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4-6、ウサギ、荒ぶる
エターナニル魔法学園特殊クラス
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いじめていたのはザリ自身だが、こうも露骨に避けられると空しくなってくる。
「ふ、今まで意地悪してきた罰よ」
「なかったことにしたいぜ」
「なんですって!どういうことかわかってるの!!全部忘れちゃうのよ。悪気も正気も何もなくこれまで積み重ねてきた友愛もこれから培っていかなければならない感情の欠片も全部パーなのよ!!!最良セーブデータが最初からやり直しのリセットなのよ!!!!」
「あ、いや、すまん」
鬼の如き形相で睨まれ、ザリの口からすぐに謝罪が出た。
「何争ってはるの?」
ひょっこり顔を覗かせたレイカに2人は悲鳴を上げてその場から飛び退いた。顔表情は愛らしいレイカである。上下逆さまに天井からぶら下がっていなければ、の話だが。
「な、な、な、」
「偽者か?!」
「ハロハロ、今日はええ天気やなぁ」
ヒラヒラと手を振るレイカ?は音も立てずに廊下に着地した。
「この格好も久しゅうどすなぁ。ちと、目違うけど、基本はあん人と同じやわ」
「うそ、声も口調もそっくり」
「姿形もそっくりそのままとは」
「うふふ、お褒め預かり光栄どすなぁ」
「けど、侮ったわね、偽者さん」
「1年だからって俺達を舐めるなよ」
「「本物はここだ!」」
2人の手の間には・・・・・・誰もいなかった。
「いない?!」
「なら、あれが本物か?!」
「ほな、挨拶はいらへんなぁ」
「なんでレイカがあんなクソ意地の悪い、悪代表な魔王的な笑みを浮かべているのよ」
「馬鹿、操られてんだ」
普段のレイカの天使の微笑みには到底見られない悪魔の微笑はイスカの特製フィルターをもってしても上書きできなかったようだ。
「ちょっと、レイカを返しなさいよ」
「お断りどす」
「言葉の癖も自由自在ってことは体を操っているだけではなく、精神体ごと乗っ取られているのかもしれない」
「兎も角、レイカには変わりないんでしょ。だったら、殴れないじゃない・・・・・・とりあえず捕まえて縛りましょ。話はそれから」
「ち、仕方がないか」
戦闘体勢を取る二人にレイカ?は今度はにっこりと微笑んだ。その笑みはレイカがいつも見せる遠慮に満ちたハニカミ笑みでも子供特有の無邪気な笑顔でもなかった。若葉に太陽の光が降り注いだような穏やかで温かな笑顔で、母親がその胸に抱いたわが子に向ける愛しみに満ちたものにそっくりだった。
「あれが操っている者の本性?なんか、思ってたのと感じ違う」
「性質の悪い魔法の使い手がする顔じゃない。訳ありなのか?」
隠れていた本性が一瞬だけ顔を見せた、
「はー、反応いまいち。これだと見たことなさそうどすなぁ」
のではないらしい。
「どちらも魔でも犯でもなさそうやしな。最初から望み薄かったし、まぁええか」
あからさまにガッカリされた。
「おまえ、何者だ?どうやって学園島に入り込んだ?」
ザリが剣に手をかけるとレイカ?はおお怖っ、と首を竦め、ヒラリと身を翻した。
「待て、ガッ」
追って踏み込んだ先には例の見えない壁があり、ザリは顔から見事に突っ込んだ。
「何忘れてんのよ」
「だって、あいつ通り抜けたぞ」
「あたし達が通れないことはさっき知ったでしょうが」
火炎弾を投げつけるが、あっさりとかわされてしまう。ムキになり連続して投げつけるイスカをあざけわらうかのようにヒョイヒョイと避けるとポーンと棚の上に飛び乗った。
「おやぁ~嬢ちゃんも能力者やったんどすなぁ。この娘みたく厄介な力とちゃいますけど」
「ちょ、なんでわかるのよ」
「あらあら、騙すつもりやったの?なら、徹底的にやらななぁ。唱えるの忘れてますえ」
魔導歌は動かす属性を司る者にたいして送る歌、対価の1種である。形のないお金と思えば近い。等価交換で成り立つため、魔法は魔導歌なしでは発動することはない。
もし、なくして発することのできるなら、それは特殊能力と言う。これを保持していることが特殊クラスに入る必要最低条件なのかもしれない。
「まぁ、ええかぁ。これだけ入ればあん人の足止めにもならはるやろ」
火の玉は透明な壁をすり抜けていたが、壁に触れる前に四散した。どうやら、向こうは属性効果の持続が難しい環境らしい。イスカが生み出した炎でさえ消える。
「だったら、レイカを返しなさいよ」
「ほな、中に置いておくさかい、できるだけ早よう迎えに来てな」
「「待て」」
「待てと言われて待つ馬鹿はおらしまへん」
いつものレイカではありえないほど身軽な動きでさらに奥の透明な壁をすり抜けると教室の中へと入っていった。追い駆けようとしたイスカとザリは当然の如く堅い何かにぶつかる。最初の壁の存在を二人ともすっかり忘れていた。
