エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

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4-7、ウサギ、はぐれる

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「・・・・・・て、訳。本当どうしよう」
 思いのほか勢いが強かったのかパックリ割れた額の傷に治療魔法をかけてもらいながら、イスカとザリはロンにこれまでの経緯を説明した。
「どうにかしてあの壁を壊さなければ。だが、上級生の俺達が魔法を打ち砕けるか。いや、先生がこの状況を知らないはずがない。だとしたら、あれは先生の魔法である可能性が高い。例え違うとしても並大抵の魔法であるはずがないから、先輩の知恵も借りたいんだ」
「わかった」
 承諾してくれてホッとする二人。
「行こう」
「「おー」」


「「迎えに行くんじゃなかったのかよ!」」
 治療を終えたロンが真っ直ぐ向かったのは高棟でも図書の館でもなかった。職員室や校長室に向かうならこの学園の不思議がまた1つ増えたと思えるのだが、彼は真っ直ぐに裏山の森の中へと入っていく。自主トレ時に利用できる離れ庵がいくつかあるとは聞いているらしいのでそこに向かっているのかもしれない。まだ単独練習する技術がない一年生には無縁な話なのでイスカもザリも詳しい場所は聞かされていない。もちろん、何があるかもわからなかった。ただ、鍛錬の休憩場として作られた小屋に今何の用があるというのだろうか。
「ねぇ、どこに向かってるのよ」
「先輩まさか裏山を登るなんて言いませんよね」
 2人の言葉に黙々と歩いていたロンが振り向く。しかし、質問に答えるわけでもなく、顔を見ただけでまたすぐに歩き出した。
「先輩に、聞いた、とおり、本当に、無口・・・ゼィ、で、無愛想ゼィ、ゼィ・・・だ」
「あんた、見た目よりもさらに体力ないわね」
 足音もなく顔色も変えずにスタスタと歩くロンの後をイスカとザリは疾走でついていく。元々運動が得意であるイスカは駆け足より少しスピードアップするだけですんでいるが、運動音痴であるザリにとって裏山マラソン全力疾走は辛かった。先が見えなければ尚更だ。
「五月蝿い。俺は頭脳労働専門なんだ」
「魔導士が貧弱扱いされるいい見本よね。まぁ、あたしはそうなるつもりはないけど。そんなことじゃ好きな子1人守れないわよ」
 この件が終わったら体育ももっと真剣にやろうと心に誓う既に汗だくのザリだった。
「おい、こんなところで何をしてる?」
「「ウアぁ」」
 険しい山道続きにイスカも疲れてきて休憩していた時にいきなり怒鳴られ、二人は心臓が飛び出るほど驚いた。体は当然の如く上に跳ね上がり、丁度上にあった枝に頭を強かに打ちつける。
「な、なんだなんだ」
「「あ、保健委員のカザキ先輩。こんにちは」」
「おぅ、相変わらず空元気だな1年生。こっちは人手不足なんだ。怪我するなよ」
 2年の先輩で、さらに上の先輩と保健室で薬込めの手伝いをしている姿をよく目にする。
「で、こんなところでどうしたんだ?」
「えっと」
「授業が終わったので散策に、と」
「おいおい、ここは裏々山だぞ。山登りの間違いじゃないのか」
「そうとも言う」
「どうでもいいけど、獣道から外れるなよ。特に赤いリボンを越えるな。迷子になるのはかまわないが、薬草所を踏み荒らされちゃかなわんからな」
 そう言ってカザキ先輩が指した先には見覚えのある花が咲いていた。確か、この前の魔法薬学の実習で使用した薬草だ。
 あれはあれでえらい騒ぎだった。
「もしかして、ここで薬草を?」
「ああ、この山は薬草が育ち易い環境なんだ。歌や不思議な笛がどこからか聞こえてくるのも一因なのかもしれない。ここを荒らしたら学園で薬が不足すると思え」
「先輩は薬草摘みと世話ですか?」
「まぁな」
 しなれているのは、使い込まれて丁寧に修繕も施された道具から容易に想像できる。
「保健委員長って無事ですか?」
「な、何だぁ~唐突に」
「じ、実は足を挫いてしまって」
 質問が唐突過ぎだと察したザリは話題を変えた。都合良く足が痛くてよかった。
「はぁ、それくらい俺でも何とかできるぞ・・・・・特に腫れてないからちょっと捻っただけだろ。少し休めば痛みも引く。どうしても痛いなら少し下ったところにある川で冷やせばいい」
「・・・・・・はい、ありがとうございます」
「・・・保健委員長はあの頃から不在だ。今は5年生の代理委員長が保健医と共に管理運営している」
 この事件の前から失踪している可能性が高かった。
「何を探しているか知らないが、ただでさえ忙しい彼を巻き込むような真似でもしてみろ、保健委員会と彼の同級生、学園ギルド最強を敵に回すと思え」
 川で洗いながら言うだけ言うとカザキ先輩は帰っていった。委員長が一緒でなくてよかったと呟きながら。
「保健委員会だけでなく彼と同学年もか。ギルド最強ってのも気になるけど、彼らのお姫様がどんな先輩か見てみたくなったわ」
 きっとキュートで小さくって可愛いんでしょう。
 勝手に想像された先輩像はイスカの好みがしっかりと具現化されていた。小動物系の可愛さを持った小柄な女の子、彼の理想がそのまま具現化した人物であった。もちろん、どこぞの誰かに似ていることは言うまでもない。
「実技が始まると嫌でも怪我するから全員一度は世話になると思うぞ」
 実技担当の先生達は手加減を知らないともっぱら評判である。
山を下りていく背中に深々とため息を吐くと二人は立ち上がって先を目指した。帰る際に捨てていくように放り投げられた薬草のおかげで足の痛みは引いた。
「で、俺達はどこに行けばいいんだ」
 今の事態を世間一般ではこう呼ぶ。
 “迷子”
「ロンが」
「ロン先輩」
「(ム)ロン先輩が待ってくれてる」
 イスカは辺りを見渡した。
 周囲には何の気配も感じられなかった
「・・・・・・わけないか」
「先輩、マイペース過ぎです」
 まだ校庭外に出たことがない1年生にとって例え裏山でも未開の地と同じ。しかも、何も用意せずに出発したため所持品はほとんどない。
「太陽の位置がわかれば方向がわかるんだが」
 森の上はうっそうと茂った木の枝と密に付いた木の葉で空1つ見えない。
「飛んで見ればいいじゃない」
「馬鹿、先生なしで魔法使ってみろ。後でどれほど怒られるかわかってるのか」
「うん、よくよく」
「・・・そうだった」


                          続く
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