スローライフは、この手で掴み取りたい!! ~でも騒動は、押しかけて来るらしい~

志位斗 茂家波

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第1章:幼少期~少年期前編

31話 セキュリティは、かなり優秀過ぎることもある

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SIDEエル

 まだまだ夏休みが続く今日この頃、エルはタマモの呪いを解くために必要な解呪魔法『ホーリークラッシュ』を扱っても大丈夫なように制御の強化を目指し、自主的な訓練を行っていた。

「えっと、ここで火球を増やして、水球出して、お湯に変えてっと…」


 制御と言っても、瞑想をしたりするイメージがあるが、そういうモノではない。
 こういうモノではとりあえず数をこなして操れるようにした方が良いそうで、まだ扱いやすい火や水の魔法を同時に使用したりして、うまいことバランスよく出来るようにやっていた。

 最初から光の魔法を扱うのではなく、制御面ではまだ楽な魔法の方を使って鳴らしていけば、そこそこやりやすくなるらしい。
 その為、この制御訓練でうまい事できれば解呪魔法も成功させやすくなるはずである。
 ついでに、火や水も基本的な魔法でもあるらしいので、こちらの制御が上手になれば、将来的にスローライフの中で好きな時にお風呂や冷たくない洗い物が出来る可能性もあるので、そちらの目的もあってやっていたのだが‥‥‥

「あっ!」

‥‥‥世の中、そううまいこと行くことはない。
 まだまだ制御が甘かったようで、作っていた水球の内、一部の制御が失敗して飛んでしまい、ハクロにかかった。

びしゃぁっ!
「きゃぁっ!?」
「ご、ごめんハクロ!!」

 攻撃することに使用しないので、威力としては相当低い水球。
 しかし、そこそこの水量も保持していたがゆえに、大雨に遭ったように、ハクロの衣服が見事にびしょぬれになった。

「うう、だいぶ濡れて、下着までびっしょりですよ…」

 タオルを創り出し、身体を拭くハクロ。
 盛大に濡れたがゆえに衣服が身に密着し、その下着まで透けて見えてしまうほどの、やり場に困る状態であった。

 一応、精神面も体に引っ張られているが、健全な男の子であるがゆえに動揺してしまい、そのせいか他の玉もいっしょに周辺へ散らばってしまった。

ボンボンボンッ!!

「って、火の玉は流石に不味い!!火力がないけど、ちょっと熱い奴だ!!」
「大丈夫、この程度、なんとかなる」

 慌てたが、カトレアが冷静に対応していたようで、素早く地中から根っこが飛び出してきて、全て叩き落してしまった。
 本来であれば植物の魔物には効果的らしい火の魔法だが、彼女はしっかりと耐性を持っていたようで、威力が弱まった火球は痛くもかゆくもないらしい。

「ほっ‥‥‥ありがとう、カトレア」
「ふみゅっ、どういたしまして」

 カトレアにお礼を言うと、彼女はなんともないようにそう返答したのであった。
 ただ、ちらっとハクロに対してにやっと笑みを浮かべたような気がしたが…あ、ハクロが涙目になっている。やっぱり彼女達、ちょっと仲悪いなぁ…

 
 とりあえず気を取り直しつつ、改めてく制御訓練をやってみた。
 しかし、一夜漬けという訳ではないが、まだまだ制御ができていないようだ。

「はぁ、まったく進歩がないなぁ。いくつかは動かせるけど、複数を考えると制御も甘くなるよ。これじゃ、解呪魔法を使っても、まだ遣らかすレベルだな」
「大丈夫ですよエル。努力すれば、きっとうまくいきます!」

 落ち込むエルに対して、濡れた服を着替えて新しくしたハクロは慰めるようにそう言ってくれた。
 その心遣いはありがたいのだが、進歩が目に見えて分かりやすくないと、やる気も落ちるんだよね。
 まぁ、タマモの呪いを解くために必要な解呪魔法を扱うには制御が必要だし、そう簡単に出来ないのであれば、練習あるのみ。ここで落ち込んでいても、仕方がないか。

「エルさーん、ハクロさーん、カトレアさーん!お昼御飯ですよー!」

 そのタマモの声が聞こえてきたところで、気持ちを切り替えるためにも、一旦昼食のために制御訓練を中断することにしたのであった。





 全体的に能力を弱める呪いの影響もあって、人よりも弱いらしいタマモ。そんな彼女であったが、どうも料理に関してまではその判定外だったらしく、呪いが効果をなしていなかったようである。

「うまい!これめっちゃうまい!」
「あらあら、タマモちゃんって料理上手ねぇ。教えたものをこなして、うまくやるわね」
「このスープ、出汁が程よく引き立たっていてやさしいあじですよ。」
「光合成できるから、あまり食べ物は必要ない。けれども、これはおいしい」

