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6-1、カメ、逃げる
エターナニル魔法学園特殊クラス
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空は快晴、絶好のピクニック日和である。
「平和どすなぁ」
「そうだね・・・・・・」
などと言ってのんびり歩いていたつい先程に戻りたいレイカは切に願った。
「おら、盗賊だぜ。有り金全部だしな!」
おきまりの文句で出現した二十人のゴツイ男性に囲まれて身動きが取れない。逃げ道などすぐさま塞がれてしまった。今思えば、リトアが言い淀んでいたのはこれを暗示していたからだったのだろうか。それならそうと早く言ってくれれば道を変更したりできたはずだ。リトアは先程から何かを考えていたようだ。
レイカを庇ってリトアが前に出ているが、後ろからも盗賊が、基男が迫っている。レイカの蚤の心臓は爆発寸前だった。手にした扇がカタカタと震える。
「・・・お金はありません」
困ったことに事実だった。リトアの稼いだお金は全て薬草代に変わったし、レイカは学園ギルドに報告するまで報酬は受け取れない。バカにならない食費も相まっての旅行最終日。どちらの懐も寂しかった。
「はん、そんな訳あるかッ。こちとら調べはついてるんだよ」
「貴様らが黄金の招き猫像を持ってるってことはな」
「ついでに持ち金も頂いていくってすんぽうよ」
「「「「よ、お頭、頭良い」」」」
盗賊の言葉に二人は首を傾げた。有り金は分かる。二人で5銀貨(約5000円)しかもっていないが、お金はお金だ。欲しいのだろう。だが、黄金の招き猫像とは何のことだろうか?いや、金色のあれのことだろうが、そんなに欲しがるようなものだっただろうか?
「持っていないものは持っていないのですが・・・・・・」
実家にあるかもしれないことはレイカの胸の中にそっと仕舞われた。
「ええい、往生際が悪い。やっちまえ!」
「やっぱりこうなった!」
レイカを胸元に引き寄せるとリトアは奇声を発しながら迫ってきた盗賊に鋭い蹴りを入れる。見事鳩尾に決まったローキックにて何人かの盗賊が吹き飛んでいった。それを見た盗賊達がは一気に攻め込もうとせずジワジワと取り囲んだ輪を狭めだした。
「レイカちゃん、反撃はできる?」
「魔法使ってくれるんやったら」
「・・・その辺の盗賊相手に期待しない方がいいよ」
「そうどすなぁ」
それでも念のため扇を取り出す。突き出された拳を引っ掻けて回せば、立派なカウンター技になる。威力は完全に相手留意なので猪突猛進タイプには有効だ。練習相手がそうだからでもある。
「できれば逃げたいなぁ」
平和主義とかそういうのではなく、剣を持った相手と戦った経験がレイカには欠如しているからだ。逆に武器を持たず魔法で攻撃してくるタイプ、幽霊や魔族なんかとの戦闘経験は多い。一般的な冒険者とは完全に逆になっている。
「そうだね、あ?!」
「どうかしはりました?」
「やっぱり、ちょっと忘れ事思い出した」
「どこまで?」
「獣人族の首都まで」
ここから首都まで三日はかかっている。行って帰るにはその倍の日数が必要だ。実習日数は心配しなくていいだろう。が、
「おまえら、何ブツブツ言ってやがる!」
賊は事情を説明しても帰してくれないだろう。しかも、リトアはすでに三人瞬倒している。只で見逃してもらえるとは到底思えなかった。
「自分のミスだし、仕方がないよね」
そういうとリトアはレイカをさらに抱きしめた。小さいが、温かで柔らかな塊を感じたと思った瞬間、世界が反転した。宙に投げ出された感覚がし、レイカは得体の知れない眩暈に襲われた。
「レイカちゃん、大丈夫?流酔いしてる?」
口を開くと今朝食べた物が逆流してきそうで、レイカは口元を抑えつつ首を縦に振った。
「リトアちゃん、よかった来てたんだね、ってその子大丈夫?」
知らない声に視線を上げるとリトアの隣には、山賊たちではなく、スーツ姿の女性が心配そうにレイカを見下ろしていた。周囲も山道ではなくゴミゴミした機材が積まれた人工的な通路になっている。あの大人数が一瞬でどうかなったのだろうかと考えたレイカに激しい吐き気が襲う。
「遅くなってごめんなさい。彼女流酔いだと思います」
「心配なのはわかったわ。でも、ここは私に任せて早く行きなさい」
「はい。レイカちゃん、ミモリさんが一緒にいてくれるから何かあったら彼女に言ってね」
真っ青な顔で頷くと、リトアは不安そうにしながらも携帯電話をレイカに渡して大きなドアの向こうに消えた。
「レイカちゃんだっけ」
頷きながら貰ったスポーツドリンクを口にする。
「どう?吐いてしまいたいんならトイレに案内するけど」
「・・・大丈夫どす」
