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第1章:幼少期~少年期前編
21話 似たようなことは、誰かが過去にやっているのか
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「おい、そこの新入生!!その横にいる人外美女共をこちらによこすのだぶぅ!!」
「‥‥‥何だ、今の声?」
「さぁ?」
「何でしょうか?」
学校に入学してからそこそこ時間が経過し、そろそろ一ヶ月が経過しそうなある日の昼、食堂で昼食を食べていると、何やら変な声が響き渡った。
声がした方向を見れば、僕よりも年上の高学年‥‥‥だいたい15~16歳ほどの男子生徒っぽいのだが、あくまでも身長基準の見た目で出したもので、横にすんごく伸びているような人ならばもうちょっと年齢がずれ込んでいる可能性があるだろう。
見た目が何というか、ウルトラメタボリックシンドロームを患った人みたいである。まだ若そうなのに、その歳でどうやってそこまで拡大された見た目になってしまっているのだろうか。
ぶよんぶよんっと動くたびに全身のお肉が揺れ動き、相当の肥満体系であることがうかがえ、具合などを見るとちょっと糖尿病・高血圧などが疑わしくなるほど。食堂の料理は基本的に栄養バランスが良いので、かなりの大食漢でもそこまで行かないとは思うのだが…相当運動をサボっているか、何か別のものを食べまくっているか、その他の要因が疑われるだろう。
医者じゃないけど、前世ブラックな職場で働く中、自分がどういう死因で逝きかねないか調べたことがあるからな。素人かじりの医学レベルならば、ちょっとはあるのだ。
「まぁ、気にすることもないか」
「そうですね。相手をする必要は無さそうですし、さっさと昼食を終えて一休みをしましょう。ああ、そう言えば今日は、食堂のおばちゃんが新作のデザートを作ってくれてますよ」
「材料、私が提供した、新鮮な木の実を余すことなく、豪快に使ったデザート、ピピンチ、アッポーン、イチランゴ等、酸味と甘みを感じるもの使っているの」
「おー、これまた甘酸っぱそうな、美味しそうなゼリーだね。中に果肉がたっぷりあるし、果汁で色合いが分かれて綺麗な色合いになっているかも」
「ごらぁぁぁぁぁぁ!!無視するなぁぁぁぁぶぅ!!」
明らかにロクデモナイ予感に、聞かなかったようなそぶりでごまかしたが、どうやら通用してくれないらしい。
どすどすと食堂の床を割るような勢いでこっちに来たが、一歩踏み出すたびに疲弊をしているようで、辿り着いたころには滝のような汗で覆われていた。
仕方がなく、嫌々めんどくさそうにしつつ、一応、問いかけてみる。
「えっと、僕等に対して声を掛けたのでしょうか」
「貴様以外に、そんな人外美女を引き連れたやつがどこにいるぶぅ!!」
鼻息荒く、苦しそうな呼吸をしながらも、メタボリック…面倒になったので仮称「豚饅頭」としつつ、豚饅頭がぜぇはぁっと息を切らして声を荒げる。
その言葉に対して、多少は納得できるところがあるせいか、周囲にいた生徒たちが確かにとつぶやき、頷く。間違ってはいないけど何をしたいのやら。
「ぜぇ、ぶぅ、ぼぅ…ここまでコケにされるのは頭にくるが、まぁ良いだろう。おい、その美女たちをどちらとも、この僕ちんに譲れぶぅ」
「あ、エル。これ、果汁ソースをかけて味をさらに変えることもできるようですよ!」
「本当だ。味を変えて食べ飽きないように、新しい刺激を加える工夫がされているのか」
「食堂のおばちゃん。素材の味を研究し、余すことなく生かす、料理の天才」
「だから話を聞けぇぇぇぇぇぇぇ!!ごぼぶえっふぅ!!」