 家族全員で昼食を食べつつ、好評の食事に舌包みを鳴らす。
 本日の昼食はタマモが作ったもので、皆絶賛していた。

「この程度ならば、まだまだお役に立てますよ!」

 ぐっとこぶしを握り、耳と尻尾をピコピコさせるタマモ。呪いがかかっていようがいまいが、気にすることもなく、ゴブリンにも襲われたというのに気持ちを前向きにしているようだ。
 
 美味しいものはやる気をあげるし、彼女のためにやれるのであれば良いだろう。
 食事によって英気を養う事が出来て、午後からも、魔法の制御訓練に一層励みを出せたのであった。




―――――――――――――――――――――――――――
SIDEハクロ

「…んにゅ?」

…その日の深夜、ほうほうっと何処かでフクロウかフクロウモドキのホッホーバードの鳴き声が鳴く中、ふと何かに気が付き、ハクロは目を覚ました。

「これは…」

 何かを感じ取り、同室で寝ているエルを起こさないように部屋から出て、家の外に出た。
 するとそこには、月明かりに照らされる中、カトレアも同じ様に気が付いていたようで、攻撃用の根っこや蔓を使えるようにしていた。

「ハクロ、感じた?森、何か、いる」
「ええ、こういう時って大抵何かありますからね。考えられるものとしては…‥‥」

 普段は仲が悪いが、それでも大事なもののためには協力し合う彼女達。
 カトレアの真剣な表情に、ハクロも頷き、同じくいつでも戦えるように攻撃用の糸を手に持ち、戦闘態勢となった。



 普段、エルと一緒にいて人と過ごしていても、彼女達はモンスター。
 人ならざる者たちが持つ勘は鋭く、ほんの些細なことであっても、すぐに理解してしまうのだ。

「うーん、でもどうしましょうか。エルだけを守れればいいのですが…それでも、ここは私達がいても誰も否定しない村ですからね」
「気が付かれないように、皆寝ている間に、やっちゃう?」
「そうしましょうか。私達で、守れればいいですもんね」

 ハクロとカトレアは互に確認し、頷き合う。
 守るべきものがあるからこそ、彼女達は普段は理性の中に己の野生を封じ込めているのだが‥‥‥そんな安らぎの溢れる中で、悪意を持って踏み込む者がいれば、許すことはない。

 優しさはある。けれども、そこを突くような者がいれば、容赦はない。
 普段の笑みを消し、モンスターとしての冷酷な表情に切り替え、動きだすのであった。




―――――――――――
SIDE村に迫る盗賊(偽装)。

「ふむ、あそこが、今晩俺様たちが襲う村か」

 ホーホーと、夜中に無くダラブッチョバードやらフクロウの鳴き声が響く中、森の中から村の様子を探る者たちがそうつぶやいた。
 それぞれなるべく盗賊に見えるように偽装しているが、実はとある雇われた傭兵たち。
 ある者たちに要請されて雇われて、盗賊としての襲撃を依頼され、彼らは請け負った。

 傭兵は基本的に戦の場に出るのだが、そんな事が無ければそう出ることもない。
 大人しく蓄えで暮らしていても良いのだが、ここに集まった者たちは散財しまくり、まともに次の戦があるまで過ごす気が無かった者で、どの様な依頼でも請け負う気があったのだ。

 そんな中で得られた今回の依頼の内容は、盗賊のふりをして村を蹂躙し尽くすこと。
 全てを皆殺しにして人っ子一人残さないようというものであり、少々交渉して自分たちで楽しんだ後に口封じのために殺しても良いのであれば女を残しても構わないということにはしていた。

 何故、こんな辺境の田舎でそんな依頼を出してくるのかは不明だが、それでも彼らの良心が痛むことないだろう。
 彼らは傭兵のなかでも、更にたちが悪すぎるほどの、山賊盗賊海賊まがいの事を行う屑集団でもあったからだ。

「ぐへっへっへっへ、久しぶりに血の味を楽しめそうだぜぇ。」
「こんな田舎なら期待できないが、弱い奴らをいたぶるのは楽だしなぁ。良い女がいるかもしれないって話もあるし、も欲望を吐けるぜぇ」
「ふへへへっ!!」

 ニヤニヤ笑いをする傭兵たち。大都市とかを襲えとかならばともかく、楽そうな依頼で大金を稼げるのであれば拒否することもない。
 なお、今盗賊のような格好をしているのは、万が一姿がばれたとしても、盗賊が襲ってきたように見せかけるためだと、依頼主から言われたのでわざわざしているだけだが、偽装しなくても素で盗賊っぽいみためだなと思われていたのは言うまでもない。

「さてと、これだけ寝静まった頃合いであれば大丈夫だろう。急に俺様たちが現れたらパニックになり、悲鳴を上げて逃げ惑うだろうが、こんな田舎で俺たちを押さえつけることができるような奴もいねぇ!!」
「なすすべもなく蹂躙できるはずだ!」
「ああ、滅茶苦茶楽な仕事だと思えばいいのだ!」
「やるぞてめぇらぁぁ!!」
「「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」」

