【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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〜2人の距離〜

罪悪感

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食事も終わりかけた頃、杉崎さんが口を開く。

「そうそう、水無月さん…クルーズディナー楽しみだね!実は俺、行ったことがなくて…でも前から興味はあって…だから主任にチケットを見せられた時、これは取り敢えず貰っとこうって、そう思ったんだ。」
杉崎さんがそう言って、私に微笑みかける。

「実は…私もなんです…。でも、咄嗟に欲しいって、あの場では言えなくて…だから良かったです。杉崎さんがすぐに主張してくださって…ただ、私がその相手として誘ってもらえるかどうかは…わかりませんでしたが…」

有効期限も長いし、たとえば林さんが帰省した時に、杉崎さんと彼女が二人で行くこともできたはずだ…。

もしくは私がもらって、拓海と二人で行くことだって…できたはずだ。

「…俺は君と行きたいと思って、すぐに手を挙げたんだ…。だから他の人と行くなんてことは全く、頭になかったよ…?本当はいけないことなんだけどね…今の状況じゃ…。」

杉崎さんが、ゴトリと空になったグラスを置く。

「あ…何か頼みましょうか…?」そう、声をかけると、

「ううん、もう大丈夫…もうすぐデザートが来るし、その時にお茶を頼むよ…それでさ…あの…」

杉崎さんが言いにくそうに、私を見ながら話し始める。

「あの…君と俺、…の、これからのことなんだけど…」
言いながら、真っすぐに私を見つめる杉崎さんの綺麗な目…視線が絡んで、ドキリと心臓がなった気がした…。

「俺は…君が好きで、できれば、付き合いたいと…そう、思ってる…だけど…俺と君には今、お互いに付き合っている人がいる…だからさ…駄目だよねこのままじゃ…」

彼の言いたいことはわかる…。

このままでは、お互いの相手に、悪い…悪いとしか、言いようがないのだ…。
そこをはっきりしないと、少なくとも私と杉崎さんがどうこうとか…そんな話に、これ以上進むことはできない。

もちろん…お互いに相手がいるのに…

旅館であんなことまで…してしまったことへの罪悪感は、消え去ることはない。

拓海に週末に会った時に、まっすぐに彼の顔を見ることが出来るのか…

それすらも、わからないままだ…。



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