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第三章 学校編

第十七話 妹よ、俺は今優しい人と会っています。

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「いい天気ですね」

「ああ、気持ちのいい天気だ。こんな日は仕事なんてほっぽり出して、肉でも焼きながらエールで一杯といきたいぜ」

「ハハハッ、ダメですよ、トロンの街を守る大切な仕事なのですから。エールは仕事が終わってからにしてください」

「ちぇっ、つまらねぇ野郎だな。ところで、ちゃんと冒険者にはなれたのか?」

「はい、おかげさまで。ですが、他にやりたいことができたので冒険者活動はしていません」

「どうりで見かけないと思った。もったいねぇな、あんたならS級冒険者だって夢じゃないだろうに。何だよ、他にやりたい事って?」

「先生です」

「先生!?学校のか?この街には学校なんて無いだろう」

「俺が作りました」

「作った!?学校を?どこに?」

「大通りから徒歩で三十分くらいの所です。九日後、教会と孤児院はそこに移転します」

「どういうことだ!」


 暖かい春の日差しを受けながら、トロンの街に来てから学校建設に至るまでの話を説明していく。冒険者組合での戦闘、イレイズ銀行に騙された教会の危機、限界が迫っている孤児院の現状と子供達の未来、頑なだったマザーループの意識改革と公爵家の支援、そして・・・

「昨夜、マザーループとシスターパトリが襲撃を受けました」

「なんだと、どこのどいつだ!」

「イレイズ銀行に依頼された、裏ギルドです」

「そんな・・・馬鹿な」

 信じられないのも無理はない。裏ギルドの連中はマザーループとシスターパトリがこの街にとって必要な人物だと知っている。ヘイダー達がマザーループとシスターパトリの襲撃を防ぐことはあっても手を出すことなど有り得ない。

「実行犯はバムと手下の計七名。イレイズ銀行の社員ジャンセンから直接依頼を受け、裏ギルドを通さずに及んだ犯行です」

「バム?そんなことより、マザーとシスターは無事なのか?」

 やはりバム達のことは知らないか・・・裏ギルドに入って日が浅いのだろう。ボスの影響を受けていればマザーループとシスターパトリの襲撃なんてする筈がない。

「安心してください。マザーループとシスターパトリには指一本触れさせず、襲撃犯は俺が全員捕らえました」

「一人で・・・あんたなら可能か」

 本当はコタローが半分受け持ってくれたけど。それにしても随分と俺の評価が高いな。

「わざわざそんな話をしに来たってことは・・・」

「ええ、元裏ギルドメンバーの今後も兼ねた、ボスへの報告です」

「そうか・・・どうしてわかった?」

 ボスは知っている。ヘイダー達が殺されても自分の名を出さないことを。そんなヘイダー達だからこそ言い続けたのだろう「死んだら許さねえ」と。命を懸けてまで自分を守る必要はないと言いたかったに違いない。

「簡単ですよ。俺がこの街で上手くスタートが切れなかったら行く場所はここしかありません。この街に来て最初に優しく声をかけてくれたあなたに相談しに来ます。門番のマイヤーさん」

 小さく笑みを浮かべるマイヤーさん。その表情が喜びなのか、諦めなのか、俺にはわからない。

「始めてあった時から只者じゃねえとは感じていたよ。あんたの走る速度は人間離れしていたからな。あの身体能力を持ちながら平然とマジックボックスを出したのを見て、こいつはやべぇと思ったぜ。えーっと、トキオさんだったか」

「トキオでいいですよ。俺のことはそう呼んでください」



 交代の時間となったマイヤーさんと休憩室に入る。不器用な手つきでマイヤーさんが出してくれたのは湯飲みだった。

「ほら、エールじゃなくて申し訳ねえが」

「番茶ですか!」

「別に珍しくはねぇだろ」

「ずっと探していたんですよ。今度どこに売っているか教えてください」

「ああ、わからないことがあれば聞きにこいって言っただろ」

 久しぶりの番茶を味わう。美味・・・くはない。だけど、懐かしい。

「この街は裏から犯罪を防ぐには大きくなり過ぎました。今回の件がそれを示しています。役目を終えた裏ギルドは俺が壊滅させました。すでに図書館の下に地下室はありません」

