上 下
62 / 214
10頁

3

しおりを挟む
「菜摘さん。今日はどこに行くんですか?」

秋分を少し過ぎた頃。

朝夕の肌寒さが本格的な秋の訪れを告知しているような日々の中で、僕はある日曜日、菜摘さんと二人でどこかに向かっていた。


「着くまでのお楽しみよ!」

ニコニコと嬉しそうにそう言う菜摘さんは、僕の隣でハンドルを握る。

僕と菜摘さんは付き合い始めてから、これまで以上に二人きりでいることが増えた。

菜摘さんは近所の子どもたちの人気者なので、僕とばかり遊んでいる訳にはいかない。

だから僕が塾や家庭教師、テニスの習い事で忙しい日は僕とは会わずに他の子どもたちと遊んでいた。

だけど僕と予定が合うときは、今までみたいに公園で遊ぶときもあったが、それ以上の頻度で菜摘さんの部屋で遊んだり、こうしてドライブをして少し遠出をすることが多くなったのである。

それは、二人の関係性を僕達が口に出さなくても…

なんとなく、周りから察せられないかと必要以上に不安になるからだった。

隠し事をしている時、いつも以上に周りの視線や勘に敏感になってしまうような感覚だ。

絶対に周囲に知られてはいけない僕達の関係を継続するために、二人とも慎重すぎるくらいに周りの目を気にするようになっているのである。
しおりを挟む

処理中です...