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菜摘さんと付き合い始めてから数日が経った。

僕は、未だに菜摘さんが僕を好きでいてくれたという事実に慣れない。

毎日あんなに近くにいて、あんなに何度も触れ合って、沢山言葉を交わしていたのに…

そんな相手が、まさか僕のことを……。


僕は、恋愛として女の人に好かれたこと自体が初めてだった。

そして僕もまた、恋愛対象として女性を好きになったのは初めてだった。

だからどうしても舞い上がってしまう。

恋とは、こんなに幸せなものかと。

付き合える前、僕が一方的に菜摘さんへ気持ちを募らせていると思っていた頃は、あんなに苦痛で仕方なかったのに……。

互いの気持ちが同じであることが分かった今、何より嬉しいのは自分の気持ちを隠さず相手に伝えられること。

もちろん、公園や外で遊ぶときはこれまでと同様近所の友達同士のような接し方をしている。

だけど、雨が降ったときや時間に余裕があるとき、菜摘さんの部屋で二人きりの際には…

僕も菜摘さんも、相手に対する気持ちを隠さずに曝け出している。

不思議なことに、それをすればするほど、相手への気持ちは強まっていくばかりだった。

僕はまだ、恋愛を始めたばかり。

だから分からないことや戸惑うこともあったけど、菜摘さんはもう大人だし何度か恋もしてきているから、僕はその点でも菜摘さんに対して心強さを感じていた。

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