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第ニ章 英雄の少女
78 反省
しおりを挟むあの日からイーサンとエルザはなぜか数日も治療院送りとなり、嘔吐と口内の不快感と異臭と戦ったらしい。
まああのポーションが不味いのは?
わざわざ私がそういう効能になるように甘く美味しいポーションを徹底的に改良したので臭いのも不味いのも当たり前で。
それになるべく不快感が長引くように、わざわざ改良して作ったから。
でもポーションの効能に何ら変わりはなく、治療院に行くなんてなんて不甲斐ない騎士達である。
そして。
今回騎士として不適格な行動の責任として。
騎士団でそれはもうたっぷりと懲罰を受けさせられ、騎士団長達が本気で叱責し。
やっとの事で私の護衛に復帰した。
そしてこの二人の私の護衛復帰に関しては、色々騎士団でも揉めにもめたらしい。
私が行った事などへの逆怨み等の心配から。
私の安全を期して別の騎士を新しくすぐにでも手配すると、オスカーにそれはもう丁重に何度も謝罪され提案されたけれど。
二人がどうしても私の護衛がしたいと、身をもって謝罪がしたいと願い出たので許可してあげた。
護衛に復帰してからの二人は、それはもう気持ち悪いくらいに真面目に私の護衛をしてくれる。
だから私のただでさえなかった自由が、更になくなった……!
頼むからほっといてくれ!
そして二人の態度も以前とはまるで違って。
「カレン様は本日も古代語の読書なんて、さすが錬金術師様でございますね! こうやって日々の努力の末に英雄に救国の女神になられたのですね! 英雄様にお仕えできるなんてエルザは幸せ者でござます!」
と大変気色悪い事を平気で言ったりするし。
「貴賤に関係なく平民にまで優しくお話かけられるなんて。まるで聖母のような慈しみ深い方だ……!」
私が厨房でトーマスと談笑していたらイーサンが頬を赤らめながらそんなこと言うんだ。
ちょっと精神的な攻撃を、やり過ぎたかなと今猛烈に反省している。
正直邪魔にならなければいいと思ってたんだけど、これはこれで大変居心地が悪い。
崇拝してくる狂信者は、執行官達だけで十分すぎるのだ。
でもこれ、私にはどうしようもないので。
ちょっと二人が飽きるまで置いておいて。
最近のゴタゴタで、溜まりに溜まった仕事を片付ける事にした。
錬金術師の仕事なんて、ほぼ材料の下準備で。
錬成なんて最後の仕上げでしかない。
なので久しぶりに錬金術の仕事着に着替えたら、イーサンが顔を赤らめながら。
「カレン様! なんて格好をしていらっしゃるのですか! 淑女がそんな……はしたない! いけません、おみ足を出すなどと!」
と、止めてきたから。
昔々エディにも話した事をイーサンにもカレンは言ってやるが。
「だからといって! なりません! そんな破廉恥な! 私が貴女に欲情したら……どうするおつもりですか……!」
と、切なげに顔を赤らめながら訴えてきた。
ヤメロいらんフラグ立てんな……!
これだから若い男は面倒くさい。
「これで欲情するなんて気持ち悪い事を私の護衛がするわけがないでしょう? それに主人に邪な感情を、向ける騎士など私には必要ないので即刻クビですが……イーサン……貴方まさか!」
「っいいえ! ま……まさか! 私はカレン様の忠実な護衛の騎士でございます!」
「あ、そう……? なら、よかった」
フラグは叩き折るに限る!
ま、そんなことばかりやってるから今までカレンに彼氏が出来なかったのだが。
「あれ……? そういえば今日オスカーは?」
「オスカーは、城での定例会議の為、夜からこちらへ参ります」
「ふーん、そうなんだ? じゃあ私もお仕事の続きしよっかな!」
なんだかんだいって。
二人の護衛達とは話せば気があって、仲良くなったカレンは終始ご機嫌だった。
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