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第1章:幼少期~少年期前編

22話 本人たちよりも、周囲の方が滅茶苦茶苦労させられるのはお約束らしい

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SIDE王城

‥‥‥学校がある都市マストリアから離れている、ゴルスリア王国の王都。
 その中心部に存在しているこの国の王城の執務室で、国王こと、バルドロス=B=ゴルスリアが現在、頭を盛大に抱えて唸っていた

「うぐぐぐぐ…第20王子、いや元息子が勝手に入国しようとした報告も頭が痛いが、今度は第25王子の息子が異常な金の浪費を起こすとは…何をやらかしているのだ、王子たちよ」

 はぁっと溜息を吐き、こめかみを抑えつつ疲れ切った表情になるバルドロス国王。
 彼自身は、対外的な評価ではそこまでの愚王ではなく、一応、そこそこの功績や、政治に関しては自分だけで決定せずに周囲の声をしっかりと取り入れてより発展させていくなどの周囲との調和は出来ており、行動自体に問題はそう起こすことはない。

 まぁ、あくまでそれなりのという評価になる程度であり、為政者としてはあまりぱっとしないとも言われていたりするのである。
 総合して、良くて平凡、悪くて劣等…そんな風な印象を周囲は抱いており、確信的な為政者でも愚者すぎる為政者でもない、どっちにも当たらない平均的な王として、在位していたのであった。

「国王陛下がより教育に力を注ぐことが出来れば、ここまで馬鹿をやらかすような王子たちは出なかったかもしれませんが、元々の素質というのもあるのかもしれないですねぇ」

 バルドロス国王の悲痛なつぶやきに対して、側近の宰相であるイツウドスンが呆れたように返答をする。
 評価として平凡な王ではあるが、国を盛大な危機に陥れるようなことも無ければ、愚かな手段を取るようなこともないので、多少は付き合いやすい仲ではあるのだ。
 ただし、その王の子供すべてが誰も彼もツッコミどころが多くなる状態に成長したことに関しては、どうしようもなさすぎて匙を投げるしかなかったが。

「だってなぁ、余には息子が100人近くもいるから、全部を見届けるのは大変な事なんだぞ?」
「だってもなにも、陛下自身が文字通りまいた種でしょうが!!しかも、割とまともな子たちは王族の責務に関しての重大さを理解しているがゆえに全力で放棄して逃れようと動き、そうでないならば全力でぶつかり合い、盛大にしでかす奴らを作ったのは、どこのオスですか!!」
「うぐぅっ」

 イツウドスンの叫びに、バルドロスは身を縮こまらせつつ反論が出来なかった。 
 この国王、優柔不断というか、流されやすいところがあるせいで色々と決めかねることが多く、それゆえになんやかんやあって側妃や妾が出来上がってしまい、しっかりとまともじゃない方の子供たちには更に悪くなるようなものが混ざった状態で生まれてきているようなのであった。

「しかし、この第25王子‥‥‥タブゥマン殿下の消費に関してですが、どうやら手袋の大量購入したらしいですね。何をどうしてそこまで買いまくったのか、買ったところで似合うサイズのものもないので、まずはダイエットをすべきだと王城の医者たちも言ってましたがね」
「そこだよな…それなのに、痩せる努力よりも浪費を選ぶか‥‥この息子はもう、廃嫡とするか。流石に無駄金をどかどか使う事が周囲に隠せないほど知れ渡っているからな」
「ある程度自分の血筋とは言え、身内に甘すぎますよね国王陛下‥‥呆れてますが、切捨てる時はざくっといきますので、まだなんとかマシというべきでしょうか」

 目の前に仕えるべき主がいるのに、この言いようではあるが、不敬罪に問われはしない。
 自分の色々と駄目なところは分かっているので、そこを隠さず言ってくれるものは必要だからである。

