【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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〜2人の距離〜

お互いの話

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「はい…駄目ですね、このままじゃ…実は今週末、…彼氏…拓海がまた、こちらに来る予定なんです…だから…その時に…少し話せたら…とは、思ってるんですけど…ちょっとまだ…私自身の心の整理が…できてなくて…」

これは私の本心だった。

高校時代から何年も付き合っている拓海…私の面倒くさい性格も、何もかも、全てを…多分、私の家族と同様…もしくは家族以上に、熟知している拓海…。
そして、今でも好き…決して嫌っているわけでない…拓海を…拓海のことを、

裏切る…

ううん、既にもう、裏切っている…けど、

もっとはっきりと理由を説明したうえで、彼に…

…拓海に、別れを告げることが…出来るだろうか…。


拓海に取り立てて、悪いところがあるわけでも無く…

ただ、…私が杉崎さんのことを…いつの間にかこんなにも…好きになってしまった…
ただ、本当にただ、それだけのことで…拓海に…別れを告げることが出来るだろうか…

そのことを伝えた時、拓海はどんな表情をするだろう…。

どんな風に、私をなじるだろう…
今までに、杉崎さんとしたことを正直に話せば、心の底から、軽蔑されるかもしれない…尻軽だって…ふしだらな、不潔な女だって…罵られるか…

でも…ううん、きっと、拓海はそんなことはしない…

ただ、深く…

心の底から、失望されるだろう…
     それだけは間違いない…。


「そっか…週末に…」

杉崎さんの呟くような声に、ハッとする…。

また、私は会話の途中で、自分の頭の中だけで思いを巡らせていたようだ…瞬時に、現実世界に戻る。

「はい…話してみます…拓海がどんな風になるか…納得してくれるかはわかりませんが…言ってみようとは思っています…。」

「うん…俺も…智花に…今度、話そうとは思ってる…智花は同僚だ…だから君が嫌な目に合わないように、もちろん…冷静に、話すから…安心して…」

「ありがとうございます…では…そんな感じで…」

  シーン…とする空間。

なんだか突然、お葬式のように雰囲気が暗くなった…そんな気がした。

そこへ、「デザート、お待たせしました…」また、同じ女性店員が、明るく杉崎さんに微笑みかけながら、デザートのプリンを卓上に載せていく。

「ありがとう…あ、すみませんが、あれば、温かいお茶を二つ…」

「あります。かしこまりました!」明るい声で返事をし、すぐに下がる女性。

杉崎さんが静かになった…?
なんとなく黙り込んでしまったような…そんな気がする…私、何か悪いこと…言った…?


そう思いつつも、「いただきます」そう、独り言のように呟いて、

キラキラと光るカラメルソースがかかった美味しそうなプリンに、

私はゆっくりと、スプーンを差し入れた。


この時の私は、まるで子供のように単純な思考だったのかもしれない…。

…この後、
杉崎さんがあんな風になるなんて…想像もしていなかったのだ…





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