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第五章 残酷な世界
211 姉妹の優雅なティータイムに
しおりを挟む泣きながら縋りついてくるクリスティーナの頭をよしよしと撫でて宥めてあげていたら、どうかお詫びに……とお部屋で優雅なティータイムにご招待されて。
『大好き』 と言ってくれる可愛い妹のお願いに、基本的に親族とは仲良くするつもりなんて更々無いカレンだったが、今回はとても珍しくご招待を快く受けてクリスティーナの部屋にやってきていた。
クリスティーナらしい品の良い調度品に、沢山の本が詰め込まれた本棚、爽やかな香りのする部屋はとても居心地が良くてずっと居られる気がするほどカレンの好みと似ていた。
サラサラロングのプラチナブランドを揺らして、手際よくお茶の準備をするクリスティーナは本当に美しくて品が良く優雅で流石公爵令嬢だなと感慨深くて。
本当に自分と血の繋がりがあるのかと疑問が浮かぶ。
というか、本当にこの美女は同い年で自分の双子の妹なのかとクリスティーナの溢れでる大人っぽさにカレンは多少卑屈になるがそれはまあ仕方ない、カレンが童顔なだけだ。
「お姉様、お砂糖とミルクはいかがなさいますか?」
「んー、そのまんまでいいよー」
「はい、かしこまりました」
徹夜明けで眠気に襲われ始めたカレンは、あくびを噛み殺しながら椅子にだらけるように座り、茶を飲んで菓子をぱくぱくと口に放り込んだ。
身体は小さい癖に、無駄に態度の大きいカレンをクリスティーナがとても楽しそうに甲斐甲斐しくお茶を入れて菓子を皿に分けて世話をする。
二人の関係を知らぬ者がこの光景を見れば、どこからどう見てもカレンが妹にみえてくるが、こんなんでも姉である。
「ねえクリスティーナ、魔法って得意?」
「どうでしょうか? 最低限は学園で学びましたが……」
「え、アルスって魔法の学校あんの?」
「ええ、ございますよ。貴族子女達が通いますの、本当はその時に魔力の鑑定を行うのが……通例ですね」
「……魔力鑑定か。そういや魔力発現したけど鑑定してないな私、数値とか出るんだよね?」
「……はい、もしお姉様が魔力の鑑定をなされたいならば学園か神殿に行かれればできますよ?」
あの冷たい雨の日にガルシア公爵家の双子の運命を分けた魔力鑑定は、わざと周りが配慮してカレンに受けさせていなかったもの。
本当はこちらに来るときに魔力鑑定をしなければいけなかったが、魔力暴走の兆候がカレンに見られた事から魔力を有していると判断されてその場は先送りにされた。
そしてその後カレンが魔法を使用している所を騎士演習場で確認が取れた為に不要と判断され魔力鑑定が無くなっていた。
「そっか、じゃあ一度魔力鑑定受けてみよっかな?」
「では私が、手配を致しましょうか? 早ければ魔力鑑定は今日の夕刻か明日にでもすぐ受けられますよ?」
「じゃあお願いしようかな……頼める?」
「はい、かしこまりました」
魔力鑑定の手配をカレンはクリスティーナに頼みぐびりとお茶を飲みゆったりのんびり寛いでいると。
軽快にクリスティーナの部屋の扉が叩かれた。
「お休みの所申し訳御座いません、クリスティーナ様、少々よろしいでしょうか?」
その声にカレンは、あー不味いな……とは思ったものの今さら焦った所で仕方ないよなとどっしりと構えてお茶を飲む。
「はい、どうぞ? 開いておりますよ」
クリスティーナが鈴の音色のような可愛らしい上品なお声で返事して、面倒なヤツらがその扉を開けた。
やはり執行官と、エディだったかとカレンは横目に確認して、ひょいとマカロンを口に運びいれる。
「カレン様?! また貴女は勝手にひとりで行動して、ネックレスもその辺に置き去りにするし! 死にたいのですか!」
「ここに居やがったのか、お前……! 護衛も付けずひとりで行動するなとあれほど言っただろうが?! また襲われたら……どうするつもりだ!」
今日も騒がしいなーと、カレンが聞き流していたら。
エディに胸ぐらを掴まれて椅子から立たされたカレンは、なんだコイツと苛立って舌打ちして睨み付けたのだった。
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