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~帰路~
帰宅
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「ありがとうございました。」
タクシーの運転手が、軽くお辞儀をして去っていく。
あっという間にマンションまで来てしまったことに、ある種の落胆を覚える…。
もう少し、考える時間が欲しかった…。
拓海は部屋に入ればもしかしたら…別れの理由を、さらに深く尋ねてくるかもしれない…
そんな時、どんな風に話せば拓海に納得してもらえるか、もう少し考えたかった…。
「 …さ… 行く、か… 」
拓海は私の顔を見ずに真っすぐと前を見つめてそう、独り言のように口にした。
「… うん … 」
行くかと言われて…
ここまで来て…もはや、部屋に上がらないでとは言えない…
ふと、頭をよぎる疑問…。
世間の恋人たちは、果たして付き合ってきた相手に対して、どんなタイミングで別れを告げるのだろうか…。
これは単なる予想だが、
きっと…どちらかの部屋で相手に伝えたりはしないに、違いない…。
お互いが、別れに合意している場合ならともかく…
どちらかが異議を唱える可能性のある一方的な別れの場合は…きっと、
外で…私が当初予定していたように喫茶店とか、とにかく自分の部屋以外の、外で告げるに違いない…。
だってきっと、部屋の中でそんなことを言うのは気まずすぎる…。
相手の性格次第では、危険だと言ってもいいのかもしれない…。
不本意なことを告げられて、言われた側が、逆上しないとも限らない…。
ああ…
今更後悔しても遅いが本当に…
なぜ、今日に限って、気持ちを抑えられなかったのかと自分自身を呪いたくなる…。
演じることが出来ていれば…
拓海にホテルに強引に誘われても、なんとか、いつものように押されながらも、応じていれば…
そして拓海が向こうへ…福岡へ帰った後に、電話かメールで、文章をしっかり組み立てながら…
きちんと別れを告げることができていたのかも、しれない…
「おまえ…今、何、…考えてる…?」
考えている最中、突然上から声が下りてきて、身体がビクンと跳ね上がる…。
エレベータの中…拓海の方を見上げる。
「… 何…ビビってんの…? 」
「ビビッて、なんか… な、い…」
「…別に…取って喰やしない…そんな、ビクビクすんな…まるで俺が悪者、みてえじゃん…逆だろ、逆…おまえが悪者じゃん…流れ的に…マジでさ…」
そう言って少しだけ笑う拓海に、ほっとする自分がいる。
笑って、くれた…
もしかして…そんなに私が想像するほど、拓海は怒っていない…?
ひょっとして、少しだけ…こういうことを…
私がこんな話をすることを…予測…していたのだろうか…
「別にビクビクなんて、…してない… 」なんとかそう、口にする。
「ん…まあ、いいや…とりあえず、入れて…俺、なんか朝から疲れたし、まずはすぐに風呂入りてえ…」
「うん…すぐに準備、する…どうぞ…」
ドアを開け、拓海をいつものように招き入れる…
次の瞬間、後ろ手にドアを閉めた拓海が、いきなり私を玄関横の壁に押し付ける…。
「え… … たく、… 」目の前に、大きな拓海の胸板…
ドサリ…
拓海は自身が持っていた荷物をその場で床に落とし、私を力強く、抱き締める…
「拓海っ…!? や、 んんっ… !ん…んぅ… 」唇を、強引に押し付つけられる…。
ああ… 駄目、だ…
拓海の強い力で…身体ごと壁に押し付けるようにされ、両手で頬を包まれ、唇を強引に塞がれる…。
「… ん… ん、 …は… 」
だから、嫌だった… 密室が怖かった…
いつもよりずっと乱暴な拓海の荒々しい、キス…
抵抗しているのに、無理矢理に…熱い舌が口内に入ってきたことに嫌悪感を覚えた…。
「ん… んん … 」
全部が、間違いだった…
馬鹿な私の判断が…こんな事態を招いたのだ…。
