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~日常~

維持

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私はその後、すぐにその場所から離れ、足早に、杉崎さんとの待ち合わせ場所近くのデパートへ向かう。

本当は手を洗った後メイク直しまでするつもりでいたが、とても細野さんの前ではできないと思った。
きっと彼女なら、私がメイクをしている間中ずっと、何の遠慮もなく、その後の私の行動を詮索し続けるだろう…。

そうだ…さっきの助け舟のようなタイミングで来たメール…。
先ほどのメールは誰からだろう…バッグから取り出し、即座にメールの送信者を確認する。

「あ… なんだ、… 」

メールは母親からだった。

しばらく仕事が忙しくて帰省しておらず…しかも、最近は特に、私のメールの返信が素っ気なさ過ぎたのかもしれない。母のメールは一人暮らしの私を心配してか、文面がやたらと長いことが多くて、少しだけげんなりした気持ちになりつつ、それでも母親からのメールだとわかった途端に、心底ホッとする。

もし仮に、ないとは思うが本当に仮に、拓海からの連絡であれば再び心がざわざわしてしまうからだ。

あれからまともに拓海とは話していないが、もう、本当に拓海とは終わった。
そしてそれは、拓海自身も理解していることだと思う。

杉崎さんが彼のことはもう気にしなくていいと言ったあの夜の言葉は、杉崎さんと拓海が何を話したのか詳細も知らされていないのになぜだか、本当にそうしていいような気さえするほどに、私の気持ちを落ち着かせてくれた。

「… … … 」

デパート内のお手洗い併設のメイクルームでメイク直しを終え、鏡の中の自分を再確認する。

細野さんにはいつも通りのメイクだと答えたものの、確かに普段よりは若干メイクが濃いような気がする…。
リップももしかしたら自分で思う以上に、色味というか艶が出過ぎて、派手過ぎただろうか…。
一旦綺麗に落として、普段の艶がないリップに変える時間も残ってはいる…。

杉崎さんに、今夜は張り切り過ぎている…頑張り過ぎているなどと思われるのは本当に恥ずかしいし、悲しい。

それでも単なるリップ…リップの種類がほんの少し変わったくらいで杉崎さんが気付くとは思えない…。
私はしばらく悩んだものの、結局気持ちをなんとか上げて、そのままのメイクを維持した。

今日は、杉崎さんの顔を見て、まともに話をすることが出来るだろうか…。
普通に笑える…?目を見て、ちゃんと話せる…?

 私はどうしてこんなにも、杉崎さんのことを好きになってしまったんだろう…

  そんなことを思いながら、なんとか心の動揺を抑えつつ、約束の店へ急いだ。





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