「そうか・・・ヘイダー達は?」

「今朝、全員冒険者組合に登録させました。ヘイダーとデュランが中心となってクランを立ち上げることになっています」

「大丈夫か?あいつらの中には読み書きや計算のできない奴も居る。騙されたりしないか?」

 構成員達の心配が先にくる。やはり優しい人だ。

「問題ありません。俺が教えます」

「あんたが?」

「俺は先生ですよ。生活に必要な読み書きや計算くらい教えられます」

「そうだったな、安心したよ。それじゃあ、行こうか」

 心配事が解消されマイヤーさんは席を立つ。いつかこんな日が来ると知っていたかのように。

「行くって、どこへ?」

「どこって、あんた俺を捕まえに来たのだろ」

「なんでマイヤーさんを捕まえなきゃならないのですか。マイヤーさん、何か悪いことをしたのですか?」

「何って、俺は裏ギルドのボスだぞ!」

「知っていますよ。裏ギルドという名の、陰から犯罪を未然に防いでいた自警団のリーダーだったのですよね」

「自警団って・・・マザーを襲撃した組織だぞ。そもそも、俺を捕まえるためじゃないなら、あんたは何をしに来たんだ?」

「ブロイ公爵から伝言を預かってきました」

「ブロイ公爵?」

「はい。ブロイ公爵も言っていましたよ。冒険者が一人悪さをしたからといって冒険者全員を罰したりはしない、それと同じだって」

「しかし・・・」

「いいから聞いてください」

「わかったよ。言ってみろ」

 ようやくマイヤーさんが腰を下ろす。門番の職に就くマイヤーさんからすれば領主は前世の社長みたいなもの。無視はできない。

「今まで陰ながらトロンの街を守ってくれたこと心より感謝する。裏ギルドはトロンの盾と名を変え今後は表からこの街を守ることとなった。相談役として彼等に協力してやってほしい。尚、引き続き門番としてトロンの玄関は任せる。とのことです」

「お咎め無しだと・・・それどころか感謝の言葉まで」

「当然じゃないですか。裏ギルドはトロンの治安維持に大きな貢献をしてきたのですから」

「マザーに手を出したんだぞ、許される筈がない!」

 無罪放免となって喜ぶどころか、マイヤーさんは怒りを露わにする。マザーループとシスターパトリの襲撃はマイヤーさんにとってそれほどの大罪なのだ。

「そのマザーループから手紙を預かっています」

 マジックボックスから出したマザーループの手紙をマイヤーさんは震えながら受け取った。おぼつかない手つきでゆっくりと封筒を開く。


『親愛なるマイヤー

 今でも思い出します。私がトロンで教会を開き最初に声をかけた孤児があなたでしたね。あの時のあなたは目に映る大人すべてが敵だ、そんな表情をしていました。未熟だった私はあなた達の下に通い食べ物を与えることしかできませんでした。あなた達の心を開くことができなかった。そんな私の言葉を始めて聞いてくれたのがあなたでした。孤児のリーダーだったあなたが私の言葉を受け入れてくれたことによって孤児院は生まれました。それは今なお続いています。
 あなたが門番として就職が決まり孤児院最初の卒業生となった日の感動は今も忘れません。あなたのおかげで子供達は読み書きや計算の重要性を知り、勉強に励むようになりました。あなたが可能性を示してくれたから、その後多くの子供達が社会に出て活躍できたのだと感謝しています。
 そんな優しいあなたが陰ながらこの街を守ってくれていたと聞き胸が熱くなりました。子供達が犯罪に巻き込まれないよう未然に防いでくれていたあなたを誇りに思います。
 今回の件で優しいあなたが罪の意識を持つのではないかと心配でなりません。もし、そうであるなら、私はあなたのすべてを許します。どうか、気に病まないでください。
 今度、孤児の為の学校が出来ることになりました。色々と問題はありましたが、あなたと私から始まった孤児院は子供達の明るい笑い声で溢れています。門番の仕事が忙しいとは思いますが時間があれば教会にも遊びに来てください。きっと慈悲の女神チセセラ様もたまには顔を出せと思っていますよ。

 風邪など召されませぬようご自愛ください。

 ループ』


「うぅぅ・・・マザー・・・すみません・・・ありがとうございます」

 肩を震わせ止めどなく流れる涙を拭こうともしないマイヤーさん。この街で誰よりも長くマザーループと関わり、最も影響を受けた人物がマイヤーさんだ。裏ギルドを組織し、陰ながらこの街を守ってきたのもマザーループの影響からだろう。今回の件で最も辛いのがマイヤーさんなのは想像に難くない。

