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第ニ章 英雄の少女
99 成人
しおりを挟む本日わたくし天才錬金術師のカレン・ブラックバーンは、めでたくも成人を迎えて十八歳になり立派な大人の女とになりました!
大人の女の色気を醸し出していきたいね!
肉体の成長も老化も全部止まったけどな!
そして立派な大人になったカレンは現在、過保護な護衛達の目を盗み、最近私の護衛に勝手に復帰してきた悪い大人と屋敷からこっそり抜け出した。
「ふ、ちょろい! 外の世界が私を呼んでいる!」
「おま……うるさい、ちょっとは静かにしろ? 遊びに行きたいんだろ? オスカーに見つかったらほんと……」
そして屋敷からすこし離れた所に馬車をエディが手配していたらしく、それに乗って街に繰り出した。
「でも、エディが許可してくれるなんて珍しい! 天変地異の前触れかな?!」
「……もうお前も大人だしな? それにあれだけ強くなってたら……多少は大丈夫だろ? なんなのお前、騎士にでもなるつもりか?」
「え、なるわけないじゃん? そんな儲からない仕事なんて! なんかやったら出来た! やはり私は天才らしい。褒め称えよ?」
そんないつも交わしていたエディとのお喋りに、カレンは嬉しくなる。
もう二度とこんな風に話してくれないと思っていた、それでもいいと思って手放したのに戻ってきてくれて口には出さないが嬉しくて。
……でもこんな幸せは長くは続かないから、カレンは今だけは少しだけ楽しく笑っていたいと思った。
王都の街はもう夕暮れ時で、本当は昼から抜け出して遊びまわりたかったけど、リゼッタ達使用人の皆が私の為に小さな誕生日パーティーを開いてくれたから、それは祝われないといけないだろう? としっかり祝って貰っていた為だ。
そしてカレンは現在、見慣れないエディの私服姿に胸がドキドキと高鳴りながら二人並んで街を歩く。
白のボタンダウンシャツに、黒のセーター、黒のゆったりしたチェスターコートに黒のパンツ、黒の編み上げショートブーツに濃灰色の大きめマフラー。
いつも執事服とか騎士服とかスーツとかキッチリと優雅に着こなしてるのに、こんなゆったりした格好もするのかと驚いていた。
こうやってエディとアルスの街を歩くのはどれくらいぶりかなと、懐かしく思い出す。
「で? どこかいきたい所あるのか?」
「エール! 肉っ! って……言いたい所だけどトーマスの料理でお腹いっぱいになっちゃったんだよね?」
「……お前そんな食ってないだろ? 最近あんま食わないな? 体調悪いのか? それともダイエット……いらねぇか」
「……残念ながら成長期終了してそんなにお腹空かないんだよね? あ、そうだ! ねぇ、エディ! あの城壁のぼってみたい!」
「あー……まだ間に合うか?」
アルス王都の城壁。
初めてここに、この国に来た時にエディと来たときちょっぴりのぼってみたいなって、思ってた場所だった。
エディに手を引かれて城壁へ向かう、剣ダコのある大きな手に包み込まれるように手を握られて胸が高鳴るのがわかった。
そして騎士団長の顔パスで城壁に登る許可が降りた、一応防衛の要とかで一般人は城壁には侵入したり登ったりできないと聞かされた。
「足元、気をつけろ? ほら、ちゃんと手握っとけ?」
「私はドジっ子ではないし運動神経は抜群なのでこのくらい余裕です、馬鹿にすんな?」
「なぜ、お前はいちいち可愛げがないのか? 女の子ならもうちょっと……さ? あるだろう?」
「そんなの私に求められても困るんだけど?」
そんなエディとの会話をしていたらあっという間に城壁の上で、そこには沈みゆく茜色の綺麗な夕陽が。
「めっちゃいい眺め! ここに屋敷建てたかった! やっぱり国境門の近くに家建ててスローライフが自給自足がしたかった!」
「え……、あれ本気だったのか?」
「そんなの当たり前じゃん? 都会っ子のカレンちゃんは田舎暮らしに憧れている!」
「あー、イクス栄えてるもんな」
「でしょ? それは私のおかげでもあるんだよ? でも……もうアルスともお別れだと思うと、ちょっと寂しいな!」
「……は? お別れ?」
「うん! ……成人したからね? もう魔力封印すれば私はイクスに戻れるからね。……その許可がこの間やっととれたんだよ?」
「なっ?! なに馬鹿な事を……?! 魔力封印なんてしたらお前また暴走するぞ? 死にたいのか!」
「……それはもうね、大丈夫だよ? 魔力封印具の改良が完了して魔力を吸収し魔石として自動排出という素敵なものを魔法具士専門の錬金術師が作ってくれたらしいんだよ? だから……私は、……私の国に帰る!」
「……お前それなんで、一言も言わなかった?」
「え? ……そんなの言おうにもエディはもう私の護衛じゃなくなってて、いなかったし? 申請したのかなり前だよ?」
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