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第三章 毒であり薬

112 知らない

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 あれからエディが口を全く聞いてくれないが、顔を会わすたびに帰るなと説き伏せてくるよりはマシかと思い放置することにした。

 そして翌日、狩猟大会で初めての運命の出会いを果たした私の天使リティシアが私のお見舞いに来てくれる事になった。

 狩猟大会では色々とあってリティシアとあまりお話が出来なくて残念だったからとても嬉しい!

 リティシアは、エディの末の妹で、エディと同じエメラルドグリーンの瞳がとっても可愛らしい女の子でまだ八歳らしく私が錬金術師になった年齢と同じだった。

 晴れ渡る青い空がリティシアの我が家への訪問をお祝いしているようで私の気分は上々だ!

 そして麗らかな午後のティータイムにリティシアは、エディの両親に連れられて我が家にやってきた。

「カレンお姉様! 御快癒おめでとうございます、お目にかかるこの日を心待ちにしておりました!」

 と、可愛い事を言ってくれる、やはり天使か? そして久しぶりにエディの両親に会った。

「あらあら! カレンちゃん! お体はもう大丈夫? 大変だったのでしょう? でも流石錬金術師様ね! 自分の薬でどうにかしてしまうなんて! そんなにうちの息子はお嫌?」

「カレンさん全快おめでとう! 報せを聞いたときは驚いたがご無事で何よりだ」

「あはは! 私は天才なので! 大丈夫! 息子さんはどうでもいいので! リティシアちゃんをお嫁さんにください! 大切にします!」

「カレンお姉様! そんな……リティ……嬉しいです……!」

 そしてリティシアとイチャイチャしようとしたら、エディに邪魔された、解せぬ。

「カレン、お前、どうでもいいって……!」 

「なに、男の嫉妬は醜いよ? 私とリティシアの愛を邪魔するなんて、エディ何様? 私はこんなにもリティシアを愛しているというのに?」 

「ってめ……!」

「エディさん? その女性に向けるとは思えない言葉遣いはなんですか!」

 と、エディはオースティン公爵夫人に叱責されてるので、ほっといてリティシアを私のお膝に招き抱っこさせて貰う。

「んー! リティシア可愛い! 私ね、こんな可愛い妹欲しかったんだよ? イクスにはお姉ちゃんとかはいるけどさ、妹はいなくてね?」

「カレンお姉様、ではリティが、カレンお姉様の妹になります! お姉様大好き!」

 と、天使が言ってくれるんだよ?

「こんな可愛い妹が出来て、お姉ちゃんは幸せ者だよ? リティシアは十歳だっけ?」

「はい、カレンお姉様は確か八歳で錬金術師様になられたんですよね?」

「うん、そうだよ? 八歳から私は錬金術師としてずっと働いてるよ?」

「すごいです! カレンお姉様!」

 と、リティシアに褒めて貰い天に舞い上るような気持ちになっていたらまた邪魔者が。

「いい加減に妹を離せ? いつまでも膝に乗せてる気だお前は」

「エディ? お言葉遣いがなっていなくてよ? また怒られちゃうぞ? ……リティシアは私のお膝の上は嫌?」

「カレンお姉様のお膝の上はリティは大好きです! それにすごくいい匂いがして、お胸がふわふわで気持ちいいです!」

「あはは! リティシア可愛いー!」

「……でも残念ねぇ、黒髪も可愛いけど、やっぱりカレンちゃんと言えばハニーブロンド! 赤ちゃんの時のカレンちゃんのハニーブロンドを見て可愛い! って思ったものよ?」

「え……? 赤ちゃん……? おば様、私と以前に会ったことあるの?」

「ええ、私だけじゃなくて、赤ちゃんの頃のカレンちゃんにはエディもお会いしているのよ? ……王宮で開かれた鑑定式で」

 鑑定式、私が国外追放される切っ掛けとなった両親からの贈り物、それさえなければ私の運命は変わっていたのかな?

「え? そんなこと覚えてな……?」

「貴方六歳だったものね? 覚えてない? でも貴方カレンちゃんの鑑定前にカレンちゃん抱っこさせてもらってたわよ?」

「え? あれ? そんなことあったか?」

「それでねカレンちゃんが、エディ貴方に懐いちゃって大変だったのよ? 鑑定しようと引き離すとカレンちゃん怒って泣いちゃってね? クリスティーナちゃんが先に鑑定されてたわ」

「え? 私は知らないよ」

「ふふ、それは当たり前よ! 赤ちゃんだったもの! すっごく可愛いかったのよ? ふわふわのハニーブロンドの髪をね、お花のついた白いリボンで結われて、まるで天使みたいだっなわ!」 

「ほう? 私は幼少期から可愛いかったのか!」

 私の国外追放の切っ掛けとなった鑑定式にエディが来ていて私を抱っこしたらしく、そして私はエディに懐いたと?! 

 さぞ幼いエディは可愛らしく赤ちゃんの私のお眼鏡に叶ったことであろう、そっか……! イクスがエディに会う初めてじゃなかったんだ!

 まさか赤ちゃんの頃に会っていたなんて、ちょっとだけ嬉しくて、でも覚えてないのがちょっとだけ寂しい、くすぐったい気分。

 嫌な過去が、少しだけエディのおかげで嫌じゃなくなった気がした。

「そんな事もあったな、鑑定式には国中から貴族達が集まって、オリヴィアも一緒にカレンさんと、クリスティーナ様を抱っこして可愛がっていたな……」

「オリヴィア? 誰それ?」

「あ、オリヴィアはねうちの長女よ! 七年前にカトレアのせいで亡くなってしまったけれど……、エディと仲のいい姉弟でね? すごく美人だったのよ? ふふっ」

「え? ……カトレアで?」
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