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年越しSS
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冬休みはお互いの実家に帰ることになっていた。
それは、随分前に決まっていることで、自分の実家は神社だし、あの人は所謂いいところのお坊ちゃんだから新年はパーティがあるらしい。
大晦日、二年参りの対応にてんやわんやが終わって年が変わった午前二時、ようやく一息ついて持っていた携帯のメッセージアプリを確認した。
人気が無くなった境内は冷え込みもあって、酷く寂しい雰囲気だ。
あの人からは良いお年をというメッセージと日付が変わって直ぐに、明けましておめでとうというメッセージが入っていた。
思わず、自分の指から伸びる糸を目で追ってその先に居るであろう人のことで頭がいっぱいになる。
返事をしようかと思ったが今の時間を考えてやめようとしたところで、【電話していい?】とメッセージが入った。
起きていて、既読に気が付いたらしい。マメなことでと思ったところで携帯の着信音がした。
『もしもーし。あけましておめでとう。』
「あけましておめでとうございます。」
電話は思っていた人で、どうせ会えないし、予定も合わないから連絡も碌にできないと思っていただけに嬉しかった。
でも少し声に違和感があった。
「今外ですか。」
「あー、うん。そうだよ。」
歯切れの悪い、あの人の声に何かあったのだろうかと思う。
「怒んないで聞いてね。」
「まあ、内容によりますが。」
そういったところでバタバタという音が聞こえ、そちらを見ると息を切らせたあの人がいた。
「来ちゃった。」
服装は仕立ての良さそうなスーツで、髪の毛もきちんとセットされていて、きっと何かパーティーの後なんだろう。
明日も予定が詰まっていると聞いていた。
「なんで居るんですか?」
出てきたのは全く可愛気の欠片も無い一言で、なんでこの人は自分を選んでしまったのだろうと思う。
「あいたかったからに決まってるじゃん。」
一歩一歩近づいてくるあの人に少しずつ短くなっていく白い糸に、心臓は痛いほど鳴っている。
「巫女衣装可愛いね。」
「こういうのは誰が着てもそれなりに見える様にできてるんですよ。」
溜息交じりに返した言葉に、あの人は「えーそういう事じゃなくてー。」と不満をもらした。
俺もスーツについて何か言ったほうが良かったのかもしれないけれど、何も言葉が出なかった。
何もかもお見通しなのか何なのかは分からないけれど、あの人は困ったように笑ってそれから、俺のことを抱きしめた。
「キスしていい?」
鼻先が触れる距離で言われ、ここが実家だとか外だとかという事すべてが吹っ飛んだ。
俺から、ほんの少し最後の数センチ顔を寄せると、あの人は、優しい優しいキスを俺にくれた。
とても短い時間だった。
でも、唇を離してみたあの人の顔はほのかにピンク色になっていて、きっと自分の顔も色づいていることだろう。
「ごめんね、そんなに時間が無いんだ。」
そっと俺の髪の毛を撫でるあの人はとても申し訳なさそうで、俺はただ首を振った。
「謝らないでください。来てくれて嬉しかった。」
漸く、素直に言えた言葉にあの人は双眸をこれでもかという位下げて「俺も会えてよかった。」と言った。
後ろ髪をひかれるみたいに何度も振り返りながら戻っていったあの人を見送って自分の着ているものにあの人の香りが移っていることに気が付いた。
そっと、その匂いを嗅いで、まるで夢だったんじゃないかという幸せな時間を噛みしめた。
了
それは、随分前に決まっていることで、自分の実家は神社だし、あの人は所謂いいところのお坊ちゃんだから新年はパーティがあるらしい。
大晦日、二年参りの対応にてんやわんやが終わって年が変わった午前二時、ようやく一息ついて持っていた携帯のメッセージアプリを確認した。
人気が無くなった境内は冷え込みもあって、酷く寂しい雰囲気だ。
あの人からは良いお年をというメッセージと日付が変わって直ぐに、明けましておめでとうというメッセージが入っていた。
思わず、自分の指から伸びる糸を目で追ってその先に居るであろう人のことで頭がいっぱいになる。
返事をしようかと思ったが今の時間を考えてやめようとしたところで、【電話していい?】とメッセージが入った。
起きていて、既読に気が付いたらしい。マメなことでと思ったところで携帯の着信音がした。
『もしもーし。あけましておめでとう。』
「あけましておめでとうございます。」
電話は思っていた人で、どうせ会えないし、予定も合わないから連絡も碌にできないと思っていただけに嬉しかった。
でも少し声に違和感があった。
「今外ですか。」
「あー、うん。そうだよ。」
歯切れの悪い、あの人の声に何かあったのだろうかと思う。
「怒んないで聞いてね。」
「まあ、内容によりますが。」
そういったところでバタバタという音が聞こえ、そちらを見ると息を切らせたあの人がいた。
「来ちゃった。」
服装は仕立ての良さそうなスーツで、髪の毛もきちんとセットされていて、きっと何かパーティーの後なんだろう。
明日も予定が詰まっていると聞いていた。
「なんで居るんですか?」
出てきたのは全く可愛気の欠片も無い一言で、なんでこの人は自分を選んでしまったのだろうと思う。
「あいたかったからに決まってるじゃん。」
一歩一歩近づいてくるあの人に少しずつ短くなっていく白い糸に、心臓は痛いほど鳴っている。
「巫女衣装可愛いね。」
「こういうのは誰が着てもそれなりに見える様にできてるんですよ。」
溜息交じりに返した言葉に、あの人は「えーそういう事じゃなくてー。」と不満をもらした。
俺もスーツについて何か言ったほうが良かったのかもしれないけれど、何も言葉が出なかった。
何もかもお見通しなのか何なのかは分からないけれど、あの人は困ったように笑ってそれから、俺のことを抱きしめた。
「キスしていい?」
鼻先が触れる距離で言われ、ここが実家だとか外だとかという事すべてが吹っ飛んだ。
俺から、ほんの少し最後の数センチ顔を寄せると、あの人は、優しい優しいキスを俺にくれた。
とても短い時間だった。
でも、唇を離してみたあの人の顔はほのかにピンク色になっていて、きっと自分の顔も色づいていることだろう。
「ごめんね、そんなに時間が無いんだ。」
そっと俺の髪の毛を撫でるあの人はとても申し訳なさそうで、俺はただ首を振った。
「謝らないでください。来てくれて嬉しかった。」
漸く、素直に言えた言葉にあの人は双眸をこれでもかという位下げて「俺も会えてよかった。」と言った。
後ろ髪をひかれるみたいに何度も振り返りながら戻っていったあの人を見送って自分の着ているものにあの人の香りが移っていることに気が付いた。
そっと、その匂いを嗅いで、まるで夢だったんじゃないかという幸せな時間を噛みしめた。
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