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~続く日常~

私の性分

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私と拓海はその後、時間の許す限りゆっくりと食事を済ませた後、ホテルを後にした。

「なあ、あのホテル、すげえ、良かったな…飯、めっちゃうまかったし、設備もなんか、やーらしくて…最高だった…見たか?あの、天井の鏡…。あんなん、俺は初めてだったな…まあ、テレビとかではもちろん、観たこともあったけどさ…」拓海が道端を歩きながら、こそこそと興奮した様子で私に耳打ちする。

やめて欲しい…

確かに小さい声ではあるが、もしも人に聞かれたら、どうするつもりなのか…
拓海の発言を否定するでもなく、咄嗟に別の話をする。

「うんまあ、そ…だね。それより、今日の夕飯、なんにしよっか?カレーなら作り置きがあるんだけど…あ、そうそう明日って何時の飛行機?」

「明日は4時発だ。んー…だから遅くても、3時過ぎに空港に着いてなきゃいけない…。あーもっと本当は、ゆっくりおまえんちに、何泊かしたいんだけどな…仕事さえなけりゃな…また月曜から、ストレス生活の始まりだわ…」

拓海が、そう言いながら深いため息をつく。

何泊も…されたら困ってしまう。

拓海に久しぶりに会えるのは嬉しいし、一緒にいられて楽しいのは事実だけど、本音では、あまり長いこと居座って欲しくない…そう思っている自分がいた。

私はもともと、人と群れるのが好きではない…。

食事会にしろ、飲み会にしろ、友人との旅行にしろ…ないならないで、むしろない方が本当はいいと思っている。

行けば行ったで、どうしても…気を遣って疲れてしまうのだ。

楽しい場面はもちろんあるし…特段嫌いな人間がいるわけでもない…

ただ、人が気にしないようなどうでもよいと思われることが気になったり、妙に落ち着かなかったりして、本当の意味で、心から楽しむことができないのだ。

それは拓海でも例外ではなかった。

拓海とは付き合いも長く、一緒にして楽しいし、他の人と比べると、比較的なんでも話せているから一緒にいて楽…
それはもう、間違いのないことだけど…それでもやはり、他人に違いないのだ…

だから、拓海を送り出した後、本当の意味でほっと一息つけるような…そんな感覚。

こんな私の性格では、この先、人との共存は無理なのかもしれない…

自分ひとりでいる方が…楽…本当に気楽…何も、考えなくてすむし、気を遣わない分、「無」になれる。


だから、いくら拓海が、結婚しようと私に言ってくれても、ピンとこないし、嬉しいという感覚が薄いのだ…まだ、一人でいい…一人を満喫したい…。

もしかしたら、まだ、というより、ずっと一人でいいのかもしれない…

普通の年頃の女性が思い描くであろう、好きな人との同棲…結婚、出産…
私には無理かもしれない…
この性格では…一生独り身の方がきっと楽に生きていける…

気付けばマンションへ着いていた…

慌てて、鍵を開ける。

「…疲れたでしょ?珈琲入れるから…座って待ってて。」
         
私は拓海にそう言って、キッチンへ向かった。












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