時計を見ると俺達とは別の方向に行こうとして別れの挨拶を言いながら手を振るので俺も手を振り返した。


「…ん?」


…第五階層に向かって進んでいると階段近くの通路の端にうずくまっている人が。


「どうかしたんですか?」

「…下の…オーガに…」

「なるほど。ではコレを」


俺の問いに青年は魔物にやられて怪我で動けなくなってる事を告げるので、俺は薬草を煎じた薬…回復薬をあげる事に。


「…すまない。助かった」

「いえ」

「やはりオーガは強敵だな…まだ一人では難しかったか…この恩は忘れない。では」

「あ、はい」


回復薬を飲んだ青年はお礼を言って立ち上がり危険を再認識したように呟くと去って行った。


「…階段だ!これでようやく五階層に降りられる!」

「でも降りて大丈夫?オーク達でさえこんなに苦戦してるのに…」

「大丈夫じゃないか?オーガぐらいなら今の俺達でもなんとかなるはずだ」

「それにここまで来て降りない…と言うのもな…」


生徒達が次の第五階層に続く階段を発見すると、男子生徒3人と女子生徒一人で先に進む進まないを話し合う。


「…お前はどう思う?」

「自分ですか?良いと思いますよ。今のこのグループの実力ならオーガまでは倒せると思いますし」


珍しく男子生徒の一人が俺に意見を聞いてくるので俺は肯定的に答える。


「…気に入らないな。随分と上から物を言うじゃないか。引率者に選ばれて俺達より偉くなった気でいるのか?」

「まあ、このダンジョン内に限った話をすれば実際偉いですからね。だから自分に判断を尋ねたんでしょう?」

「チッ…生意気な後輩も居たもんだ。とりあえず行くか」

「そうだな」


男子生徒の一人が俺に突っかかってくるので大人の対応で返すと他の生徒が舌打ちして階段を降り、他の生徒達もついて行くように第五階層へと降りて行った。


「いた、オーガだ。しかし…」

「周りにオークやゾンビが…」

「あの数は辛いな。他の所へ行こう」

「そうだな」


生徒達は魔物を発見するが数を考えて一旦来た道を戻り、また別の道を進む。


「おっと…そろそろ時間ですね。戻りましょうか」


…生徒達が魔物の群れを避けながら進んでると戻る時間になったのでそう伝えるも…


「なんだって?まだオーガと戦ってないのに引き返せというのか?」


男子生徒の一人が反発するように返す。


「また次、という事で今回は戻りましょう。何も今回が最後というわけじゃありませんし」

「…そうね。そうしましょう」

「だけどせっかくココまで来たのに、魔物と戦わずに帰れるかよ!」

「そうだ!せめて一戦ぐらいは戦わないと後から悔いが残るかもしれないぞ」


俺はちゃんと言い方を考えながら帰還の指示を出したのに、女子生徒は賛同するも男子生徒二人が反対した。


「別に構わないですけど…多分倒すのに時間かかるでしょうし、その分他の生徒達を待たせる事になりますよ?」

「ぐっ…!」

「…仕方ない。次の機会にしよう」

「…ここまで来て…!」


俺が他の生徒達を引き合いに出して返すと流石に男子生徒達は諦めたようなので…


「じゃあ戻りましょう」


他のみんなを待たせないよう急いで戻る事に。
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