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本編6
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「そもそも、オメガは発情期があるから差別されてきたと思っているだろう。」
そう言うと、都竹さんは自嘲気味に笑う。
「一定期間行動を制限される位で誰かの庇護が絶対的に必要とされる筈がないだろう。
それこそ、ベータの女性には生理があって数日体調不良に悩まされるのに扱いはオメガよりよほどいい。
大体、抑制剤で抑えられる程度のもので一生を左右どころか誰かにすがらないと生きていけないこと自体がおかしいだろう。」
「じゃあ、なんで……。」
聞き返した自分に都竹さんは逡巡した後答えた。
「本当の意味での発情期があるのはアルファの方だからだ。」
オメガのそれと違って、かなり凶暴性の高いものなんだ。ぽつりぽつりと都竹さんは言う。
「それが、オメガと何の関係が……。」
「ベータだと相手が務まらないそうだ。
結局のところ、オメガの発情期はアルファのそれに耐えるためにある様なものだからな。」
まともな抑制剤なんてものは存在しないし、アルファは元々支配階級だ。だから、今のままの体制でいいと思っているアルファも多い。
それだけ言うと、都竹さんは俺の上からどいて、ベッドの淵に座った。
のそのそと碌に動かない体を起き上がらせて都竹さんを見る。
「……俺は、貴方の為の生贄に差し出されたってことですか?」
「有り体に言えばそうなるな。」
都竹さんに言われて、ようやく安藤の言った過保護だの意味が分かった。
都竹さんは知っていて、けれどその事実を今まで自分に言わなかったということだ。
「じゃあ、なんで今になって他のアルファの匂いをつけて来たなんて言うんですか?
とっとと抑制剤代わりに俺を使うか、それとも女のオメガを探すなりすればいいじゃないですか。」
最初から、都竹さんの好みに合っていないことは知っていた。
ならば、他に行けばいいのだ。
自分自身は今も全く分からないが、こうやって人の匂いをつけて来たことに怒る必要なんてないのだ。
「他の人間に反応しないんだ。」
「それは……、俺が運命の番だからですか?」
絞り出すように言った都竹さんの言葉はとても残酷に聞こえた。
「それの影響が全く無いとは思ってはいない。
だけど、そうじゃない。最初に話した時のお前の強さを見て、他では無理だと思った。」
じゃあ、なんで抱いてくれなかったんですか?とは言えなかった。
それはお互い様だ。
俺も最初都竹さんにまるで興味は無く、酷い嫌味のような事を言った。
それを俺の強さだと思ってくれた都竹さんに言うべき言葉では無かった。
そう言うと、都竹さんは自嘲気味に笑う。
「一定期間行動を制限される位で誰かの庇護が絶対的に必要とされる筈がないだろう。
それこそ、ベータの女性には生理があって数日体調不良に悩まされるのに扱いはオメガよりよほどいい。
大体、抑制剤で抑えられる程度のもので一生を左右どころか誰かにすがらないと生きていけないこと自体がおかしいだろう。」
「じゃあ、なんで……。」
聞き返した自分に都竹さんは逡巡した後答えた。
「本当の意味での発情期があるのはアルファの方だからだ。」
オメガのそれと違って、かなり凶暴性の高いものなんだ。ぽつりぽつりと都竹さんは言う。
「それが、オメガと何の関係が……。」
「ベータだと相手が務まらないそうだ。
結局のところ、オメガの発情期はアルファのそれに耐えるためにある様なものだからな。」
まともな抑制剤なんてものは存在しないし、アルファは元々支配階級だ。だから、今のままの体制でいいと思っているアルファも多い。
それだけ言うと、都竹さんは俺の上からどいて、ベッドの淵に座った。
のそのそと碌に動かない体を起き上がらせて都竹さんを見る。
「……俺は、貴方の為の生贄に差し出されたってことですか?」
「有り体に言えばそうなるな。」
都竹さんに言われて、ようやく安藤の言った過保護だの意味が分かった。
都竹さんは知っていて、けれどその事実を今まで自分に言わなかったということだ。
「じゃあ、なんで今になって他のアルファの匂いをつけて来たなんて言うんですか?
とっとと抑制剤代わりに俺を使うか、それとも女のオメガを探すなりすればいいじゃないですか。」
最初から、都竹さんの好みに合っていないことは知っていた。
ならば、他に行けばいいのだ。
自分自身は今も全く分からないが、こうやって人の匂いをつけて来たことに怒る必要なんてないのだ。
「他の人間に反応しないんだ。」
「それは……、俺が運命の番だからですか?」
絞り出すように言った都竹さんの言葉はとても残酷に聞こえた。
「それの影響が全く無いとは思ってはいない。
だけど、そうじゃない。最初に話した時のお前の強さを見て、他では無理だと思った。」
じゃあ、なんで抱いてくれなかったんですか?とは言えなかった。
それはお互い様だ。
俺も最初都竹さんにまるで興味は無く、酷い嫌味のような事を言った。
それを俺の強さだと思ってくれた都竹さんに言うべき言葉では無かった。
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