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第三章 毒であり薬
115 政略結婚
しおりを挟む国王からアフタヌーンティーはいかが? と、お呼ばれしてやって参りました王宮へ。
道中の馬車ではエディに喧嘩売られたけど気にしない、気にしたら負けだと思っている。
本日もリゼッタにお姫様みたいにされたが、こんなドレスもうイクスに帰れば着る機会はないしと思い、記念にと楽しむ事にした。
ただし、やはりこのヒールの高い靴はいかんせん慣れないし、むちゃくそ歩きにくい。
こうやってエスコートされるのも後、何回あるかと考えれば感慨深く、王宮に来るのももしかしたらこれが最後かな? と思えば酷い思い出ばかりだが、馬車の車窓から見える王宮への道程も楽しむ事が出来た。
嫌だ嫌だと延々と駄々をこねくりまわしていても何も解決しない事は一応成人したので理解しているし、諦めて進むしかない。
空元気は得意中の得意だし。
どうせ私に逃げ場などないのだから。
そして、本日案内されたのは前回とは違いガラス張りの温室だった。
「突然の誘いに応じて頂きありがとう?」
「いえいえ、お誘い頂きましてありがとう?」
本日も輝く金髪が眩しいアルス国の国王はにこやかな笑顔で貴公子のように温室で私を迎える、どこにいてもこの人キラキラしてんな?
そして例のごとく。
「ああ、今日もすまないが皆は席を外してくれないか? 英雄様と二人きりで話がしたくてね?」
アルめ、素で喋れないからと人をだしにして、人払いをしようとする、まあ気持ちはわかるから止めないけど。
「いえ、カレン様と二人きりはそう何回も陛下でもご遠慮して頂きたく存じます」
と、珍しくオスカーとエディの二人が国王の言葉に従わず退かない、どうした? お前達はこの国の騎士だろう? それ大丈夫?
「私が、英雄様に何かするとでも? 臣下に信用されないなんて悲しいな?」
「カレン様は年頃の成人されました淑女でございます、あまり陛下と親密にされておりますと、よからぬ噂や醜聞が付きまといます」
「過保護め、別によからぬ噂なんて今さらだしどうでもいいよ。どうせもうすぐこの国を離れるし? ほれオスカーとエディはちょっと席外して? アルと二人で私も話がしたいし? 邪魔!」
「……そういう事だか、心配せず下がりなさい、これはお願いではなく命令だよ?」
私とアルの二人の説得……命令により過保護達は退かざるおえなくなり、すごすごと温室から出て行くが、ガラス張りの温室だから外から様子は見えるのだし我慢しろ。
「過保護めんど……、この国の人って過保護だよね? イクスじゃ路上で男友達と飲んだくれて寝てても放置されたけどな?」
「路上で寝るのは止めたほうがいいと思うし、そんな君を放置する国もどうかと思うけど、確かにあの二人は君に対して過保護だね? 一応私は国王なのに全然言うこと聞かないし? 酷いよね? 辛いんだけど」
「それにさ、アルには、クリスティーナがいるじゃん? あんな美人で大好きな彼女いて、私に手を出す訳ないのにね?」
「え? 大好き? 私は特にクリスティーナの事は何とも思ってないけど? クリスティーナも私の事を政略結婚の相手と思っているし」
「……え?」
「あー……そっか。イクスには身分制度がないから」
「うん、そんな意味わかんない事はしない」
「私とクリスティーナの間には愛とかはなくて同士かな? 二人で国を支える為の。私達の婚姻は国が決めたものだよ? そして、もしかしたら君が僕の妃になってくれていたかもしれないね? あんな事がなければ」
「そういえばそんな事言ってたね? でもクリスティーナのがどう考えても美人だからよかったじゃん!」
「……私は君のほうが良かったけどね?」
「え?」
「カレン、本当は私も君を隣国になど帰したくないんだ。それに君にこんな事を言うのは神の木の枝として、間違えていることはわかっている、でも……私が好きなのは君だよ」
「アル? どうしたの、急に変だよ?」
「あの日夜会で君に一目惚れしたんだ実は! だから……君さえ良ければ私の妃になってずっとここに残ってくれないか? 全て知る私の元ならば君の苦しみを分かち合う事ができるかもしれない」
「私は……!」
「直ぐに返事しなくてもいいから、少し考えてみてはくれないか? 私は本気だよ?」
予想外の相手の突然の告白に流石のカレンも動揺して心が乱れる、そんな不自然態度のカレンの様子に護衛騎士二人はリゼッタから伝えられた疑念が深まってしまうのだった。
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