僕らが全く話を聞こうとしないことに相当激怒したのか、豚饅頭がさらに声を荒げたが、途中でその肥満による負担で肺に無理が来ていたのか、思いっきり咳き込んだ。
日常生活にかなり支障が出ているレベルの、脂肪の塊になっているようだ。流石にそのレベルは、ダイエットをしないと寿命を削りかねないと思うのだが。
でもさっきからの感じだと、多分そんなことはしないだろう。苦労を嫌っている様子だし、ダイエットも三日坊主でやめるかもしれない。
「おい、あの巨体のデブ男って、確か5年生のタマブゥン=B=ゴルスリアじゃなかったか?」
「ああ、一応は王族の家系にギリギリ入れるような、怪しい部分があるギリギリ第25王子に収まっているやつだったか」
「あの美女たちは入学式当初から目にする機会があったのに、今頃になって行動を起こすってどれだけ情報に疎いんだろうか」
「いや、肉に埋もれた目ゆえに、見にくかっただけなんじゃ?」
「保険医に確か、ダイエットを先に励めと言われているのに、全然やらないやつだったはずだよなぁ」
周囲で見守っていた生徒たちがひそひそとうわさ話をして、その内容が耳に入って来たが、相当ロクデモナイ輩だというのはわかった。
というか、以前にもこの学校がある都市へ入る際にも、第20王子だった奴が問題を起こしていたりしたけど‥‥‥それよりも下の王子らしい奴でさえもこんなのって、この国は大丈夫なのだろうかと疑問に思う。
あと、きちんと医者にも言われているのだから、ダイエットに励んでほしい。自分の寿命をそのぜい肉で食いつぶされたくなければ、さっさとやってしまえばいいのに。
「ごえっぼごえっぼ‥‥‥ぜぇ、とにもかくにもだ、貴様のような庶民が、モンスターと言えどもとんでもなく美しい美女たちを侍らすのは許されん!!それは僕ちんが正統に受けるべきものなのだぶぅ!」
「‥‥‥何を言っているんだろうかこの人」
「いえ、人でしょうか?肉の巨塊が喋っているようにも見えますよね」
「『オーク』とか、そのあたりの子供?」
――――――
「オーク」
豚頭に巨大な肥満体形の人間の身体を持つ、ある意味定番のモンスター。
異性をこれでもかというほど徹底的に犯し、子孫を残すための道具にしか思っておらず、雌雄両方の存在が確認されてはいるが、同族同士では決して性交をせず、異種族に対してのみ性欲をたぎらせる。
基本的には異性を狙うのだが、極稀に同性を狙うような輩が出現したり、子供だけだったり老人だけ狙ったりなど、性癖の商会とも言われている。
ただし、その肉は絶品で、性的な襲撃による危険性から、見かけたら即殲滅・即加工・即食材行きを決定づけられている。
なお、近年は流石に繁殖力よりも上回る乱獲によって数が減少している。
――――――
「ぷっ、それはないよね」
「んー、オーク‥‥前にちょっと見かけたことがありますけど、あれだったらオークの方がまだ見た目的に良いですよ。豚頭ですけど、習性も似たようなのがあるらしく、案外綺麗好きって話ですしね」
「ぐっ、ぐっ、ッぐぅぅぅぅぅぅぅ誰がオークとの子供だ!!そんな汚らわしいやつではないのだぶぅ!!」
流石にその会話は相当傷ついたのか、真っ赤になって激怒する豚饅頭ことタマブゥン。
名前が酷いようなのだが、人のネーミングセンスに特にいうことはあるまい。どっちの方がましなのかと言えば‥いや、どちらも嫌だなぁ」
「ぬぬぬぬぬぬう、人を汚らわしい化け物に例え、嘲笑するとは不届きものめぇ!!ならば、決闘をするのだぶぅ!これでもくらえぇぇぇぇぇぇ!!」」
相当激怒しすぎたが、ちょっとは落ち着いたようで、何処からか、持っていた手袋を取り出し、タマブゥンは全力で投げつけて来た。
だがしかし、イメージ的にはこのままぶつかると思ったが…当たる前に、地面に落ちた。