杉崎さん…
私の頭の中を…
杉崎さんの優しいキスが、よぎった…
タクシーの運転手が、軽くお辞儀をして去っていく。
あっという間にマンションまで来てしまったことに、ある種の落胆を覚える…。
もう少し、考える時間が欲しかった…。
拓海は部屋に入ればもしかしたら…別れの理由を、さらに深く尋ねてくるかもしれない…
そんな時、どんな風に話せば拓海に納得してもらえるか、もう少し考えたかった…。
「 …さ… 行く、か… 」
拓海は私の顔を見ずに真っすぐと前を見つめてそう、独り言のように口にした。
「… うん … 」
行くかと言われて…
ここまで来て…もはや、部屋に上がらないでとは言えない…
ふと、頭をよぎる疑問…。
世間の恋人たちは、果たして付き合ってきた相手に対して、どんなタイミングで別れを告げるのだろうか…。
これは単なる予想だが、
きっと…どちらかの部屋で相手に伝えたりはしないに、違いない…。
お互いが、別れに合意している場合ならともかく…
どちらかが異議を唱える可能性のある一方的な別れの場合は…きっと、
外で…私が当初予定していたように喫茶店とか、とにかく自分の部屋以外の、外で告げるに違いない…。
だってきっと、部屋の中でそんなことを言うのは気まずすぎる…。
相手の性格次第では、危険だと言ってもいいのかもしれない…。
不本意なことを告げられて、言われた側が、逆上しないとも限らない…。
ああ…
今更後悔しても遅いが本当に…
なぜ、今日に限って、気持ちを抑えられなかったのかと自分自身を呪いたくなる…。
演じることが出来ていれば…
拓海にホテルに強引に誘われても、なんとか、いつものように押されながらも、応じていれば…
そして拓海が向こうへ…福岡へ帰った後に、電話かメールで、文章をしっかり組み立てながら…
きちんと別れを告げることができていたのかも、しれない…
「おまえ…今、何、…考えてる…?」
考えている最中、突然上から声が下りてきて、身体がビクンと跳ね上がる…。
エレベータの中…拓海の方を見上げる。
「… 何…ビビってんの…? 」
「ビビッて、なんか… な、い…」
「…別に…取って喰やしない…そんな、ビクビクすんな…まるで俺が悪者、みてえじゃん…逆だろ、逆…おまえが悪者じゃん…流れ的に…マジでさ…」
そう言って少しだけ笑う拓海に、ほっとする自分がいる。
笑って、くれた…
もしかして…そんなに私が想像するほど、拓海は怒っていない…?
ひょっとして、少しだけ…こういうことを…
私がこんな話をすることを…予測…していたのだろうか…
「別にビクビクなんて、…してない… 」なんとかそう、口にする。
「ん…まあ、いいや…とりあえず、入れて…俺、なんか朝から疲れたし、まずはすぐに風呂入りてえ…」
「うん…すぐに準備、する…どうぞ…」
ドアを開け、拓海をいつものように招き入れる…
次の瞬間、後ろ手にドアを閉めた拓海が、いきなり私を玄関横の壁に押し付ける…。
「え… … たく、… 」目の前に、大きな拓海の胸板…
ドサリ…
拓海は自身が持っていた荷物をその場で床に落とし、私を力強く、抱き締める…
「拓海っ…!? や、 んんっ… !ん…んぅ… 」唇を、強引に押し付つけられる…。
ああ… 駄目、だ…
拓海の強い力で…身体ごと壁に押し付けるようにされ、両手で頬を包まれ、唇を強引に塞がれる…。
「… ん… ん、 …は… 」
だから、嫌だった… 密室が怖かった…
いつもよりずっと乱暴な拓海の荒々しい、キス…
抵抗しているのに、無理矢理に…熱い舌が口内に入ってきたことに嫌悪感を覚えた…。
「ん… んん … 」
全部が、間違いだった…
馬鹿な私の判断が…こんな事態を招いたのだ…。
杉崎さん…
私の頭の中を…
杉崎さんの優しいキスが、よぎった…
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