【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

文字の大きさ
上 下
530 / 538
〜帰路〜

二杯目

しおりを挟む
「何か…誰かから連絡があったとか…?」

「あ… えっと… 」

なんと、言おう…

一瞬、迷いが生じる。

でも、今この場をなんとか誤魔化せたとしても、空港では間違いなく、杉崎さんと拓海は顔を合わせることになる…
もはや、隠しても仕方ない…

「あの… 実は…」拓海が来ていることを私が口にしようとした瞬間、
「彼氏…かな…? 何か、連絡があったとか…?」
「あ… … 」

杉崎さんが、ゆっくりとした仕草で紅茶のカップをソーサーの上に置く。

「やっぱり、か… なんだか、そんな気がしたんだ…君の、なんとなく浮かない顔を見て…」

「… … … 」何も、言えなくなる…

「それで…彼氏はなんて…?」

杉崎さんの視線が、私に真っすぐに注がれる…。

「あの… えっと、実は… …」

彼氏が…拓海が、私の家の前に来ている…来ていた…
そして、空港まで、わざわざ迎えにくるという…
ただ、そう言えば良い…

「あの…実は、彼が… 」

「あ…もちろん、言いたくない話だったら言わなくていいよ…ごめん、強引だったね…」

「いえ、そんなことはないです…あの、実は…拓海が…彼が…こっちに…いえ、私の家に…来ていたみたいで…」

「え……?」杉崎さんが、少し…驚いたのがわかった。

「あの…本当にいきなりで…こんなことは初めてなんですけど、さっき、着いたよって連絡があって…」

「… … …」

「鍵も持っていないし、部屋には入れないからどこかで時間を潰すって言われて…それで少しだけ動揺してしまって…あの…だから、さっきは変な態度を取ってしまってすみません… 」

「… … へえ … …」

「空港にも、迎えに来るって言われて… 」
それ以上聞かれてもいないのに、私はそう補足した。

「そっか… … … 彼が… …」

杉崎さんがそれきり、静かになってしまった。
杉崎さんは無言で再び紅茶のカップを優雅な仕草で手に取り、口元へ運ぶ。

その後の彼の言葉に、思わず、心臓が跳ね上がりそうになった…。

「それで… 彼… 彼氏は今夜…水無月さんの家に、泊るの… ?」

「え… … ? えっと、…」それはもちろん、そうだ… さすがに、今日の今日で、追い出せない…

「はい…多分… 今日はそう、なる…かと… 」

嘘はつけない… 
いきなり、別れを告げて…今日は泊らないで欲しいなどと、福岡から遥々来た拓海に、言えるはずもない…。

「… そっか… … 」杉崎さんは、そう、一言だけ答えた。

「あの…杉崎さん… ?…」
杉崎さんにどう思われているのか少し不安になった私は、言葉を続けようとした。
だけど、すぐに杉崎さんの言葉に阻まれる…。

「…そうそう…さっきまた水無月さん、謝ったね…これで、キス、二回分…楽しみだな…」

「えっ…!?」

「…  ま、… 次回のお楽しみにしとくよ… さ、まだまだ時間はある…紅茶のお代わりはどうかな…?」

杉崎さんはそれきり、拓海の話には一切触れずに、

いつものように、私に向かってふわりと微笑んだ。












しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...