上 下
23 / 480

学生期 7

しおりを挟む
…そして数ヶ月後。


「お兄様、聞きたい事があるのですが」

「ん?」


夕食後に自室で翌日の昼飯の仕込みをしてると妹が疑問を尋ねるように話しかけてくる。


「魔法の事を勉強すればするほど変化魔法の扱いの異様さが際立つのですが…なぜお兄様はわざわざ変化魔法などをお選びになったのですか?他にも選択肢はあったハズですのに…」

「リーゼ!もう少し言葉を選びなさい!兄さんに失礼だろう!」

「おいおいエーデル。そんなに怒るなよ」


妹が変化魔法を下に見ながら蔑むような感じで疑問を聞いてくると弟が叱りつけるので俺は宥めるように言う。


「リーゼ。俺が変化魔法を選んだのは、変化魔法には魔法適性とかが関係無かったからだ。あと楽に簡単にお手軽に強くなりたかったってのもある」

「…まさか、お兄様に…魔法適性が、無い?そんなハズは…!だって…」

「…マジか。エーデル、ゴメン」


俺の返答に妹は信じられないかのように驚くので俺は、口止めされてたのか…と思いながら弟に謝った。


「いや、遅かれ早かれだ…僕達も、いずれリーゼにも伝えなければ…とは思っていたから」

「どういう事ですの?一体なにを…」

「うーん…リーゼ、エーデルが父さんの後継ぎで次期当主だって事は分かるよな?」

「は、はい」


弟がため息を吐きながら仕方ない…といった様子で呟くと妹が困惑したように聞くので、俺はちょっと説明に困りながら確認する。


「なんで長男の俺じゃなく次男のエーデルだと思う?普通なら嫡男が後を継ぐのが当然で、ソレが常識なのに」

「それは……そう考えたら…」

「…兄さんには魔法適性が一切無いんだ。魔力持ちなら大なり小なり違いはあれど誰しも何かしらの魔法適性は持ってるハズなのに」


俺の問いに妹が我が家の後継者事情のおかしさに気づいて呟くと弟が気まずそうに説明した。


「まあその代わり膨大な魔力があるけどな。適性が一切無い魔力持ちは普通の魔力持ちに比べて魔力量が桁違いに多い…ってのはまだ習ってなかったか」

「で、でしたら…なおさら、なぜ変化魔法なんかを…?」

「適性が無い魔法を無理やり使うと魔力の消費量が数倍に増え、詠唱も長引き、更に威力が本来の8割ほどしか出ないって欠点があるんだよ。…僕も兄さんに聞いてから調べたんだけど」


適性無しのなけなしのメリットを挙げると妹は余計に疑問に思いながら聞き、弟がその際のデメリットを話す。


「そんな…じゃあどんなに魔力が多くても、使いようが…」

「だから適性が関係無い変化魔法が俺には救いの糸に見えたわけだ。…でも適性無しでの変化魔法の使い手は現状俺だけっぽいけど」

「そりゃ普通はハンデを抱えても属性魔法や強化魔法、回復魔法を選ぶからね」


この国じゃ変化魔法の使い手は兄さんだけだし。と、弟は俺の返答に反論すると呆れながら言った。


「前の家庭教師ももうこの国には居ないからなぁ…オンリーワンってカッコ良くね?」

「ただの奇人か変人、それか狂人でしょ」

「兄様の方が私よりよっぽど酷い」


雰囲気を変えるように俺がおどけながら聞くと弟もそれを察して鋭くツッコミを入れ、妹が笑う。


「まあさっきも言った通り変化魔法って周りから蔑まれるわボロクソ言われてるわ忌避されてるわ…で、印象とかめちゃくちゃ最悪だけど…実は意外と便利なんだぜ?」

「いやソレ、フォローし切れてないよ」

「じゃあお兄様。その便利な変化魔法とやらをなにか見せて下さります?」


俺の感想に弟がやっぱり呆れたように返すと妹がいじわるとかイタズラするような感じで笑いながら促す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜

アーエル
ファンタジー
女神に愛されて『加護』を受けたために、元の世界から弾き出された主人公。 「元の世界へ帰られない!」 だったら死ぬまでこの世界で生きてやる! その代わり、遺骨は家族の墓へ入れてよね! 女神は約束する。 「貴女に不自由な思いはさせません」 異世界へ渡った主人公は、新たな世界で自由気ままに生きていく。 『小説家になろう』 『カクヨム』 でも投稿をしています。 内容はこちらとほぼ同じです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...