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5-7、カメ、甘味を楽しむ
エターナニル魔法学園特殊クラス
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スプーン一杯を頬張ると甘酸っぱいイチゴの味が口いっぱいに広がった。
「美味しいどす」
「だろ、俺一押しの店だぜ」
時間帯の問題だろう。レトロな感じの店内には二人の他に客はいなかった。
「で、だ。鍵のかけ忘れってどういうことだ?」
「うちが入った部屋にはパソコンがあったんよ」
「どの部屋だ?」
即席で描かれた地図の一点、ここだと示す。そこは資料室ではないと言われた。
「そこは会計管理室だ。よく怒られなかったな」
「この見た目のおかげどす」
6歳程度にしか見えないレイカのコンプレックスも役に立つ時は役に立つのである。重要機密を呼んでいても咎めはなかった。代わりに変なものに触らなかったかと執拗に訊かれたが、レイカは答えていない。泣いていてそれどころではなかったからだ。泣き真似なら大したものだが、マジ泣きしていた。なので、生徒会長が何と言っていたかはほとんど覚えていない。
「悪戯し放題はいいなー」
「怒られるのはかわらしまへんえ」
「程度の違いって重要だぜ。で、何か重要なものを見なかったか?聞いていてもいいな」
アイスが溶ける前に食べ終わり、次はフルーツに取り掛かろうとした時だった。
「あ、カズ先輩。妹さんッスか?」
黒い服を着た生徒が話しかけてきた。誰だと聞くとカズは後輩だと答えた。同陣営同士仲が良いらしい。
「なんだ、お前サボりか」
「まぁ、そうッス」
「ほどほどにしとけよ。それでテスト落としたら馬鹿馬鹿しいからな」
「はいッス。買い出し終わったら出るんで」
「気をつけろよ」
「わかってるッス」
それじゃあこれでと後輩は笑顔で去って行った。
「・・・・・・」
「さて、話を元に戻そうぜ」
「通り魔が出てはるんやったなぁ」
「そう、いくら調べても足取りを掴ませない奴でな。ありゃ、只者じゃないぜ」
カズも武芸に自信がありそうなので不意を突かれたことがよほど悔しかったんだろう。
「襲われてるのはこっちばかりなんだ。だから、白の攻撃だと思って今日の朝何人かに尋ねてきたんだ」
言いくるめ(物理)があった、とレイカは納得した。
「結果は全然。本当もうどうなってんだ?」
「調査で病院送り増やしたら意味あらへんのとちゃいます?」
「けど、それくらいすれば嘘つけないだろ」
暴力的取り調べを行う刑事の典型的な言い訳と同じだ。彼が白側にいない理由だろう。
「適当なグループな奴にやったのだが、どいつもこいつもしてないの一点張りだった」
「せやったら、どのグループも関係ないか、関係ないグループばかり当たってたかどっちかやなぁ」
「だよな~。半年前までで目立ったグループの奴には聞いて回ったし、新しいグループができた感じもねーし、やっぱ関係ねーのかもな」
そこにいきつける人でよかったとレイカは安心した。自分の言葉で白狩りなど始められたらたまったものではない。
「ほな、白にも黒にも所属していない人の仕業じゃないんどすか?えっと、グレイはんの」
「グレーな。そうなると犯人はカトレアかリトアかゴックの誰かだな」
「女一人に男一人?」
「お前、男子校だってこと忘れんなよ」
「そうでした。男性三人」
この様子ではリトアが性別詐欺していることをレイカはうっかり漏らしてしまうのではないだろうか。
「なぁ」
「あの、その、さっきのは願望と言いはるので」
「うん、まぁ、それに関係あるっちゃあるんだが、一先ず落ち着けって」
空いた口にサクランボを押し込まれる。強い甘みを噛み締めているうちにレイカは落ち着いてきた。飲み込むと深呼吸をして改めてカズと向き合う。
「そうそれだ」
「どれどす?」
「お前男苦手だろ。なんで俺とは視線を合わせて会話できるんだ?」
視線を合わせないことは一種の防衛本能である。自分はあなたに敵意はありませんと言っていることから来たのだ。熊と対面した時に視線を放してはいけないと言われるのはこのためである。ただし、人の世界では失礼にあたる。
「カズはんは幽霊はんやったからなぁ」
「今は人だぜ」
「でも、幽霊はんやったやろ」
「ぷはwww、そういうことね。第一印象で決まっちゃうんだ」
レイカはバツが悪そうにパクリと最後のイチゴを食べた。
「じゃあ、俺んとこのリーダーなんて気絶ものだろなwww」
「実はもう会ってます」
しかも、かなりの近距離で。
「マジでwwwどうだった?」
「お兄ちゃんがいなかったら気絶ものやったと思う」
思い出しても気絶しなかっただけ凄い進歩だと思う。リトアの後ろで生まれたての鹿のようになっていたが。
「で、お兄ちゃんのことだけどな」
「はい」
「一言で言うならいい人、みんなの優等生って感じだな」
どうやらこの不良学校(命名レイカ)でもリトアの信頼は高いらしい。
「人当たりも良くて、成績優秀、スポーツ万能。馴染んではいるが、学校に似合わない生徒ベスト5なんてのがあったら間違いなく入ってるって感じ。ただし、無断外泊と欠席が多いのを除けばな」
真面目に授業に出ている印象だったのだが、何かあるのだろうか?
