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第ニ章 英雄の少女

73 女傑の教育の成果

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 大振りの訓練用に刃を潰した剣をブンっと一振してカレンが元気よく発する。

「さぁて! いっちょやりますかー!」

 やる気満々のカレンに騎士二人は本当にこれは不味いと遠回しに決闘なんて止めると言って欲しくてカレンに伝えるが。

「今、ごめんなさいしたら許してやるぞ?」

「そうね、一応貴女護衛対象だし? 許してあげてもいいのよ?どうする?」


 それに対してカレンは。

「今さら、ごめんなさいしても許してなんてやらないよ? どっちが上かその身体に精神に叩き込んであげるからね…? 犬にはね、上下関係キッチリ教えてあげなければいけないと思うんだよね。ママ直伝の教育法披露してあげようね?」

 と、不吉な事を暗示して。

 それをすぐに理解できたのは、女傑カトリーナがカレンの養母だと知ることのできる上層部の団長達だけで、カトリーナがどれだけ恐ろしい女だったか身をもって知っているのも、騎士団団長達や年配の騎士だけだったことが、この二人の悲劇の幕開けである。

 17歳にしては幼いその容貌は大変愛らしく、艶やかなハニーブロンドは手触りがとてもよさそうで、サファイアのような瞳はくりりとしていて可愛らしく、さくらんぼのような唇は甘そうで、白く透明感のある肌は真珠の如く輝き、そして小柄な体躯は庇護欲を誘い、その服を着ていてもわかるほどに自己主張する豊かな胸元は劣情をいだかせる。

 元々愛らしかった容姿はメイドによりさらに美しく磨きあげられて一般的にカレンは美少女と呼ばれるだろう。

 喋らず動かずにっこりと笑っていれば。

 だがその愛らしさの全てを台無しにするその粗野で大胆不敵で尊大な態度は、元々のカレンの性格だけで作られたものでは決してない。

 その人格にある意味形成したのは、養母で元女辺境伯の女傑と呼ばれた黒の騎士団の元団長のカトリーナのせいでもある。

 幼き頃より、カトリーナ独自の教育法でカレンは血のにじむような日々を送らされ錬金術師として家をでるまで毎日あの女傑に教育を施され、あの女傑にカレンは素晴らしいと、あのヤバい女に絶賛されるまでになり、そしてそろそろ私はカレンに負けそうね? と、言わしめた少女である。


 騎士団の団長達は知っている。

 騎士ですら裸足で逃げ出す女傑の教育とは、カトリーナの教育とは、ほぼ拷問でありカレンが言うその身体に精神に叩き込むとは、二人の騎士達を衆人環視の元で肉体的精神的にも追い込むような拷問を今から行うという処刑宣告であった。

 それを知らない二人の騎士達は今からカレンにより行われるだろう拷問など全く知らずそこにいた。

 
 そしてこの二人の悲劇はカレンよって幕が上がる

「さて、二人まとめて相手にして可愛がってあげようね? 大丈夫今日は無礼講だよ? 特権は発動しないようにしてるから怖がらないで? ほらほら、お・い・で? ワンちゃん達!!」

「その特権発動しないようにした自分を恨みやがれ! こんの生意気なクソガキ!!」

 そういってやけくそになったイーサンが飛びかかる。

「人をどこまで小馬鹿にすれば気が済むのよ貴女は! わからせてやるわ!」

 エルザもやけくそになり、カレンに刃の潰された剣を振りかざす。

 それをカレンは、ニタリと笑い軽い剣さばきと足取りで、足でエルザの剣を蹴りあげ片手で持った自分の大振りな剣でイーサンの剣を受け止める。

 まさか二人同時にこうも簡単に受け止められるとは二人は思っていなかった。

 そしてそこからカレンは反撃に転じる。

 二人の剣を振り払い、体制を、崩したエルザを剣でぶん殴り、勢いよく吹っ飛ばす。

 そしてイーサンには、回転を加えた蹴りを顔面に叩き込み、剣で殴り飛ばした。

 そして二人はあっけなく一瞬にしてカレンに破れた。

 普通ならこれで勝敗が決まるかもしれないが……。

 これで終わるはずなんてなかった。
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