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第一章 二度目の国外追放
46 遊び
しおりを挟む来て欲しいなんて一言も言っていないのに、人の事を幼少期ボロ雑巾のように鍛え上げて頂いた育ての親であるママが突如として勝手に我が屋敷にやって来て。
気軽に思いつき何とも言えない距離感と雰囲気を保っている昨日シリアス展開をしてしまった私とエディを捕まえてなぜか、剣の手合わせさせようとする、本当に空気の読めない育ての親。
その思いつきにより私は、薄曇りの強風吹きすさぶ、我が屋敷の芝生敷きのお庭にて、数時間前に色々あってしまった濃いブラウンの髪にエメラルドグリーンの瞳に、すらりとした体躯を持つ微笑まれたら落ちない女は居なさそうなイケメンと対峙する。
本日の私は大変に精神的ダメージを受けている為にその微笑みが凶器であるとだけ言っておきたい。
いやほんとにね? 昨日あんなに色々ありすぎたのに、何故に庭で、エディと手合わせせねばならないのか。
やめろよ、私の心は現在重傷だぞ?思春期は傷つきやすいお年頃なんだぞ? もうなにしにきたんだよ、タイミングが最強に悪すぎる!
……さて、本日の私の装いは白のシャツに黒いロングパンツ、編み上げのショートブーツ。
なんて楽な格好なんだろうか? ずっとこの服で過ごしたいな? ほんとに服は素敵なんだけどね? この状況は頂けないし、娘で遊ぶのも大概にしろよ?
そしてなぜ使用人達まで見物にきてんの? 暇なの? あ、仕事終わらしてきたの? 早いね!
そして手渡された練習用の刃が潰された剣。
エディにレイピアがいいか聞かれたけど、なんでもある程度扱えるようにママに叩き込まれてるからこれで問題ない。
久しぶりに握る剣は少し重いけど、エディの鍛練用らしいので仕方ない。
「あの、カトリーナ様、本気ですか? いくらなんでも護衛対象に剣を向けるなど出来ません!」
「ん? じゃあ、カレンちゃんママとやる? 久しぶりにボコボコにしてあげようか?」
「……エディのほうがマシです。エディ、私が打ち込むから適当に受け流して。ママと手合わせなんて絶対したくない、ポーションの在庫今ないから」
「カレンちゃん、オースティンの坊っちゃん、本気でやらないと、二人とも可愛がってあげちゃうからね」
「くそばばぁ……!」
「んー? カレンちゃん何か今言った?」
「……なんでもございません、お母様」
何を言ってもこの育ての親は聞く耳など持ち合わせていないのは、経験上わかりきっている為、さっさと手合わせして満足させる事にする。
英雄とか言われても、特権とか有っても何故かこの人には逆らえないんだよね、きっと人知を越えた何かなんだと思う、うちのママって。
あまり向き合いたくなんてないけれど、エディに向き合って、すぅと、一つ息をはく。
「じゃあ、エディ! いくよ!」
「え! ほんとやるのかよ?! 剣なんて振り回すな! 危ないから!」
何を心配してるんだ? ……こいつ。
私は、結構強いし、喧嘩慣れしてるんだぞ?
元ガキ大将カレンちゃんを舐めるなよ?
それに今日は歩きにくい靴じゃないから余裕!
エディに向かって全速力で走り、一気に間合いを積める、そして、下段から一気に、上方に切り上げる。
シュン……
「……っな?!」
おお、さすが騎士、避けるのが早い!
これなら本気出して遊んでもいけそう!
「エディ! 積年の恨み!」
先ほど切り上げた切っ先を一気に振り下ろす。
ガギン…
「なっ! おもっ!? なにが積年の恨みだ馬鹿!」
すごい! 簡単に受け流された! やば、楽しい!
全然敵わないのがすごく楽しい!
「ふん! この、セクハラ野郎!」
足を使いエディの、剣を蹴る。
礼儀なんて知ったことか、私は騎士ではないし?
「なっ……おま! なんつー事を! くそっ!」
そして私は身体を軽く回転させ、回転力を使いエディの剣を一気に弾いた。
ガッ!!
「は?」
「よし、勝った! ふ、他愛もない」
「な、おま、なんで?」
エディがびっくりしている!
やってやったぜ! 油断してるヤツが悪いのだ。
「ママ、勝ったよー! もういい?」
「……カレンちゃん、ちょっと軸がぶれてるわよ? 鍛練してないでしょ!」
「そんなんするわけないじゃん? わたしは錬金術師だよ?」
「あ、そうだ、カレンちゃん!」
「ん? なに?」
「セクハラ野郎ってどうゆうことか、ママすっごく知りたいな?」
「あ、やべ」
エディ、ごめんね?
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