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第一章 二度目の国外追放
29 お家探検
しおりを挟むエディが、お隣の公爵家にお出掛けしたので、私は鬼の居ぬ間に探検に出かける事にした。
大人しくしてろって五月蝿かったけど、部屋の外に出るな、なんて言われてないし、ここは私のマイホームだし?
部屋で寝台に寝転がりながら自堕落に読書するのも飽きてきたし。
歩きにくい靴だけど、これしか手元にないから仕方ないなーと、ヒールの高い好みではない可愛らしいミュールを、いそいそと履きなおして適当に髪を手櫛で整えた。
これなら帰ってきた口煩いお世話係に見つかっても文句あるまいと、鏡の前で寝癖チェックしたら、さあいざゆかん! 未開の地へ!!
部屋の扉を開け放ち探索開始である。
無駄に広い廊下を歩き、手当たり次第に扉を開けて、全ての部屋の中を見て回るけど特になにも二階じゃみつからなかったので一階に行くことにした。
何故か無駄に凝った装飾の手すり付きの階段をゆっくりと転けないように降りる。
この靴ほんと無駄に歩きにくいし、足痛いなと、思いつつ無事一階の探索を開始すれば、美味しそうないい匂いと、人の声。
ちょうど小腹も空いたしなんか食べるもんないかなー? とそちらに向かうと厨房らしく中に居た料理人さんに話しかけてみた。
「ねえねえ、おじさん! お腹空いちゃった! つまめるモノなんかない?」
「え! お嬢様?! どうしてこちらに?」
「ん? お散歩してたら美味しそうないい匂いがしてね? お腹空いちゃったから来てみたの。迷惑だった?」
「そんな! お嬢様っ! 迷惑だなんて! 直ぐに! 直ぐに何かお作りさせて下さい!!」
って言ってテキパキとオムライス作ってくれた。
お部屋にお運びしますとか、どうこう言ってたけど、一人で食べるよりみんないた方が、賑やかなほうが好きって言ったら、厨房に椅子とか用意してくれてお喋りしながら美味しく食べてただけだよ?
ってご近所付き合いから帰ってきたエディに話したら、ため息をつかれた!
ため息つくとね? 幸せ逃げちゃうんだよ?
それに私、ご主人様なのになぜコイツにそんな残念なものをみる目で見られているんだろう?
……解せぬ。
と、言うことでお腹も満たされたし、研究室行きたいと、私の事を馬鹿だと思ってそうなヤツに言ったら。
「まだ搬入作業はまだ完全に終わっていませんが、よろしいですか?」
「よろしいですよ? ほら行こう! 今すぐ行こう!」
探索の再開である!
探索パーティーメンバーにエディが加わった!
そしてまた歩きにくい靴で探索を開始すれば、元は大広間を大改装した、とっても無駄に広い私が指定した白いタイル張りの床に白い壁紙の研究室に到着した。
その研究室には、錬金術の材料を収納する棚や、大きな本棚、お洒落な机と椅子、のんびり休憩できそうな大きめのソファなどが、一応だけど一揃え搬入されていた。
中身はまだ空っぽだけど、仕方ないね。
「大広間をこんな風にするなんて、異例過ぎて業者が本当にいいのか何度も何度も確認してたわよ? 夜会もなにもこれじゃこの屋敷じゃ開けないわね」
「絶対に開かないから大丈夫、大丈夫!」
「えー? もったいなーい。みんなここで夜会開いたら、競って招待状欲しがるだろうに」
「私貴族じゃなくて、平民ってやつなので大丈夫!」
「なにいってるの、国賓でしょ貴女?」
「国賓に、してくれなんて一度も頼んでないよ? 私は辺鄙な田舎でスローライフがしたかったな? どうせならば!!」
「貴女まだそんな事いって、ほんとにもう……」
エディが色々と文句言ってくるけど、生まれは公爵令嬢だったかもしれないけれど、イクスで身分制度もなく育った私には貴族とか、厄介な人達とは仲良く出来る自信がない。
絶対に不敬とか何とか言われる自信がある。
「さぁーて! やるか」
「え? ……なにすんの?」
「ここに錬成陣をまた書くだけ! 次は大きいのだから、前よりかなりヤバいけどね!」
「……え?」
「前の時ってナイフで腕を切った事よりも?」
「前はさ簡易的なやつ。そして今回は古代式でこの場所に定着させるやつだからね。大きいから血いっぱいいるし? 前回とは比べ物にならないかな?」
「それはかなり危険なの、よね?」
「そうだね、今回の錬成陣は危ないね? けど何事にも危険は付き物だよ? 錬金術は。なのでエディは退室してもらっていいかな? 気が散る」
「は? 前回よりも危険なのに退室出来るわけないでしょ!」
「えー? 見るつもりー? えっちー! もう仕方ないなぁ? じゃあ……、この椅子に座ってて? 動かないで? 邪魔だから! よろしくね!」
「……わかった」
まあ、古代式の危険な錬金術やるやつなんて、そうそういないけど、エディには黙っておこう。
古代式は危険だけどこっちの方が効率がいいんだよね? ……色々と。
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