 取りあえず、この王子の末路は決定したとして、受けた報告に関しても目を通さなくてはならない。

「しかし、フリーサイズでも似合うモノがないのに、それでも手袋を大量購入ということは‥‥‥我が息子は誰かに決闘を挑もうとしたのだろうか?それしか考えられないが」
「報告書を読みますと‥‥‥ふむふむ、確かに決闘を挑もうとしたようですが、どうやら相手は、今年学校に入学した新入生に対してのようですね。年齢差というのもあるのに、先輩としての心持もないとは、頭の中はどれだけの出来なのでしょうか」
「‥…ん?」

 内容を聞いている間、ふとある事に気が付き、ぴたりとバルドロス国王は動きを止めた。
 何かこう、ものすごくやらかしてしまったというカ、嫌な予感が見えたからである。

「そ、その決闘を挑もうとしたのは、誰だ?」
「えっと報告によりますと、エル=アーロスとかいう新入生のようですね。まったく、何をもってこんな新入生に上級生であるはずの王子が決闘を挑もうとしたのやら」
「エル=アーロス…アーロス‥‥‥まっ、まっ、まさか!?イツウドスン、直ちに本件の箝口令を出し、学校外に情報を漏らすな!!」
「はい?」

 ばっと何かに気が付いたのか、盛大に冷や汗を滝のように流すほど突然慌てだしたバルドロス国王の言葉に、イツウドスンは首を傾げた。

「一体どうしたのですか、国王陛下?陛下の救いようがない大多数の大馬鹿王子があらぶって自爆し、廃嫡されるのはもはや喜劇として周知されているので、今さら一人や二人、廃嫡するのは情報を漏らさなくても問題ないですって」
「そうではない!!いや、そう周知されていることは大問題しかないが、このことがあいつ・・・にバレるとまずい!!」

 側近とはいえ、なかなか厳しい意見を言ったイツウドスンに対して、そんな事を問うことも構うことなく、滅茶苦茶に慌てふためくバルドロス国王。
 なぜそうなっているのか、状況をイツウドスンが今一つつかめないその時であった。

ホーッ ホーッ
「!?」

 突然、街中にあり、まだ昼間のはずなのに、室内にフクロウの鳴き声のようなものが響き渡る。
 その声を耳にして国王が窓の方を見ると、誰が置いたのか、いつのまにか書類の束がそこに鎮座おうぃsていた。

「な、何ですかこの不審物は!!」
「おうぅ…しまった、もうすでに遅かったのか」

 その束を見て、イツウドスンは驚愕し、バルドロス国王は悲痛な表情を浮かべ、床に倒れ込む。
 どういうことなのかと思いつつ、その置かれていた書類の束を持って、広げてみれば…‥‥

「こ、これは…陛下の王子たちの、第8~30王子分のやらかしや不正、その他犯罪の諸々の証拠!?まだ調べているはずのものもあるのに、完璧な裏付けや証拠の場所までとは!!」

 詳細に、そして確実な証拠も一緒にされており、目を通したイツウドスンは驚愕した。

「ここまで先に、やっておるとは‥‥ああ、しっかりとやらなければ、これらすべてが国の方で処理する前に、盛大にやらかすと警告しているのか…ふははははははははは!!」
「へ、陛下?」
「今日はもう仕事はやめだぁ!!考える事を放棄して、この証拠を全部利用して潰していく前に、何もかも忘れて盛大に発散するために、酒を出せぇぇ!!」
「陛下ぁぁぁぁぁぁ!?」

 自棄になったかのように叫ぶバルドロス国王に対して、どこからどうやってツッコミを入れればいいのかわからず、あたふたするイツウドスン。
 これだけの書類の束を前にして、何やら乱心されたようだ。

「お前なぁ、ここ最近音沙汰なかったから忘れていただろうが、こんなことをできるのはあいつしかおらぬだろうが!!余を昔から知っているならば、たった今来た書類の束の送り主も知っているだろうが!!」
「えっと‥‥‥ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 バルドロス国王に言われ、思い出して声を出すイツウドスン。
 無理もない、その相手に関しての記憶はあるのだが、大抵の場合さらなる厄介事へ向かう羽目になり、疲れ切ってしまうのでここ最近は心の安寧のために、ちょっと忘却していたのだ。
 それが今の言葉で無理やり思い出してしまい、顔を青ざめさせ、何処か諦めた表情へと彼も変わった。