「・・・本当にどっちのグループにも所属しておらへんの?」
「それは本当だぜ。どっちの勧誘も断ってる。下の奴らに喧嘩を売られても返り討ちにしているって話だしな。喧嘩の実力もあるんじゃねーの」
魔法学園で培った技術をこんなところで消費しているようだ。
「何で断ってはるんやろ?」
「さぁな、ただ、両方から襲撃を受けても頑なにその立場を貫いてるんだ。それ相応の理由があるんだろうぜ」
「・・・・・・直接お兄ちゃんに尋ねてみはる。軽い理由なら答えてくれそうやし」
それなりの理由なら差しさわりのないところまで話してくれるだろう。
「じゃあ、そろそろ学校に戻ろうか」
今回の支払いもカズが持つこととなった。さすがに二回もおごってもらうのは申し訳なくて自分で払うとレイカが財布を取り出した。
しかし、カズが断った。小さな財布から金貨が取り出されたらショックだからだそうだ。
続く
「美味しいどす」
「だろ、俺一押しの店だぜ」
時間帯の問題だろう。レトロな感じの店内には二人の他に客はいなかった。
「で、だ。鍵のかけ忘れってどういうことだ?」
「うちが入った部屋にはパソコンがあったんよ」
「どの部屋だ?」
即席で描かれた地図の一点、ここだと示す。そこは資料室ではないと言われた。
「そこは会計管理室だ。よく怒られなかったな」
「この見た目のおかげどす」
6歳程度にしか見えないレイカのコンプレックスも役に立つ時は役に立つのである。重要機密を呼んでいても咎めはなかった。代わりに変なものに触らなかったかと執拗に訊かれたが、レイカは答えていない。泣いていてそれどころではなかったからだ。泣き真似なら大したものだが、マジ泣きしていた。なので、生徒会長が何と言っていたかはほとんど覚えていない。
「悪戯し放題はいいなー」
「怒られるのはかわらしまへんえ」
「程度の違いって重要だぜ。で、何か重要なものを見なかったか?聞いていてもいいな」
アイスが溶ける前に食べ終わり、次はフルーツに取り掛かろうとした時だった。
「あ、カズ先輩。妹さんッスか?」
黒い服を着た生徒が話しかけてきた。誰だと聞くとカズは後輩だと答えた。同陣営同士仲が良いらしい。
「なんだ、お前サボりか」
「まぁ、そうッス」
「ほどほどにしとけよ。それでテスト落としたら馬鹿馬鹿しいからな」
「はいッス。買い出し終わったら出るんで」
「気をつけろよ」
「わかってるッス」
それじゃあこれでと後輩は笑顔で去って行った。
「・・・・・・」
「さて、話を元に戻そうぜ」
「通り魔が出てはるんやったなぁ」
「そう、いくら調べても足取りを掴ませない奴でな。ありゃ、只者じゃないぜ」
カズも武芸に自信がありそうなので不意を突かれたことがよほど悔しかったんだろう。
「襲われてるのはこっちばかりなんだ。だから、白の攻撃だと思って今日の朝何人かに尋ねてきたんだ」
言いくるめ(物理)があった、とレイカは納得した。
「結果は全然。本当もうどうなってんだ?」
「調査で病院送り増やしたら意味あらへんのとちゃいます?」
「けど、それくらいすれば嘘つけないだろ」
暴力的取り調べを行う刑事の典型的な言い訳と同じだ。彼が白側にいない理由だろう。
「適当なグループな奴にやったのだが、どいつもこいつもしてないの一点張りだった」
「せやったら、どのグループも関係ないか、関係ないグループばかり当たってたかどっちかやなぁ」