どうやら体の贅肉が邪魔しているようで、投げる力が余りないようだ。体格が良いと剛速球も投げそうなものなのだが、筋肉より贅肉が強すぎたのだろう。
そもそも、そんなまともにものを投げられないほどの支障になっている贅肉が付いているのであれば、決闘しないほうが良うと思う。挑むぐらいならダイエットしてきた方が、身のためである。
「よ、よく避けたなぶぅ」
「避けてもないです。勝手に落下したよ」
「避ける間もないですよね」
「意味なし、認めない、ダメ人間?」
全然命中していないのに、ごまかすようにタマブゥンはそう言ったが、周囲から呆れられた目で見られていることに、彼は気が付いていないのだろうか。
哀れな肉の道化師に成り下がって…いや、道化師でもないな、この醜態。
「ねぇ、ハクロ、カトレア。決闘って貴族のやるものだっけ?」
「確か、授業でありましたね。貴族家同士の一種のパフォーマンスというか、お互いの力量をぶつけてかけ事を行うために、やるものですよ」
「賭け事、ちょっと悪いのもあるけど、大体は正々堂々。でも、今回のは…手袋当たってない」
「「つまり、決闘不成立です」」
聞いた話では、貴族同士で決闘を行う際に、手袋をぶつけて挑むらしい。平民と貴族間でも同様で、決闘前のやり取りの儀礼としてあるそうだ。
だがしかし、そもそも当てることができない時点で実力差があるので、受けて意味ないことが多いのだとか。ちょうど今、タマブゥンが見事に見せてしまったこれも、その例に当たるらしい。
「えええぇぇぇぃ!!まだまだだぶぅ!!」
当てることができていないのに、諦めが悪いのかさらにトマトのように真っ赤になるタマブゥン。
するとそこで、何やら他の生徒たちが手袋を大量に持ってきた。
「今なら手袋一組小金貨3枚(前世基準で一万五千円相当)で売るけど、買いませんかー!」
持ってきたのは、いかにもボロボロだけど一応手袋だってわかるような代物。
そんなものにそれだけの価値は、普通はない。
「普通、手袋って最高銀貨2~3枚(前世基準で二~三千円相当)程度だよね?あきらかなぼったくり価格で売っているんだけど」
「流石にあの馬鹿でもぼったくられていることに気が付くはずですよ」
「商機逃さない、商売根性溢れている、そんな人もいるようです」
「買うぞぶぅ!!あるだけ全部、出しやがるのだぶぅ!!」
「あ、でもこれ全部だと金剛貨5枚分(前世基準で五十万円相当)ですが、大丈夫なのでしょうか」
「全部、買い取ったぁぶぅ!!」
なんというか、馬鹿の極みを見たような気がした。
超・ぼったくりを受けているのにものともせず、速攻で支払って投げつけてくるタブゥマン。
だがしかし、どれもこれもその腕では全くエルに当たることなく途中で落ち、それを別の生徒が再度拾い、また売りつけ、見事な無駄のない商売のリサイクルに踊らされて、タマブゥンは狂気の末にあるような愚かさの極みを見せつけまくる。
「なぜだ!!なぜ、当たらないんだぶぅ!!」
全力で手袋を投げるも、どれもがエルに当たらず、ひたすら金を払っては手袋を買い、投げつけるタブゥマン。
もはや全自動自爆課金式手袋ピッチングマシンと化しているようだ。
これをさらなる商機と判断したのか、他の生徒たちもどんどん手袋を売りつけ、回収し、また売りつけるという一種のカオスな空間がここに出来上がった。経済の縮図が、ここにちょっと表されているだろう。
「そして、一発も当たらないね。ハクロ、カトレア、もうそろそろお昼が終わるし、次の授業の場所へ移動するよ」
「あ、そうですね。もうそろそろ時間でしたね」
「授業受けないけど、校庭で、日光浴して光合成する」
付き合いきれないカオスさに、僕等はさっさとここから去った。
だがしかし、タブゥマンは無理な運動による疲弊と大量の汗によって前がまともに見えていなかったのだろうか?