 気合いを入れ、傭兵たちが雄たけびを上げ、いざ村の襲撃へと腰を上げた…その時であった。




「くだらないですね」
「ゲスの極み、人に非ざる、愚物の臭い」

 突然聞こえた何者かの声。
 一体何者かと思い、全員がその声の方へ振り向き…‥‥固まった。

 薄暗いとはいえ、それでも照らす月明かりの下に、二人の美女が立っていたのだ。
 下の方に蜘蛛やら木の根が見えるような気がするが、そんな事は構う事もない。自分達の欲望のはけ口にはもったいないほどの凄まじい上玉と想い、一瞬だけ彼らの間に動揺がはしる。

「な、なんだあの美女たちは‥‥」
「や、野郎共、景気づけに襲ってしまえ!」
「こんな村へきて、まさか奇跡的な美女に出会えるとは!」

 少々驚きはしたが、すぐさま下心全開の声を上げ、襲い掛からんとする傭兵たち。
 だが、彼等は気が付かなかった。

 彼女達は人間ではなく、モンスターと言う存在であったことを。
 そして大事なエルがいるのに、全員皆殺しとか言う言葉をしっかり聞いてしまい、珍しく逆鱗に触れて大激怒をしていた状態であったことを‥‥‥


スパパパパ!!
「ほげっ!?」
「ふげん!?」
ズドドドン!!
「「「ぐげげげぇぇぇぇぇえ!?」」」

 襲い掛かろうと手を伸ばした瞬間、届くこともなく目に見えないほどの鋭く細い糸が舞い、傭兵たちの身体を切り裂いていく。
 肉片と化し、倒れていく仲間に気が付いた次の瞬間、悲鳴を上げる間もなく地中からドリルのように飛び出した木の根によって、貫かれ、次々に皆絶命していく。

 逃げようにも下から蔓が絡みつき、首の骨をへし折っていく。

 抵抗しようと刃物を振り回すも糸に阻まれ、木の根でつらぬかれて串刺しになる。

 
 気が付いたときには、多くの者が絶命し、死体を隠すためか全員地中に引き込まれ残っていなかった。
 そして、何故かその中で生き残った者は地中から生えてきた木の根にとらわれ、糸を巻き付けられて逃れられない状態にさせられた。

「「「も、もぐがあががが!!」」」


 逃れようと抵抗するも、木の根も糸も振り払えず、全く身体が動かず、恐怖がひしひしと迫って来る。

「さてと、邪魔なゴミは掃除できましたね」
「エル、見ていない。教育に悪すぎる光景、見せないようにできたはず」

 ぱんぱんと触れてもいないのに汚れを払うかのように動く彼女達。
 村の襲撃及び蹂躙、略奪などを企てていた相手には生かす価値はなかったが…どこの誰が、こんなことを企んだのか、しっかり聞いておく必要があるだろうと考え、情報を得るために数人だけわざと残したのだ。

 これがもし、エルが起きていて一緒であれば、彼にこんな光景を見せたくはないので手加減し、皆生かしていたかもしれない。
 けれども、ストッパーになるエルが不在であれば、モンスターだからこそ持つことが出来る人の心のない状態でやることが可能で、別に人の生死がどうなろうが知ったことではないので容赦なく惨殺できるのである。
 だからこそ、害になると判断した以上は排除するしかなく、とりあえず仕向けた者がいるらしいのであれば、今のうちに片づけたほうが良いと簡潔に決めたのだ。


「さてと、こうなるとまた来る可能性もありますし……できれば今晩中に片を付けたいですね」
「情報を短時間で引き出すのは、多分無理。専門家じゃないし、加減が難しくて、引き出すまで活かし続けるとなると、数日かかるだろうけど…すべて話す?」

 にこやかに縛り上げた者たちに向かってそう問いかけるハクロとカトレアであったが、その纏う雰囲気は普段の優しいものではなく、モンスターとしての、絶対的捕食者としての恐ろしい雰囲気を纏わせており、なおかつ村の襲撃を企てた相手に対しての怒りを含んでいた。

 情報を取るためという目的だけで、この場に生き残らされた傭兵は悟ってしまう。
 単純な報酬だけで眼がくらんでしまった自分たちは今、眠れる恐ろしい怪物を、叩き起こしてしまったのかもしれないという事を。

 しかし、後悔をするにはすでに遅すぎたのだろう。彼女達の逆鱗に触れ、生き延びるのは容易くはない。
 人が持つであろう心を閉じた状態の今、人がやること以上のものをすることが出来てしまうのだから。




‥‥‥結果として、一つの傭兵団は全滅し、この日以降は行方不明として処理されるのであった。

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