 マザーループからの手紙を宝物のようにして大切にしまうマイヤーさんへ、一通の封筒を差し出す。

「これは?」

「招待状です。十二日後に学校の始業式が行われます。是非、参加してください」

「俺が?」

「当然じゃないですか。マイヤーさんは孤児院最初の卒業生なのですから。言わば長男です。年の離れた弟や妹がどんな所で学ぶのか見ておかないと」

「そうだな、必ず行く」

 その言葉を聞いて俺は席を立つ。そろそろ休憩時間も終わるだろうし。

「マジックアイテム屋の横の道を奥に行ったところだ」

「えっ、何がですか?」

「番茶が売っている店だよ」

「早速帰りに寄っていきます」

 お互い笑顔で休憩所を後にした。マイヤーさんのような門番が居てくれるのもこの街の財産だ。これもまた、マザーループの慈悲がもたらしたの。


 ♢ ♢ ♢


 教会に戻りマザーループ達にマイヤーさんの話をした後丸太小屋へ。九日後に控えた移転、十二日後の始業式までにやらなければならないことが沢山ある。

「トキオ先生―」

 と思ったのも束の間。ミル、カルナ、シオンの仲良し三人組に捕まった。

「トキオ先生、学校が完成したって本当」

「ああ、昨日完成したよ」

「「「やったー!」」」

 喜び合う三人。こういうのを見ると疲れも吹き飛ぶ。

「ねえ、だったら早く行こうよ。早く、早く」

 俺の服を引っ張りながらミルの駄々っ子モードが始まる。たまに見せる子供らしさも、また可愛い。

「ダメだよ、ミルちゃん。まだ食器やお布団も孤児院にあるから、行っても何もできないよ」

 フフフッ、またミルが年下に宥められている。天才は案外身の回りのことができないと聞いたことがあるが、ミルもその口か?

「えらいな、シオン」

 孤児院に来たばかりの頃は大人しかったシオンもだいぶ打ち解けたな。頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。

「エヘヘ。シスターが少しずつ引っ越しの荷物整理をしなさいって言っていたから。ミルちゃんも聞いたのに」

「楽しみ過ぎてちょっと忘れていただけだよー」

 言い訳するミルを見てカルナが不思議そうに言う。

「ミルって聞けば何でも教えてくれるのに、みんなが知っていることは忘れたりするよね」

「たまたまだよー。それに、学校が始まればいっぱい勉強してもっと沢山のことを覚えるもん」

 ミルなら本当に沢山のことを覚えるだろう。でも、勉強に偏り過ぎてもいけない。

「学校は勉強だけじゃないよ。みんなが遊べる広いグラウンドや武道場。動物を飼う小屋もあるし植物の好きな子が花を植えられる花壇もある。森も作ったから、鳥や虫もやって来ると思うよ」

「動物!わたし動物好き」

 シオンは動物に興味があるのか。

「わたしはお花を育てたい」

 カルナは花が好きか。カルナらしい。

「わたしは全部やりたい」

 いかにもミルらしい言動だ。

「他にも、実際に働いているところを見せてもらう社会見学。オスカー先生が絵の描き方や楽器の弾き方も教えてくれる。文化祭とかもできたらいいな」

「文化祭って何?」

 流石はミル。新しい単語は聞き逃さない。

「文化祭っていうのは、みんなが調べたことや実験したことを発表したり、作った工作を展示したりして学校外の人に見てもう場だよ。他にも学校の生徒が演劇をしたり食べ物のお店を開いたりして来てくれた人を楽しませるお祭りさ」

「なにそれ、超絶楽しそう。絶対やりたい。カルナとシオンもそう思うよね」

「「うん。超絶楽しそう」」

 最近孤児院内で「超絶」がはやり始めているなぁ・・・

「今、みんなの制服や教科書を準備しているから、もう少しだけ我慢してくれるかな」

「えぇぇぇー」

 ぶー垂れるミル。それに対してカルナとシオンは・・・

「わたしは我慢する。トキオ先生がわたし達の為に頑張ってくれているのを知っているもん」

「わたしも我慢する。ミルちゃん、トキオ先生を困らせちゃダメだよ」

「わ、わたしだって我慢できるよ。トキオ先生、我儘言ってごめんなさい・・・」

 あれま、ミルがしょげちゃったよ。最初に学校のことを話したのはミルだけだったから一番長い間我慢しているし、少しかわいそうだな。

「みんな、ありがとう。学校を楽しみにしてもらえて嬉しいよ」

 三人の頭を撫でると、ミルも元気を取り戻す。

「九日後には引っ越し、十二日後からは学校が始まる。引っ越しの日はいっぱい歩くから学校に着いたらバーベキューをするよ。頑張って歩いてきてね」

「バーベキューって何?」

 その質問を待っていたぞ、ミル!

「バーベキューっていうのは、外でお肉や野菜を焼いてみんなで食べる料理のことだよ。美味しいお肉と新鮮な野菜、ジュースも用意して待っているからね」

「それ、ノンちゃんが喜びそう」

「絶対ノンちゃんお肉しか食べないよ」

「大丈夫。わたしが取ってきてあげるって言って野菜大盛りのお皿を渡すから」

「ミル、そんなことしたらノンちゃん泣いちゃうよ」

 ノンちゃん人気者だなぁ・・・で、ノンちゃんって誰?

「ミル・・・ノンちゃんなんて子、居たか?」

「この前トキオ先生とベーゴマで勝負していたじゃん」

「ノーランのことか!」

 ノーランの奴、年下の子達にはノンちゃんって呼ばれているんだ。「勇者」の渾名がノンちゃんとか・・・なんかうける。

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