エルたちがいないのにその場でひたすら手袋を買い付けては投げつけ、途中で持っていた金が尽きてしまうのであった。
「よっしゃぁぁあ!!これでほしかったあれやこれが買えるぜぇぇ!!」
「馬鹿は利用するもんだな!!いい小遣い稼ぎになったぞ!!」
「そもそも当てられない時点で諦めればいいけど、間違ったプライドを持っていてくれたおかげで、程よく稼げたなぁ」
‥‥‥その中で一番得をしたのが、手袋を売りつけていた生徒たちだろう。
いい商売になったとばかりにほくほく顔で撤収し、その場には疲れ果てて動けなくなったタマブゥンが残るのみになった。
だがしかし、これが後々さらなる厄介事を引き寄せるのだが‥‥それに気が付く者は、まだいないのであった。
「‥‥‥何だ、今の声?」
「さぁ?」
「何でしょうか?」
学校に入学してからそこそこ時間が経過し、そろそろ一ヶ月が経過しそうなある日の昼、食堂で昼食を食べていると、何やら変な声が響き渡った。
声がした方向を見れば、僕よりも年上の高学年‥‥‥だいたい15~16歳ほどの男子生徒っぽいのだが、あくまでも身長基準の見た目で出したもので、横にすんごく伸びているような人ならばもうちょっと年齢がずれ込んでいる可能性があるだろう。
見た目が何というか、ウルトラメタボリックシンドロームを患った人みたいである。まだ若そうなのに、その歳でどうやってそこまで拡大された見た目になってしまっているのだろうか。
ぶよんぶよんっと動くたびに全身のお肉が揺れ動き、相当の肥満体系であることがうかがえ、具合などを見るとちょっと糖尿病・高血圧などが疑わしくなるほど。食堂の料理は基本的に栄養バランスが良いので、かなりの大食漢でもそこまで行かないとは思うのだが…相当運動をサボっているか、何か別のものを食べまくっているか、その他の要因が疑われるだろう。
医者じゃないけど、前世ブラックな職場で働く中、自分がどういう死因で逝きかねないか調べたことがあるからな。素人かじりの医学レベルならば、ちょっとはあるのだ。
「まぁ、気にすることもないか」
「そうですね。相手をする必要は無さそうですし、さっさと昼食を終えて一休みをしましょう。ああ、そう言えば今日は、食堂のおばちゃんが新作のデザートを作ってくれてますよ」
「材料、私が提供した、新鮮な木の実を余すことなく、豪快に使ったデザート、ピピンチ、アッポーン、イチランゴ等、酸味と甘みを感じるもの使っているの」
「おー、これまた甘酸っぱそうな、美味しそうなゼリーだね。中に果肉がたっぷりあるし、果汁で色合いが分かれて綺麗な色合いになっているかも」
「ごらぁぁぁぁぁぁ!!無視するなぁぁぁぁぶぅ!!」
明らかにロクデモナイ予感に、聞かなかったようなそぶりでごまかしたが、どうやら通用してくれないらしい。
どすどすと食堂の床を割るような勢いでこっちに来たが、一歩踏み出すたびに疲弊をしているようで、辿り着いたころには滝のような汗で覆われていた。
仕方がなく、嫌々めんどくさそうにしつつ、一応、問いかけてみる。
「えっと、僕等に対して声を掛けたのでしょうか」
「貴様以外に、そんな人外美女を引き連れたやつがどこにいるぶぅ!!」
鼻息荒く、苦しそうな呼吸をしながらも、メタボリック…面倒になったので仮称「豚饅頭」としつつ、豚饅頭がぜぇはぁっと息を切らして声を荒げる。
その言葉に対して、多少は納得できるところがあるせいか、周囲にいた生徒たちが確かにとつぶやき、頷く。間違ってはいないけど何をしたいのやら。
「ぜぇ、ぶぅ、ぼぅ…ここまでコケにされるのは頭にくるが、まぁ良いだろう。おい、その美女たちをどちらとも、この僕ちんに譲れぶぅ」
「あ、エル。これ、果汁ソースをかけて味をさらに変えることもできるようですよ!」
「本当だ。味を変えて食べ飽きないように、新しい刺激を加える工夫がされているのか」
「食堂のおばちゃん。素材の味を研究し、余すことなく生かす、料理の天才」
「だから話を聞けぇぇぇぇぇぇぇ!!ごぼぶえっふぅ!!」
僕らが全く話を聞こうとしないことに相当激怒したのか、豚饅頭がさらに声を荒げたが、途中でその肥満による負担で肺に無理が来ていたのか、思いっきり咳き込んだ。
