【完結 R18】ほかに相手がいるのに

〜帰路〜

ペナルティ

「ん？…どうしたの？水無月さん…　そんなにじっと見つめられるとちょっと…」

「あっ…　す、すみません！いただきましょう！」

「ほら…また…君からは「ごめんなさい」と「すみません」という言葉を、奪ってしまわないといけないね…」

窓の外から映るキラキラした緑を背に…
優雅に紅茶のカップを手にする杉崎さんが、絵になり過ぎて…思わず目を逸らす。

「そんな…　…　それはちょっと、困りますね…社会人として…」
慌てて、私もカップを口元に運ぶ。

「あっ、ッっ…！」即座に…カップをソーサーに戻す。
「あっ…大丈夫…！？　猫舌、だったよね…　？早く、お水飲んで…」
「は、い…　すみません…」水を、流し込む…。

馬鹿か、私は…　
さっきからぼうっとしたり、慌てておかしな行動ばかり取ってしまっている自分に辟易する…。

「ちゃんと冷まして、飲もうね…　あと、今また「すみません」って言ったから…、これはもうペナルティだね」

「え…　？　」

「……　１回分、君に、……　する権利を、ゲットしました。」
杉崎さんが悪戯っ子のように微笑んで…何かのゲームのような口調で、そう言った。

一瞬言葉を失う。それと同時に、耳を疑った…

「　ええ　…？」

「だから、キスの、権利…　」綺麗な顔で微笑んで、小声で囁く杉崎さん…

「そ…そんな…」

「大丈夫…もちろん人前ではしないから…だからもう、俺の前では簡単に謝らない方がいいと思うよ…？」

急激に…体温が上昇していくのがわかった…
杉崎さんがそんなことを言うのが信じられない…そんな気がした…。

「それで、何があったの？良かったら話して欲しい。朝食で別れた後から、君の様子が少し変だ…これは直感だけど…俺に関係することじゃないのかなって、思って」

「え…　…　…　」私は驚いて…杉崎さんを正面から見つめた…。