「だよな~。半年前までで目立ったグループの奴には聞いて回ったし、新しいグループができた感じもねーし、やっぱ関係ねーのかもな」
そこにいきつける人でよかったとレイカは安心した。自分の言葉で白狩りなど始められたらたまったものではない。
「ほな、白にも黒にも所属していない人の仕業じゃないんどすか?えっと、グレイはんの」
「グレーな。そうなると犯人はカトレアかリトアかゴックの誰かだな」
「女一人に男一人?」
「お前、男子校だってこと忘れんなよ」
「そうでした。男性三人」
この様子ではリトアが性別詐欺していることをレイカはうっかり漏らしてしまうのではないだろうか。
「なぁ」
「あの、その、さっきのは願望と言いはるので」
「うん、まぁ、それに関係あるっちゃあるんだが、一先ず落ち着けって」
空いた口にサクランボを押し込まれる。強い甘みを噛み締めているうちにレイカは落ち着いてきた。飲み込むと深呼吸をして改めてカズと向き合う。
「そうそれだ」
「どれどす?」
「お前男苦手だろ。なんで俺とは視線を合わせて会話できるんだ?」
視線を合わせないことは一種の防衛本能である。自分はあなたに敵意はありませんと言っていることから来たのだ。熊と対面した時に視線を放してはいけないと言われるのはこのためである。ただし、人の世界では失礼にあたる。
「カズはんは幽霊はんやったからなぁ」
「今は人だぜ」
「でも、幽霊はんやったやろ」
「ぷはwww、そういうことね。第一印象で決まっちゃうんだ」
レイカはバツが悪そうにパクリと最後のイチゴを食べた。
「じゃあ、俺んとこのリーダーなんて気絶ものだろなwww」
「実はもう会ってます」
しかも、かなりの近距離で。
「マジでwwwどうだった?」
「お兄ちゃんがいなかったら気絶ものやったと思う」
思い出しても気絶しなかっただけ凄い進歩だと思う。リトアの後ろで生まれたての鹿のようになっていたが。
「で、お兄ちゃんのことだけどな」
「はい」
「一言で言うならいい人、みんなの優等生って感じだな」
どうやらこの不良学校(命名レイカ)でもリトアの信頼は高いらしい。
「人当たりも良くて、成績優秀、スポーツ万能。馴染んではいるが、学校に似合わない生徒ベスト5なんてのがあったら間違いなく入ってるって感じ。ただし、無断外泊と欠席が多いのを除けばな」
真面目に授業に出ている印象だったのだが、何かあるのだろうか?
「・・・本当にどっちのグループにも所属しておらへんの?」
「それは本当だぜ。どっちの勧誘も断ってる。下の奴らに喧嘩を売られても返り討ちにしているって話だしな。喧嘩の実力もあるんじゃねーの」
魔法学園で培った技術をこんなところで消費しているようだ。
「何で断ってはるんやろ?」
「さぁな、ただ、両方から襲撃を受けても頑なにその立場を貫いてるんだ。それ相応の理由があるんだろうぜ」
「・・・・・・直接お兄ちゃんに尋ねてみはる。軽い理由なら答えてくれそうやし」
それなりの理由なら差しさわりのないところまで話してくれるだろう。
「じゃあ、そろそろ学校に戻ろうか」
今回の支払いもカズが持つこととなった。さすがに二回もおごってもらうのは申し訳なくて自分で払うとレイカが財布を取り出した。
しかし、カズが断った。小さな財布から金貨が取り出されたらショックだからだそうだ。
続く
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