日常生活にかなり支障が出ているレベルの、脂肪の塊になっているようだ。流石にそのレベルは、ダイエットをしないと寿命を削りかねないと思うのだが。
でもさっきからの感じだと、多分そんなことはしないだろう。苦労を嫌っている様子だし、ダイエットも三日坊主でやめるかもしれない。
「おい、あの巨体のデブ男って、確か5年生のタマブゥン=B=ゴルスリアじゃなかったか?」
「ああ、一応は王族の家系にギリギリ入れるような、怪しい部分があるギリギリ第25王子に収まっているやつだったか」
「あの美女たちは入学式当初から目にする機会があったのに、今頃になって行動を起こすってどれだけ情報に疎いんだろうか」
「いや、肉に埋もれた目ゆえに、見にくかっただけなんじゃ?」
「保険医に確か、ダイエットを先に励めと言われているのに、全然やらないやつだったはずだよなぁ」
周囲で見守っていた生徒たちがひそひそとうわさ話をして、その内容が耳に入って来たが、相当ロクデモナイ輩だというのはわかった。
というか、以前にもこの学校がある都市へ入る際にも、第20王子だった奴が問題を起こしていたりしたけど‥‥‥それよりも下の王子らしい奴でさえもこんなのって、この国は大丈夫なのだろうかと疑問に思う。
あと、きちんと医者にも言われているのだから、ダイエットに励んでほしい。自分の寿命をそのぜい肉で食いつぶされたくなければ、さっさとやってしまえばいいのに。
「ごえっぼごえっぼ‥‥‥ぜぇ、とにもかくにもだ、貴様のような庶民が、モンスターと言えどもとんでもなく美しい美女たちを侍らすのは許されん!!それは僕ちんが正統に受けるべきものなのだぶぅ!」
「‥‥‥何を言っているんだろうかこの人」
「いえ、人でしょうか?肉の巨塊が喋っているようにも見えますよね」
「『オーク』とか、そのあたりの子供?」
――――――
「オーク」
豚頭に巨大な肥満体形の人間の身体を持つ、ある意味定番のモンスター。
異性をこれでもかというほど徹底的に犯し、子孫を残すための道具にしか思っておらず、雌雄両方の存在が確認されてはいるが、同族同士では決して性交をせず、異種族に対してのみ性欲をたぎらせる。
基本的には異性を狙うのだが、極稀に同性を狙うような輩が出現したり、子供だけだったり老人だけ狙ったりなど、性癖の商会とも言われている。
ただし、その肉は絶品で、性的な襲撃による危険性から、見かけたら即殲滅・即加工・即食材行きを決定づけられている。
なお、近年は流石に繁殖力よりも上回る乱獲によって数が減少している。
――――――
「ぷっ、それはないよね」
「んー、オーク‥‥前にちょっと見かけたことがありますけど、あれだったらオークの方がまだ見た目的に良いですよ。豚頭ですけど、習性も似たようなのがあるらしく、案外綺麗好きって話ですしね」
「ぐっ、ぐっ、ッぐぅぅぅぅぅぅぅ誰がオークとの子供だ!!そんな汚らわしいやつではないのだぶぅ!!」
流石にその会話は相当傷ついたのか、真っ赤になって激怒する豚饅頭ことタマブゥン。
名前が酷いようなのだが、人のネーミングセンスに特にいうことはあるまい。どっちの方がましなのかと言えば‥いや、どちらも嫌だなぁ」
「ぬぬぬぬぬぬう、人を汚らわしい化け物に例え、嘲笑するとは不届きものめぇ!!ならば、決闘をするのだぶぅ!これでもくらえぇぇぇぇぇぇ!!」」
相当激怒しすぎたが、ちょっとは落ち着いたようで、何処からか、持っていた手袋を取り出し、タマブゥンは全力で投げつけて来た。
だがしかし、イメージ的にはこのままぶつかると思ったが…当たる前に、地面に落ちた。
どうやら体の贅肉が邪魔しているようで、投げる力が余りないようだ。体格が良いと剛速球も投げそうなものなのだが、筋肉より贅肉が強すぎたのだろう。
そもそも、そんなまともにものを投げられないほどの支障になっている贅肉が付いているのであれば、決闘しないほうが良うと思う。挑むぐらいならダイエットしてきた方が、身のためである。
「よ、よく避けたなぶぅ」
「避けてもないです。勝手に落下したよ」
