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知らなかった事実
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私は上司から話をもらった翌日の朝に上司に話があると言って、彼と別室に移動する。
「昨日の話なのですが、お受けしたいと思います。」
私の決断の速さに上司は目を丸くする。
「都築さん、そんなに慌てて返事をする必要はないんだよ。海外に行くのも早くて1ヶ月後だからね。プロジェクト自体、開始はその先だよ。」
「よく考えて出した結論です。元々、断ることは考えてはいませんし、返事は早い方がいいと思いまして。」
「そう。分かった。上には伝えておくよ。君が受けてくれたことは嬉しいけど、無理はしないで。」
「ありがとうございます。」
上司に労われ、その言葉が私には嬉しい贈り物だ。期待されると、キャリアウーマンとしての私の信念が騒ぎ出す。
「最近、体調も悪そうだし、もし、業務が辛かったら無理しないで帰るんだよ。」
「大丈夫です。」
上司に心配させないように私は笑う。うまく隠せていたつもりだけど、人をよく見てる彼にはそれができていなかったらしい。
それから、会社からパスポート申請の書類を受け取り、必要書類を揃えるために午後を有給休暇にして地元に向かう。地元にある役所でしかもらえない書類があったためである。電車に揺られながら煌に契約を破棄することをどうやって伝えようかと考えるが、全く良い案が浮かばずに途方に暮れる。
役所で目的の書類をもらって帰宅すると、冷蔵庫にある作り置きおかずを温めてごはんをよそって夕飯を食べて風呂に入り、久しぶりにゆっくりできた。それで時間があったので初めてもらった書類である戸籍謄本を開いてみようと手に取る。
「これってどんなのが書いてあるんだろう。」
こんな公式な書類を見るのは初めてなので少しワクワクして見てみる。
それには自分の戸籍が書いてあるのだが、そこに書いてある続柄に驚愕する。
「”養女”?」
自分でつぶやいた言葉がどんなことを意味するのか一瞬わからず固まってしまう。もう考えるのを放棄してポイッと書類を床に投げる。それからベッドに横になりスマホで動画を見る。もちろん、湊君の最新動画である。
「かっこいい。湊君だけだよ、いつもと変わらないかっこよさは。」
もう現実逃避である。自分の出生に秘密があるなんて20歳を過ぎた今になって知りたくもないし、今更、家族だと思っていた人たちが本当は違うなんて思いたくもない。私の名前も年齢も性格もこれまで都築家でもらったものであり、違う家の子供だからと言って他人のように関われない。家族と会うことはほとんどないけれど、やっぱり年末年始には一緒に笑って過ごしている。それができないのは少しだけ寂しいので家族にはそれを問わないことにする。
「なんか一気にお腹いっぱい。ここ最近は。」
動画を止めてスマホをベッドに放る。
この事実を家族は知っているはずだが、20歳を超えても言わなかった理由は分からない。けれど、そのおかげで私はこうして彼らのことも考えてその事実に向き合えたのかもしれない。そう思うと、家族の対応が正解だったのだとも思えたからだ。
「昨日の話なのですが、お受けしたいと思います。」
私の決断の速さに上司は目を丸くする。
「都築さん、そんなに慌てて返事をする必要はないんだよ。海外に行くのも早くて1ヶ月後だからね。プロジェクト自体、開始はその先だよ。」
「よく考えて出した結論です。元々、断ることは考えてはいませんし、返事は早い方がいいと思いまして。」
「そう。分かった。上には伝えておくよ。君が受けてくれたことは嬉しいけど、無理はしないで。」
「ありがとうございます。」
上司に労われ、その言葉が私には嬉しい贈り物だ。期待されると、キャリアウーマンとしての私の信念が騒ぎ出す。
「最近、体調も悪そうだし、もし、業務が辛かったら無理しないで帰るんだよ。」
「大丈夫です。」
上司に心配させないように私は笑う。うまく隠せていたつもりだけど、人をよく見てる彼にはそれができていなかったらしい。
それから、会社からパスポート申請の書類を受け取り、必要書類を揃えるために午後を有給休暇にして地元に向かう。地元にある役所でしかもらえない書類があったためである。電車に揺られながら煌に契約を破棄することをどうやって伝えようかと考えるが、全く良い案が浮かばずに途方に暮れる。
役所で目的の書類をもらって帰宅すると、冷蔵庫にある作り置きおかずを温めてごはんをよそって夕飯を食べて風呂に入り、久しぶりにゆっくりできた。それで時間があったので初めてもらった書類である戸籍謄本を開いてみようと手に取る。
「これってどんなのが書いてあるんだろう。」
こんな公式な書類を見るのは初めてなので少しワクワクして見てみる。
それには自分の戸籍が書いてあるのだが、そこに書いてある続柄に驚愕する。
「”養女”?」
自分でつぶやいた言葉がどんなことを意味するのか一瞬わからず固まってしまう。もう考えるのを放棄してポイッと書類を床に投げる。それからベッドに横になりスマホで動画を見る。もちろん、湊君の最新動画である。
「かっこいい。湊君だけだよ、いつもと変わらないかっこよさは。」
もう現実逃避である。自分の出生に秘密があるなんて20歳を過ぎた今になって知りたくもないし、今更、家族だと思っていた人たちが本当は違うなんて思いたくもない。私の名前も年齢も性格もこれまで都築家でもらったものであり、違う家の子供だからと言って他人のように関われない。家族と会うことはほとんどないけれど、やっぱり年末年始には一緒に笑って過ごしている。それができないのは少しだけ寂しいので家族にはそれを問わないことにする。
「なんか一気にお腹いっぱい。ここ最近は。」
動画を止めてスマホをベッドに放る。
この事実を家族は知っているはずだが、20歳を超えても言わなかった理由は分からない。けれど、そのおかげで私はこうして彼らのことも考えてその事実に向き合えたのかもしれない。そう思うと、家族の対応が正解だったのだとも思えたからだ。
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