明けの明星、宵の明星

渡辺 佐倉

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本編7

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けれど、何故という疑問が全てなくなった訳では無い。

「なんで、今まで黙っていたんですか?」
「言えば我慢できなくなるだろうとわかっていたからな。」

目元を手で覆いながら都竹さんは言う。
結局自制できなくてこの様だ。

「言ってくれれば良かったじゃないですか!
俺が貴方に反応してるの気が付いていた筈だろ。」

思わず語気が強くなる。

「碌に学校にも通えなくなるのが分かりきっていて手を出せる訳がないだろ。」

俺が我慢できるところまでは耐えるつもりだったし、もうしばらくは我慢するよ。
都竹さんはそういうとベッドから立ち上がろうとした。
その都竹さんのシャツを掴んだのは俺だ。

だから、悪いのは全部俺で、自業自得で、彼の努力を踏みにじるのも俺だ。

「他のアルファの匂いなんてしたこと無いのに、貴方の匂いを嗅ぐと頭がおかしくなる。」

――なあ、それって俺も貴方じゃなきゃ駄目ってことですよね。

俺がそう伝えた次の瞬間、ベッドに突き飛ばされ、それから、着ていたシャツを引きちぎられた。

派手に吹っ飛んだボタンを眺める。

「頼むから、煽る様なことは言うな。」

そう言いながらも都竹さんの瞳には情欲の炎が揺れてギラギラと光っている。医者の困ったみたいな微笑みが頭をよぎる。

「都竹さん、もうとっくに体が許容できる我慢の限界超えてるんでしょう?」

俺が言うと、ッチと舌打ちをすると体をうつ伏せにひっくり返されて、シャツを強引に引っ張られる。
刹那、都竹さんの匂いが今までと比べ物にならない位強くなった。

ブツリ。
そんな音がした気がした。
激痛が首にはしる。都竹さんが俺の項を噛んだのだとすぐに理解した。

喜びとか喪失感とかそんな感情を理解する前に、圧倒的な快感が体を走り抜ける。
首を噛まれて、明らかに皮膚が破れて出血もしているだろう。なのに、痛みよりも何よりも性的快感が全身を覆って、それだけで達してしまう。

今、分かるのは、首を舐められていることと自分が馬鹿みたいに嬌声を上げていること。

「都竹さんっ……。」

思わず名前を呼ぶと、再度仰向きにひっくり返されると、都竹さんと目が合う。
獣の様だと再び思う。
この状態がかなり酷い発情状態なのか、オメガの様に数か月に一回さらに大きな発情状態があるのかは分からない。
けれど今詳しく聞ける状態じゃ、お互いに無い。

手を伸ばして都竹さんの頭を抱える様にしてこちらに引き寄せる。
唇にそっと自分の唇で触れると血の味がした。
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