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第18章 帰郷と運命の結末
No,236 ナッキーの部屋で②
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その夜──。
「え?あさって?あさってに帰るの?………理久、1週間くらいは居るって言ったじゃないか……」
ナッキーが思った以上にがっかりしてる。
「うん、でも思ったより早く雑事も済んだし、実家に送った荷物も多い。やっぱそう、気が焦るんだ。早く向こうを起動させないと……」
「でも、分かるけど………オレ、この1週間を楽しみにしていたのに。だって理久、ここ数ヶ月退職準備ですごく忙しかっただろ?
あまり会えなかったし……やっとゆっくり出来ると思ってたのに」
ナッキーらしくなく、口を尖らせて駄々をこねる。
俺はそんな伏せ目勝ちな顔を覗き込んでニヤリと笑った。
「そのゆっくりなんだけど、あさってと言えば土曜日だろ?」
「そうだね……」
「急な思い付きてドタバタだったんだけど、箱根に宿が取れた。
一緒に温泉でゆっくりしよ?」
ナッキーが目を丸くして俺を見た。
「え?ホント?あさっての土曜日だなんて、そんな急な予約が取れたの?」
「あ、覚えてる?昔大学生の頃、仲間と数人で箱根を周遊したじゃない?あの時は金も無くて日帰りの強行軍だったけれど、ナッキー言ってたよな?今度はいつか泊まり掛けでゆっくり来たいって。
それを思い出して、何とか湯本に宿を取った」
「理久……最高……でも……」
ナッキーはもっと爆発的に喜んでくれるのかと思ったのに、何だかむしろ静かにキョトンとしている。
「おいおいナッキー!これが最後の思い出作りか、な~んてしんみりするなよ?!」
「あ……理久は、どうしてそんな風にオレの考えてる事が分かっちゃうの?」
「そりゃ、付き合い長いからな」
「だったらその……もっとオレの心の奥底、ちゃんと分かってくれたら.:*:.+::*」
「とにかく秋の箱根と温泉を楽しもう!」
「そうだね。あさって、楽しみだな♪」
ナッキーがようやく満面の笑顔を見せた。
※──────────※
消灯して、二人一緒に枕を並べていた。
(この部屋に泊まるのも今夜と、そして明日のラスト2回…)
そう言えばナッキーがベッドを処分してから随分経つ。俺が泊まる時、ベッドの上と下とに分かれるのが嫌なんだって言っていた。
(何だか俺のせいでベッドを捨てちゃったけれど、仕事の多忙な一人暮らしだ。ベッドの方が便利だろうに)
俺はそっと囁いた。
「ナッキー、起きてる?」
「え、なに?」
「俺が鷹岡に帰ったら、ベッドを買えよな。あ、記念に俺がプレゼントしようか?」
「やだな、記念だなんて。何だか別れの置き土産みたいじゃないか」
「あ、言い方悪かった」
「ベッドはいらない。押し入れ有るし、部屋を広く使えるから」
「あ、そうか。なるほど」
「それに上京した時、理久が泊まるだろ?ベットは邪魔……」
「あ、そうか。ありがとナッキー
……この部屋にも、随分たくさん泊まったな……まるで自分の部屋みたいだ……」
「オレだって理久の部屋を返す時
……何だか自分の部屋を返すみたいで寂しかった」
「あ、そうか?俺は引っ越しの片付けに夢中で、寂しいどころじゃなかったな」
「…………旅立つ側と、置いてかれる側の違いだよ、きっと……」
「ナッキー、俺はナッキーのことをとっても大切に思ってる。置いてかれるなんて言うなよ…」
「じゃ、また変わらずに来てくれる?」
「ああ、図々しく押し掛けるよ。
ホントはさっき、この部屋に泊まるのも今夜と明日とラスト2回なのかなぁ?なんておセンチに思ったけれど、考えてみればそんな事ないな。
鷹岡に住んでいても東京には色々と用事もある。仕事でも、宝塚でも。これからはこっちに来るたび泊めてもらうよ?」
「ホントだね?きっとだよ?
