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第ニ章 英雄の少女
68 秘密のお散歩
しおりを挟むカレンは一人で外出という、国外追放される前ならば当たり前に出来た事を出来た喜びで足取りも軽やかだ。
テクテクとカレンは目的地に向けて機嫌よく歩を進め、姿を隠せたという事を良いことにカレンは大胆にも警備の騎士がいる門をするりと通り抜ける。
そして少し迷いながらも目的の場所に到着した。
そこは王城の中にある騎士達の訓練場だ。
だけど今は訓練の時間ではないらしく、目的の人物を発見できなくて。
カレンは柱に寄りかかり、ズルズルと座り込んだ。
あの時、エディが必死になって消火しようとしてくれていたのをカレンは見ていた。
真っ黒な騎士服がとても良く似合っていた。
でもあの時はそれどころじゃなくて、ゆっくり観賞する事が出来なくて。
悔やまれたエディの騎士服姿。
折角それを見物に来たのに本人がいないなんて、カレンは肩を落とす。
だけどこの無駄に広い王城でエディを探し出せる自信はないし、疲れそうだからやりたくない。
言葉は交わせなくても、せめて顔だけでも一目見て帰りたいなとカレンは思っていた。
けどよく考えたら、それストーカーじゃないかな?
「そりゃ私、モテないわ……帰ろう」
自分が今やっている行動が、気持ち悪いなと感じたカレンは。
ゆっくりと立ち上がり、トボトボと訓練場を後にしようとした。
だがその時。
訓練場の入り口から。
他の騎士達と数人と談笑しながら入ってきた、会いたかった人物を見つけて。
胸が酷く締め付けられた。
会いたくて、会いたくて仕方なかった。
だからカレンはその姿を目で追った。
どれくらいの時間そこで、その姿を見つめ目に焼きつけていたのかわからない。
ただ姿を一目見られるだけで、それだけでいいとカレンは思っていた。
なのに、人間とはなんて欲深い生き物なのか。
それだけでは足りないと、心が泣き叫ぶ。
でもそれは決して許されないとカレンは自分に言い聞かせて、ゆっくりとその場を立ち去ろうとた。
その時。
エディの声が聞こえてきた。
騎士同士ではどんな風に話すのだろうと、カレンは少し興味をそそられて話を聞いてみた。
だけど、話の内容なんて聞かなければ良かった。
だって内容がほぼえっちなお話で。
男同士の会話ってこんなものなの!?
ってか、エディって胸大きい子好きなんだね?
もしかして私の胸が目当てだったのか!?
それにすごーく楽しそうね?
私がひとりうじうじしているというのに……?
なんだろう?
聞いちゃいけないことを聞いてしまったような気がして、流石にこれ以上聞いたら色々といけないなと思いその場を離れた。
訓練してる姿はかっこよかった、でも騎士ってそんな話しながら訓練するんだね!?
でもちゃんと騎士団に戻れてるみたいで良かった。
そして来た道をのんびりと帰り、カレンは何事もなく研究室に無事帰還した。
そして明日には新しい護衛がやって来るらしい。
けど何も期待はしていない。
「オスカーのように、命令にさえ従ってくれれば私はそれでいい」
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