まだ動悸が激しいが、飲み物のおかげで吐き気は収まった。少し楽になったのが相手にも伝わったのだろう。安堵のため息が漏れた。
続く
「平和どすなぁ」
「そうだね・・・・・・」
などと言ってのんびり歩いていたつい先程に戻りたいレイカは切に願った。
「おら、盗賊だぜ。有り金全部だしな!」
おきまりの文句で出現した二十人のゴツイ男性に囲まれて身動きが取れない。逃げ道などすぐさま塞がれてしまった。今思えば、リトアが言い淀んでいたのはこれを暗示していたからだったのだろうか。それならそうと早く言ってくれれば道を変更したりできたはずだ。リトアは先程から何かを考えていたようだ。
レイカを庇ってリトアが前に出ているが、後ろからも盗賊が、基男が迫っている。レイカの蚤の心臓は爆発寸前だった。手にした扇がカタカタと震える。
「・・・お金はありません」
困ったことに事実だった。リトアの稼いだお金は全て薬草代に変わったし、レイカは学園ギルドに報告するまで報酬は受け取れない。バカにならない食費も相まっての旅行最終日。どちらの懐も寂しかった。
「はん、そんな訳あるかッ。こちとら調べはついてるんだよ」
「貴様らが黄金の招き猫像を持ってるってことはな」
「ついでに持ち金も頂いていくってすんぽうよ」
「「「「よ、お頭、頭良い」」」」
盗賊の言葉に二人は首を傾げた。有り金は分かる。二人で5銀貨(約5000円)しかもっていないが、お金はお金だ。欲しいのだろう。だが、黄金の招き猫像とは何のことだろうか?いや、金色のあれのことだろうが、そんなに欲しがるようなものだっただろうか?
「持っていないものは持っていないのですが・・・・・・」
実家にあるかもしれないことはレイカの胸の中にそっと仕舞われた。
「ええい、往生際が悪い。やっちまえ!」
「やっぱりこうなった!」
レイカを胸元に引き寄せるとリトアは奇声を発しながら迫ってきた盗賊に鋭い蹴りを入れる。見事鳩尾に決まったローキックにて何人かの盗賊が吹き飛んでいった。それを見た盗賊達がは一気に攻め込もうとせずジワジワと取り囲んだ輪を狭めだした。
「レイカちゃん、反撃はできる?」
「魔法使ってくれるんやったら」
「・・・その辺の盗賊相手に期待しない方がいいよ」
「そうどすなぁ」
それでも念のため扇を取り出す。突き出された拳を引っ掻けて回せば、立派なカウンター技になる。威力は完全に相手留意なので猪突猛進タイプには有効だ。練習相手がそうだからでもある。
「できれば逃げたいなぁ」
平和主義とかそういうのではなく、剣を持った相手と戦った経験がレイカには欠如しているからだ。逆に武器を持たず魔法で攻撃してくるタイプ、幽霊や魔族なんかとの戦闘経験は多い。一般的な冒険者とは完全に逆になっている。
「そうだね、あ?!」
「どうかしはりました?」
「やっぱり、ちょっと忘れ事思い出した」
「どこまで?」
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賊は事情を説明しても帰してくれないだろう。しかも、リトアはすでに三人瞬倒している。只で見逃してもらえるとは到底思えなかった。
「自分のミスだし、仕方がないよね」
そういうとリトアはレイカをさらに抱きしめた。小さいが、温かで柔らかな塊を感じたと思った瞬間、世界が反転した。宙に投げ出された感覚がし、レイカは得体の知れない眩暈に襲われた。
「レイカちゃん、大丈夫?流酔いしてる?」
口を開くと今朝食べた物が逆流してきそうで、レイカは口元を抑えつつ首を縦に振った。
「リトアちゃん、よかった来てたんだね、ってその子大丈夫?」
知らない声に視線を上げるとリトアの隣には、山賊たちではなく、スーツ姿の女性が心配そうにレイカを見下ろしていた。周囲も山道ではなくゴミゴミした機材が積まれた人工的な通路になっている。あの大人数が一瞬でどうかなったのだろうかと考えたレイカに激しい吐き気が襲う。
「遅くなってごめんなさい。彼女流酔いだと思います」
「心配なのはわかったわ。でも、ここは私に任せて早く行きなさい」
「はい。レイカちゃん、ミモリさんが一緒にいてくれるから何かあったら彼女に言ってね」
真っ青な顔で頷くと、リトアは不安そうにしながらも携帯電話をレイカに渡して大きなドアの向こうに消えた。
「レイカちゃんだっけ」
頷きながら貰ったスポーツドリンクを口にする。
「どう?吐いてしまいたいんならトイレに案内するけど」
「・・・大丈夫どす」
まだ動悸が激しいが、飲み物のおかげで吐き気は収まった。少し楽になったのが相手にも伝わったのだろう。安堵のため息が漏れた。
続く
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