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第5章 微笑みの影の危うい性

No,58 平田をばかにするな!

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【これは高校1年のお話】

 ジュンと関係を持つようになって、俺は以前にも増してジュンの家に寄ることが多くなった。そんな日は平田と一緒には帰らない。
 俺はジュンの家に寄る事を隠さなかった。クラスメイトだし、人間関係は部活内ばかりとは限らない。 
 平田はこれに関して文句も疑問も何も無かった。 ちょっとでも焼きもちを焼いてくれて、
「ええっ?一緒に帰らないの?」なんて駄々をこねてくれたなら、俺はもしかしてジュンとのSEXよりも、平田と一緒を選んだかも知れない。 
──でも、そんな奇跡のような反応は一度もなかった。  


 ここで少し、登場人物の容姿に触れる。なぜならこの後それに関するエピソードが控えているから。 

 圭は男の子らしくて爽やかで、ちょっと可愛かったのはまだ中学生だったから?顔だけでなく、全身からスポーツマンらしい雰囲気を漂わせる少年だった。 
 佐藤は、立派だったのはがたいだけでなく、目、眉、鼻、口、どれもしっかりくっきりしていて、案外な濃厚顔。 

 亮ちゃんは………… そうだな、亮ちゃんは亮ちゃん。俺が一番安心する顔。 
 そしてジュンは、圧倒的にハンサムだった。俺は面食いではないってかねがね言ってるけど、あのハンサムぶりにはめまいを起こしそうになった事すら……。 

 そして平田だ。 
 小柄で華奢だとは前にも書いたけれど、今回のエピソードでは「顔」が関わってくる。 


※──────────※


 それはかなり冷え込んできた、冬の初めの頃だった。
  俺は平田と連れ立って繁華街の書店に来ていた。 参考書か何かの用事があっての事で、もちろん普通のでかい書店だ。
  二人は少し離れて、それぞれに別の書棚を見ていた。 

──突然、平田に向かって声が掛かった。 
「あれ?まことちゃんじゃね?」
「おう!まことちゃんだよ!なんだよおまえ、絵本でも買いに来たか?」 

 俺はその声に振り返った。
 他校の制服を着た二人が平田をはさんでニヤニヤしている。 明らかに好意的な素振りには見えない。 
 平田は顔を真っ赤にして下を向き、両手を結んで震えてる。どう言う状況かは一目瞭然だ。 

「まことちゃんその制服、おまえ、あそこに行ってんの?おまえんち、そんなに金持ちだっけ?」 
 平田は顔面蒼白で何も言えない。ただ、唇を震わせている。
「まことちゃん何かずるい事してね?ちゃんと試験受けたのか?」 
 
 平田の名前は「まこと」じゃない! !

 俺だってそんなに強そうに見えるタイプじゃない。もし相手が典型的な不良で強面こわもてだったら、いくら何でもああは出来なかった。 平田の手を握って、その場から一目散に逃げたかも知れない。 
 でも、そいつらは俺から見たら平田と変わらないちびっ子だった。俺は平田とやつらの間に割って入り、平田の肩を抱き寄せた。そしてやつらに向かって凄んでやった。

「おまえら、平田の友達?」 
「え?」 
「友達かって聞いてんだよ」 
「あ、ああ」 
「平田は俺の親友なんだ。おまえらが平田と友達だってぇなら、俺とも友達だってぇ事だよな?」 

 俺は胸を張って鳩胸状態。高身長をいいことに上から目線で見下してやった。 
「なんだこいつ、頭変じゃね」
 とか何とか言って、やつらはそそくさと立ち去った。

「れ、歴野……」
 平田が顔をそむける。
 俺は抱き寄せた平田の肩をそのままに、静かに書店から連れ出した。 


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