鈍い衝突音を聞いて入ってきたロンが見たのは鼻から血を流す2人の姿だった。
続く
「ふ、今まで意地悪してきた罰よ」
「なかったことにしたいぜ」
「なんですって!どういうことかわかってるの!!全部忘れちゃうのよ。悪気も正気も何もなくこれまで積み重ねてきた友愛もこれから培っていかなければならない感情の欠片も全部パーなのよ!!!最良セーブデータが最初からやり直しのリセットなのよ!!!!」
「あ、いや、すまん」
鬼の如き形相で睨まれ、ザリの口からすぐに謝罪が出た。
「何争ってはるの?」
ひょっこり顔を覗かせたレイカに2人は悲鳴を上げてその場から飛び退いた。顔表情は愛らしいレイカである。上下逆さまに天井からぶら下がっていなければ、の話だが。
「な、な、な、」
「偽者か?!」
「ハロハロ、今日はええ天気やなぁ」
ヒラヒラと手を振るレイカ?は音も立てずに廊下に着地した。
「この格好も久しゅうどすなぁ。ちと、目違うけど、基本はあん人と同じやわ」
「うそ、声も口調もそっくり」
「姿形もそっくりそのままとは」
「うふふ、お褒め預かり光栄どすなぁ」
「けど、侮ったわね、偽者さん」
「1年だからって俺達を舐めるなよ」
「「本物はここだ!」」
2人の手の間には・・・・・・誰もいなかった。
「いない?!」
「なら、あれが本物か?!」
「ほな、挨拶はいらへんなぁ」
「なんでレイカがあんなクソ意地の悪い、悪代表な魔王的な笑みを浮かべているのよ」
「馬鹿、操られてんだ」
普段のレイカの天使の微笑みには到底見られない悪魔の微笑はイスカの特製フィルターをもってしても上書きできなかったようだ。
「ちょっと、レイカを返しなさいよ」
「お断りどす」
「言葉の癖も自由自在ってことは体を操っているだけではなく、精神体ごと乗っ取られているのかもしれない」
「兎も角、レイカには変わりないんでしょ。だったら、殴れないじゃない・・・・・・とりあえず捕まえて縛りましょ。話はそれから」
「ち、仕方がないか」
戦闘体勢を取る二人にレイカ?は今度はにっこりと微笑んだ。その笑みはレイカがいつも見せる遠慮に満ちたハニカミ笑みでも子供特有の無邪気な笑顔でもなかった。若葉に太陽の光が降り注いだような穏やかで温かな笑顔で、母親がその胸に抱いたわが子に向ける愛しみに満ちたものにそっくりだった。
「あれが操っている者の本性?なんか、思ってたのと感じ違う」
「性質の悪い魔法の使い手がする顔じゃない。訳ありなのか?」
隠れていた本性が一瞬だけ顔を見せた、
「はー、反応いまいち。これだと見たことなさそうどすなぁ」
のではないらしい。
「どちらも魔でも犯でもなさそうやしな。最初から望み薄かったし、まぁええか」
あからさまにガッカリされた。
「おまえ、何者だ?どうやって学園島に入り込んだ?」
ザリが剣に手をかけるとレイカ?はおお怖っ、と首を竦め、ヒラリと身を翻した。
「待て、ガッ」
追って踏み込んだ先には例の見えない壁があり、ザリは顔から見事に突っ込んだ。
「何忘れてんのよ」
「だって、あいつ通り抜けたぞ」
「あたし達が通れないことはさっき知ったでしょうが」
火炎弾を投げつけるが、あっさりとかわされてしまう。ムキになり連続して投げつけるイスカをあざけわらうかのようにヒョイヒョイと避けるとポーンと棚の上に飛び乗った。
「おやぁ~嬢ちゃんも能力者やったんどすなぁ。この娘みたく厄介な力とちゃいますけど」
「ちょ、なんでわかるのよ」
「あらあら、騙すつもりやったの?なら、徹底的にやらななぁ。唱えるの忘れてますえ」
魔導歌は動かす属性を司る者にたいして送る歌、対価の1種である。形のないお金と思えば近い。等価交換で成り立つため、魔法は魔導歌なしでは発動することはない。
もし、なくして発することのできるなら、それは特殊能力と言う。これを保持していることが特殊クラスに入る必要最低条件なのかもしれない。
「まぁ、ええかぁ。これだけ入ればあん人の足止めにもならはるやろ」
火の玉は透明な壁をすり抜けていたが、壁に触れる前に四散した。どうやら、向こうは属性効果の持続が難しい環境らしい。イスカが生み出した炎でさえ消える。
「だったら、レイカを返しなさいよ」
「ほな、中に置いておくさかい、できるだけ早よう迎えに来てな」
「「待て」」
「待てと言われて待つ馬鹿はおらしまへん」
いつものレイカではありえないほど身軽な動きでさらに奥の透明な壁をすり抜けると教室の中へと入っていった。追い駆けようとしたイスカとザリは当然の如く堅い何かにぶつかる。最初の壁の存在を二人ともすっかり忘れていた。
鈍い衝突音を聞いて入ってきたロンが見たのは鼻から血を流す2人の姿だった。
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