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モノローグ ③

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──潮風の届く丘にて

 あの真夏の日を境に、僕はよろいを脱ぎ捨てた。
 あの日から突然、僕は君に素直になれた。
 そんな僕を──身勝手な僕を、君は笑顔で受け入れてくれたね。

 春の日差しに芽生えるように。
 魔法の呪文が解かれたように。
 僕たちは急速に親しくなった。
──クラスの誰もが認めるくらいに、僕たちに友情と言う絆が生まれた。

 楽しかった初等部時代──思い出はいつも、君の笑顔から始まる。
 君無しでは考えられない、あの子供時代の夢と、ときめき。
 僕たち二人は空を駆けた。
 僕たち二人は未来に遊んだ。
 何の変哲もないあの頃の日常が、今の僕には懐かしい思い出。

 こうして和志とこの丘に立つ時、和志は何を思うのだろう。
 こうして和志と海鳴りを聞きながら、黙って水平線を眺める幸せ──。

 今日もこの丘で潮風に吹かれ、僕は君との過去に出会える。

──Memories  of  you

 僕たち二人は、中等部へと進んだ。


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