【新作(番外編)】ほかに相手がいるのに

もえこ

文字の大きさ
上 下
8 / 26
~日常~

緊張

しおりを挟む
「杉崎様のお連れ様ですね、こちらへどうぞ…」

「はい。」

長い廊下を進み、「失礼します。お連れ様がお見えになりました。」

案内の女性が中に声を掛けた後、静かに襖を開ける。

「お疲れ様、水無月さん。仕事の方は大丈夫だった…?」

にこりと微笑む杉崎さんの顔が眩しくて、一瞬、間が開いてしまう。

「あ…の、大丈夫です…すみません、お待たせしてしまって…。」

「いや…ていうか、まだ全然、時間前だよ。ほら、まだ10分以上ある…まあ、座って。」

「はい…」

ゆっくりと杉崎さんの前に座る。

「では…お料理をお持ちしてよろしいでしょうか…?」

「はい…お願いします。水無月さん、飲み物は何にする…?俺は期間限定のこれにしようかなと…さっきから気になってて」

杉崎さんが、メニューの中の季節限定の梅酒の写真が載ったページを指さす。

「あ… いいですね、この梅酒…美味しそう…!私も、同じものにします。」

「じゃあ…すみませんがこれを二つ、お願いします。」

案内の女性に微笑みながら注文をする杉崎さんを見ただけで、胸がドキドキしてくるのはなぜだろう。

「かしこまりました。しばらくお待ちください。」

スッと襖が閉まり、シンとする室内…。

自分の鼓動が聞こえてきそうなほどに、緊張感が増す。

本当にどうしたんだろう… 職場で毎日顔を合わせているというのに…。
私のそんな感情を知る筈もない杉崎さんが…

「… やっと… 」静かに、言葉を発した。

「… はい… 」

「やっと、二人きりになれたね…」

そう言って…私を正面から真っ直ぐに見つめてくる杉崎さんの瞳の光の強さに、ドキリとした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...