「…‥‥あああもぅ!!分かりました陛下ぁぁぁ!!」
「今宵はとことん呑むぞイツウドスン!!」

 互いに肩を組み、やけになる国王とイツウドスン。
 その彼らの叫びは、王城内に響き渡り、王城内のその他の兵士たちや侍女たちは何事かと首を傾げたのであった。


―――――――――――――――
SIDEスクライド学校


‥‥‥ああ、またあの王子が馬鹿やらかしたのか。
 入院先から復帰し、スクライド学校の校長は、不在時に会ったことに関しての、職員たちから昼間のあった騒動の報告を聞きながら、溜息を吐いてそう思った。

 この学校は基本的に平等で扱っており、身分に関しては暗黙の了解があれども、それを利用して恐喝したりするなどの問題行動は許されていない。
 それなのに、その事を理解せずにやらかすものがたまに折、大抵の筆頭がこの国の王子の幾人かであり、時たま呆れかえるような大馬鹿をしでかすことがあって、頭痛のタネになっているのだ。

 そして本日も、どうやら第25王子だったタブゥマンとやらがやらかしたという報告が来て、そろそろ王族は学校ではなく他国の方へ向かってもらうかと考えていたその時であった。


「それでありまして、ここで王子殿下は生徒の中で、新入生のエル=アーロスに対して決闘を申し込もうとしましたね」
「‥‥‥はぁ!?」

 その言葉が教員の一人から出た途端に、校長は思わず声を出した。

「いやちょっと待て、エルって、あの新入生か?」
「ええ。我々教職員一同も、とっくの前に周知している彼です」

 エル=アーロス。

 入学早々、魔水晶が破壊されて測定不可能なほどの魔力を持ち、保護者代わりにアラクネが共についてきて、さらに最近ではドリアードのカトレアも誕生させてしまい、家族としての扱いで滞在させてはいるのだが、その大量のやらかしもあって、教職員たちは彼に注目していた。
 モンスターの中でもかなりの実力があるアラクネにドリアードを従え、そしてそれだけの魔力量があるという並外れた才能があるのに、将来的には田舎でのんびり過ごしたいらしいと言う話に、物凄いもったいない感が出ている生徒でもあるのだ。

 そんな生徒に対して、教師たちの中では馬鹿王子ズに入るタブゥマンが、今更彼に関しての情報を耳にして、その美しいモンスターを得ようとするがために、無謀すぎる決闘の申し込みに驚きを隠せなかった。

「そもそもの動機が、彼が連れていた美女もといモンスターを耳にして、自らの性欲の発散にしようとしていたことらしいですね」
「それだけでも十分な醜聞なうえに、決闘のために手袋を投げてまったく当てることが出来なかったそうです。医者の勧めでダイエットも進言されていたはずですが、それすら耳にせずにやらかしたそうです」

「はぁぁぁぁ…‥‥どれだけ馬鹿・屑・マヌケ・愚者というような王子でも、決闘にすぐさま手を出すような真似まではしないと思っていたが、愚かさは度を過ぎると読みにくくなるか。こりゃ、国王陛下が廃嫡処分にするだろうが…なんで、こんな問題児ばかりが集まるんだぁぁぁぁぁあ、ごぼぶげべらぁ!!」
「校長先生!?」
「また吐血したぞ!!」
「殉職はやめてください!!今、貴方が校長職を辞されては困るのです!!」

 あまりの心労に叫んでいる最中に再び吐血してしまい、あっと言う間に倒れた校長に対して教職員たちは慌てて処置を行い始める。
 次期校長の座は通常ならば欲しいかもしれないが、今の時期は流石に貰うには最悪の状況が続いているがゆえに、普段仲が悪い先生がいたとしても、互いに協力をする関係が生まれていた。

 そして、病院へカムバックして搬送されゆく校長を見て、教職員一同は絶対にエルが卒業するまで絶対に、次期校長にはなるまいと心に誓うのであった‥‥‥
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