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第三章 毒であり薬
135 違和感
しおりを挟む「ん、うまい」
「でしょでしょ! イクスの朝と言えばこのスープなんだよ、家によって具材は違うけどね基本となる味はコレなんだ、うちはお肉入ってる!」
「へえ、一回それも食べてみたいな」
「じゃあ今度作ってあげよう」
「……料理なんて出来ないだろ? そんなことしたら絶対怪我するから止めとけよ、レシピはカトリーナ様に聞くから、無茶すんな」
「いや普通に料理出来るけど、人をなんだと思ってるの? 庶民舐めんな」
エディの目は驚愕に見開かれて存外にそれは無理だろう? と如実に物語っている。
「まあ、それは置いといて、カレン? 全然食べてないけど体調でも悪いのか?」
「え、あー……今あまりお腹空いてなくて!」
「……ふーん?」
……前は驚かされる程に食べていたのに今の食の細さは異常なのに肌艶も良くて、やつれたり痩せたりといった風にも見えないというか何も変化がない。
昨夜はあんなに泣いていたのに目すら腫れていなくて、身体中に跡をつけたはずなのに朝起きると何一つ残っていなかった。
まるで何も無かったかのようで疑問が生まれ、何がおかしいかと聞かれたら答えられないが、何かがおかしいのだ。
「じゃあお腹もいっぱいになった事だしお買い物いこうか? あ、ついでに素材も買っちゃおう!」
楽しそうに、歩く姿は前と何も変わらなくてただの気のせいだと思いたいのに、何かが引っ掛かる。
「素材が買いたいだけな気がするんだけど?」
「そんな事ないって! 衣料品はこっちだよー、エディもうちょい楽な服着れば? こっちじゃ浮くよ?」
「そんな格好してる奴に言われたくないんだが、……またそれ着てるのか?」
「そんなって、錬金術師の服はこっちでは正装なの! っかコレ以外の着用は基本的に禁止されてるんだよ錬金術師は」
「え、なんで?」
「錬成事故から守る為! 本当に危ないからね、私は天才だからそんな間違い起こさないけど!」
自信満々にそう言いきるカレンは本当に最初出会った当時から一切変わらなくて市場で買い物をする姿は普通の女の子のようで。
黒曜石色の癖のある艶やかな髪は濡れた印象さえ受けて美しく、真っ赤なルビーの様な瞳は愛らしくて、その容姿は傾国の美姫といっても過言ではないこの場に不釣り合いな美貌の少女。
成人したはずなのにまだ幼さを残していて、成長が変化が時の流れが一切見受けられなかった。
それはまるで時が止まったままのようだった。
「カレン、そんなに急がなくても大丈夫だからゆっくり歩け転けるぞ?」
「え? 転けるわけないじゃん! っあ、」
とか言いながら、よく転ぶから言っているのになと頭はどんなに良くても馬鹿で可愛い子だなと苦笑して、転んだカレンを見にいけば。
足の出る短いズボンなんて履いてるから膝を擦りむいてしまっていて血が滴っていた。
「お前本当に、よそ見し過ぎなんだって。足元見なさい今は魔法使えないのに……大丈夫か?」
「あーこれくらい大丈夫大丈夫! 直ぐ治るし」
「いやでも、血が……っえ?」
「ん……?」
血が滴る程の傷が魔法もカレンのポーションも何も使うこと無くひとりでになんの働きかけもなく自然に治癒していく。
「カレン……、なんだこれ?」
「え? あ、……ほら治った! ははは、さすが私」
「何が……っほら治った! だよ?! これどう考えてもおかしいだろ?! お前……何やった?」
「……っえ? なにも? 普通だよ?」
明らかに何かを隠している。
「それ、なんだ?」
「……エディ、取り引きしたよね?」
「心配することもお前は許さないつもりか?」
「それは、まあ……悪いとは思うけどね、怒られたくないし、絶対怒るし。これについては言っても機密でも何でもないし問題ないけど、怒られたくないから言いたくない!」
「怒られるような事なんだな? それ」
「……まあ、うん、ルーカスには爆笑されたけど、エディとかママは怒ると私は予想している」
「あの錬金術師には言えて俺には言えないのか?」
「え、なに怒ってんの……? 怖いんだけど」
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