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第一章 二度目の国外追放
36 無償のモノ
しおりを挟む「さて、本題の材料調達に出発!」
ただドレスを作りに行っただけなのに、ドレスを作る事もできずに、私は精神的に疲弊し、うちのエディさんが被弾しただけ、という苦行を乗り越えてやってきましたのは!
なんかのでっかいお店。
「え、市場がいいんだけど?」
「少ない量でたまになら市場でいいけど、貴女大量に継続的にでしょ? しかも品質も最高品質。ということは商会と取り引きして屋敷まで届けてもらうほうが効率的よ」
「そーだけど、市場でお買い物するっていう楽しみが……!」
「貴女を街に出すのってどれだけ大変かわかる? 隠れてるけど、今も数十人の騎士達が貴女を護衛中よ?」
「えーまじ? なんでそんな事を」
「当たり前でしょ、貴女の髪の毛一筋すら傷が付いたら大問題なんだから」
「ふーん……大変だねぇ?」
こいつ他人事のように言いやがる、という目で見下げてくるんだけど、このオネェ執事。
失礼のないようにとか私を紹介する時とか言う癖に自分が一番私に失礼してるってことわかってないんかな?
「いやそれにしても、デカイ店じゃんか、儲けてんな」
「しょーもない事言ってないで入るわよ。はい、お手をどーぞ、お嬢様?」
「……ええ、よろしくてよ? エスコートよろしくお願いいたしますわ?」
にっこり。
……エディにジト目で見られた解せぬ。
ちゃんとしろって、言うから優雅に気品高そうにしてやるとコレだもんな。
なんなんコイツ、頑張った私を褒め称えてもいいんだよ?
そして、店に入ろうとすると中から恰幅のいいお上品そうな紳士が出てきて。
「これは、お待ちしておりました。私はここの商会を束ねさせて頂いておりますゴードンと申します。どうぞ中へ、ささ、お入り下さい。薬神カレン・ブラックバーン様」
…次は、薬神か。
いや、私もほんと大層な二つ名が多いなと、後は何が出てくんだろ? と考えつつエディにエスコートされながら店内へ入る。
今は履かされている靴は前回よりはマシだが一人で歩くとふらつくんだよな。
なにこの実用性皆無の見た目だけって。
私は実用性のみを、重視する女だぞ?
料理も見た目より味だもん。
それにしても、マダムシトロンの店でも思ったけど、アルスの店ってなんか、重厚感すごくね?
イクスって高級店でももっと軽いっていうかスタイリッシュというか。
従業員までなんかドレス来てるし。
エディが私にそのワンピースは質素って言ってた理由理解したわ。
それで仕事できんのかよって疑問わき出てくるんだけど。
また応接間というか貴賓室に通された。
そしてさらに重厚感が!
あーあ、普通に買い物したいなぁ?
そして欲しいもん言えばいいのか。
とりあえず今月納品予定だった薬の材料と研究用に使いたいやつと、手に入るなら欲しいやつ。
適当に注文すると。
「はい、かしこまりました。ですがこれだけの注文ですとかなり高額になりますが……」
「んー? いくらー?」
「ざっと計算致しまして金貨三千五百枚はかかるかと……」
「なっ?! カレン?貴族の屋敷買えるわよ?!」
「あーそんなもんか。じゃあそれで。でも最高品質じゃないとダメだよ?」
「「え?」」
「ちょ、そんなもんって?!カレン?」
「錬金術の材料なんてそんなもんだよ? それに納品用の薬がね、注文した材料の大半使うんだけど、一瓶金貨一千五百枚で売れて、その注文した材料で百瓶は作れるから。二、三瓶売れれば元取れちゃうんだよ?」
「「は?」」
さっきから商会長とエディが声合わせててうける。
「なにそれ、ぼったくりじゃないの!」
「だから、錬金術師ってイクスじゃ憧れの職業なんだよ? ああ、そうだあの特効薬もねいい収入なってるんだよ?」
「え、アレ国から無償で国民に……」
「あれ国の借金だよ? 今も私に毎月利息と、当時の薬の代金が分割で入るからさ、正直一生かかっても使いきれないくらいお金が世界から入ってくるんだよね、素敵でしょう?」
絶句する二人に。
「世の中にはね、無償のモノなんて何一つ存在しないんだよ」
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