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第一章 二度目の国外追放

31 片恋

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「あれなんでエディ泣いてるん? ……あー大丈夫?」

「っこの……馬鹿っ!」

「起き抜けに罵倒とかひどっ!?」

「もう、ほんと、……無理」

 私なんか泣かせるような事したっけ?

 起きたら抱きしめられているし……?

 なんか心臓がうるさいし? 

 ほら私、思春期だし?

 コイツ容姿だけは驚くほどいいし?

 それに腹立つけどなんか安心するんだよなエディの匂いは。

 でもエディが容赦なく抱きしめるから、直接肌に手が触れて変な感じがする。

 ……うわ、なんかこれヤバい。 

「……離して、えっち」 

「はぁ? 何が」

「だって私、服着てないし、下着だし?」

「あー。うん、ごめん」
 
「……エディ? いい加減離して、きもい」

「……はい」



 エディはカレンを部屋に戻し。
 過保護めんどいと不平不満を言われるが念には念をいれて治癒魔法を何度も重ねがけして。

 今日は早く寝るように言いつけて、カレンの私室から退出し一人庭でタバコをふかす。

「あー。でも、本当によかった……」

 失わずに済んだ安堵感に息をはく。

「でもあれは、……バレたらまずい」

 口移しでポーション飲ませたって気づかれたら、チェンジって叫ぶわアイツ。

 それにキモいって地味に傷つくし? 

 令嬢達に結構人気あるのになぁ……俺。

 それに離さなければいけないのに、温もりが離れがたくて。

 いくら緊急時でもバレたらあいつの事だ、めちゃくちゃキレて騒ぐはず。

「はー、でも。本当にどうしようか」

 気づいてしまった。

 気づいてはいけなかった。

 自覚なんてしたくなかった。

 どんなに願おうと彼女の隣に自分は立てない。

 その想いは決して報われる事はないし、欲しいなんて願う事すら許されない。

 隠し通さなければいけないこの感情。

「しかもあれ、野生児なのに、……うわ、ほんと最悪」

 と、エディは頭を抱えた。



「それにしても治癒魔法すごいな!?」

 なんか肩こり解消したような気がするし、私も魔力あるってことは治癒魔法とか使えるのかな……?

 古式の錬成陣出来たし、錬成やりたい放題だ。

 でも今回はかなり不味かった。
 ここまで血をもっていかれるなんて想定外。

「いやでもさすが、騎士というやつだな、意識ないやつにポーション飲ませるなんて、どーやってんだろ」

 それになんで抱きしめられてたんだ?

 しかも私の思春期め、あんな顔がいいだけの、オネェにドキドキするなんて一生の不覚である。

 まぁ悪いやつではないと思うけど?

 心配してポーション飲ませてくれたっぽいし?

「あ、また作って渡しとこ……」

 でも口に瓶突っ込むだけで意識ない人間が嚥下できるもんかな?
 
 ……いや、なんか出来ない気がする。

  じゃあ、どうやって?

 口の中から、タバコの匂いがするんだよね、あの五月蝿いやつの。

「えー……まっさかぁ?」

 いやいや、さすがにそれは……。

「っエディー! この変態! 鬼畜! ロリコン!変態! ばかー! チェンジー!」
 
 私のファーストキスがっ!

 あの野郎絶対殺す!
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