「避ける間もないですよね」
「意味なし、認めない、ダメ人間?」
全然命中していないのに、ごまかすようにタマブゥンはそう言ったが、周囲から呆れられた目で見られていることに、彼は気が付いていないのだろうか。
哀れな肉の道化師に成り下がって…いや、道化師でもないな、この醜態。
「ねぇ、ハクロ、カトレア。決闘って貴族のやるものだっけ?」
「確か、授業でありましたね。貴族家同士の一種のパフォーマンスというか、お互いの力量をぶつけてかけ事を行うために、やるものですよ」
「賭け事、ちょっと悪いのもあるけど、大体は正々堂々。でも、今回のは…手袋当たってない」
「「つまり、決闘不成立です」」
聞いた話では、貴族同士で決闘を行う際に、手袋をぶつけて挑むらしい。平民と貴族間でも同様で、決闘前のやり取りの儀礼としてあるそうだ。
だがしかし、そもそも当てることができない時点で実力差があるので、受けて意味ないことが多いのだとか。ちょうど今、タマブゥンが見事に見せてしまったこれも、その例に当たるらしい。
「えええぇぇぇぃ!!まだまだだぶぅ!!」
当てることができていないのに、諦めが悪いのかさらにトマトのように真っ赤になるタマブゥン。
するとそこで、何やら他の生徒たちが手袋を大量に持ってきた。
「今なら手袋一組小金貨3枚(前世基準で一万五千円相当)で売るけど、買いませんかー!」
持ってきたのは、いかにもボロボロだけど一応手袋だってわかるような代物。
そんなものにそれだけの価値は、普通はない。
「普通、手袋って最高銀貨2~3枚(前世基準で二~三千円相当)程度だよね?あきらかなぼったくり価格で売っているんだけど」
「流石にあの馬鹿でもぼったくられていることに気が付くはずですよ」
「商機逃さない、商売根性溢れている、そんな人もいるようです」
「買うぞぶぅ!!あるだけ全部、出しやがるのだぶぅ!!」
「あ、でもこれ全部だと金剛貨5枚分(前世基準で五十万円相当)ですが、大丈夫なのでしょうか」
「全部、買い取ったぁぶぅ!!」
なんというか、馬鹿の極みを見たような気がした。
超・ぼったくりを受けているのにものともせず、速攻で支払って投げつけてくるタブゥマン。
だがしかし、どれもこれもその腕では全くエルに当たることなく途中で落ち、それを別の生徒が再度拾い、また売りつけ、見事な無駄のない商売のリサイクルに踊らされて、タマブゥンは狂気の末にあるような愚かさの極みを見せつけまくる。
「なぜだ!!なぜ、当たらないんだぶぅ!!」
全力で手袋を投げるも、どれもがエルに当たらず、ひたすら金を払っては手袋を買い、投げつけるタブゥマン。
もはや全自動自爆課金式手袋ピッチングマシンと化しているようだ。
これをさらなる商機と判断したのか、他の生徒たちもどんどん手袋を売りつけ、回収し、また売りつけるという一種のカオスな空間がここに出来上がった。経済の縮図が、ここにちょっと表されているだろう。
「そして、一発も当たらないね。ハクロ、カトレア、もうそろそろお昼が終わるし、次の授業の場所へ移動するよ」
「あ、そうですね。もうそろそろ時間でしたね」
「授業受けないけど、校庭で、日光浴して光合成する」
付き合いきれないカオスさに、僕等はさっさとここから去った。
だがしかし、タブゥマンは無理な運動による疲弊と大量の汗によって前がまともに見えていなかったのだろうか?
エルたちがいないのにその場でひたすら手袋を買い付けては投げつけ、途中で持っていた金が尽きてしまうのであった。
「よっしゃぁぁあ!!これでほしかったあれやこれが買えるぜぇぇ!!」
「馬鹿は利用するもんだな!!いい小遣い稼ぎになったぞ!!」
「そもそも当てられない時点で諦めればいいけど、間違ったプライドを持っていてくれたおかげで、程よく稼げたなぁ」
‥‥‥その中で一番得をしたのが、手袋を売りつけていた生徒たちだろう。
いい商売になったとばかりにほくほく顔で撤収し、その場には疲れ果てて動けなくなったタマブゥンが残るのみになった。
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