オレも鷹岡に帰った時は理久の部屋に泊めてもらおっと♪」
「おいおい、実家があるだろ?不義理はするなよ」
「あ、そうか、えへへ……」
「あさっての箱根の前に、明日は仕事だろ?もう寝よ?」
「うん、お休み理久…………」
(明日は早く起きて朝飯作ろ♪)
──俺とナッキーと、どちらが先に眠ったのかは分からない。
「え?あさって?あさってに帰るの?………理久、1週間くらいは居るって言ったじゃないか……」
ナッキーが思った以上にがっかりしてる。
「うん、でも思ったより早く雑事も済んだし、実家に送った荷物も多い。やっぱそう、気が焦るんだ。早く向こうを起動させないと……」
「でも、分かるけど………オレ、この1週間を楽しみにしていたのに。だって理久、ここ数ヶ月退職準備ですごく忙しかっただろ?
あまり会えなかったし……やっとゆっくり出来ると思ってたのに」
ナッキーらしくなく、口を尖らせて駄々をこねる。
俺はそんな伏せ目勝ちな顔を覗き込んでニヤリと笑った。
「そのゆっくりなんだけど、あさってと言えば土曜日だろ?」
「そうだね……」
「急な思い付きてドタバタだったんだけど、箱根に宿が取れた。
一緒に温泉でゆっくりしよ?」
ナッキーが目を丸くして俺を見た。
「え?ホント?あさっての土曜日だなんて、そんな急な予約が取れたの?」
「あ、覚えてる?昔大学生の頃、仲間と数人で箱根を周遊したじゃない?あの時は金も無くて日帰りの強行軍だったけれど、ナッキー言ってたよな?今度はいつか泊まり掛けでゆっくり来たいって。
それを思い出して、何とか湯本に宿を取った」
「理久……最高……でも……」
ナッキーはもっと爆発的に喜んでくれるのかと思ったのに、何だかむしろ静かにキョトンとしている。
「おいおいナッキー!これが最後の思い出作りか、な~んてしんみりするなよ?!」
「あ……理久は、どうしてそんな風にオレの考えてる事が分かっちゃうの?」
「そりゃ、付き合い長いからな」
「だったらその……もっとオレの心の奥底、ちゃんと分かってくれたら.:*:.+::*」
「とにかく秋の箱根と温泉を楽しもう!」
「そうだね。あさって、楽しみだな♪」
ナッキーがようやく満面の笑顔を見せた。
※──────────※
消灯して、二人一緒に枕を並べていた。
(この部屋に泊まるのも今夜と、そして明日のラスト2回…)
そう言えばナッキーがベッドを処分してから随分経つ。俺が泊まる時、ベッドの上と下とに分かれるのが嫌なんだって言っていた。
(何だか俺のせいでベッドを捨てちゃったけれど、仕事の多忙な一人暮らしだ。ベッドの方が便利だろうに)
俺はそっと囁いた。
「ナッキー、起きてる?」
「え、なに?」
「俺が鷹岡に帰ったら、ベッドを買えよな。あ、記念に俺がプレゼントしようか?」
「やだな、記念だなんて。何だか別れの置き土産みたいじゃないか」
「あ、言い方悪かった」
「ベッドはいらない。押し入れ有るし、部屋を広く使えるから」
「あ、そうか。なるほど」
「それに上京した時、理久が泊まるだろ?ベットは邪魔……」
「あ、そうか。ありがとナッキー
……この部屋にも、随分たくさん泊まったな……まるで自分の部屋みたいだ……」
「オレだって理久の部屋を返す時
……何だか自分の部屋を返すみたいで寂しかった」
「あ、そうか?俺は引っ越しの片付けに夢中で、寂しいどころじゃなかったな」
「…………旅立つ側と、置いてかれる側の違いだよ、きっと……」
「ナッキー、俺はナッキーのことをとっても大切に思ってる。置いてかれるなんて言うなよ…」
「じゃ、また変わらずに来てくれる?」
「ああ、図々しく押し掛けるよ。
ホントはさっき、この部屋に泊まるのも今夜と明日とラスト2回なのかなぁ?なんておセンチに思ったけれど、考えてみればそんな事ないな。
鷹岡に住んでいても東京には色々と用事もある。仕事でも、宝塚でも。これからはこっちに来るたび泊めてもらうよ?」
「ホントだね?きっとだよ?
オレも鷹岡に帰った時は理久の部屋に泊めてもらおっと♪」
「おいおい、実家があるだろ?不義理はするなよ」
「あ、そうか、えへへ……」
「あさっての箱根の前に、明日は仕事だろ?もう寝よ?」
「うん、お休み理久…………」
(明日は早く起きて朝飯作ろ♪)
──俺とナッキーと、どちらが先に眠ったのかは分からない。
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