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~帰路~

廊下

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「ん… んうっ…  た、くっ… 離し、… んんっ…」

玄関前の、狭い廊下…

何度も拓海の腕の中から逃れようと身をよじるが、あまりに力の差がありすぎる…。

くちゅ… ちゅ… 
拓海は私が抵抗している様子に構わず、何度も舌を差し入れてくる…。

「ん ぅ … んっ 」

熱い舌…
逃げても、執拗においかけてきて、私の舌に絡んでくる…

だめ…    もう、嫌、だ…

なぜなんだろう…

私の心の中に…
今まで感じたことがない…どうしようもないくらいに暗い…負の感情が渦巻き始める…。

前まではそんなに…
嫌ではなかった気がするのに…。

拓海のキスだって、嫌じゃなかった…
抱き締められるのだって、嫌じゃなかった…。
セックスだって…
多少の…不満はあっても、すること自体、そこまで嫌ではなかった…

遠距離恋愛だからこそ…
私にだって、そういうことがしたくなる時だって、あった…。

でも、なぜか今は… 離れたくなる… 
この逞しい身体を、自分の身体からただちに引き離したくなる…。

したくない…

拓海とそういうことを、もう…したくない…
その一心で、次の瞬間、両手に力を込めて、思い切り拓海の身体を引き離す…。

「やっ… やめて… 拓海っ… 私、もう…」 …無理だから…

その言葉を続けることができない…

驚く拓海の表情が目に入り、ズキンと胸が疼くような感覚を覚える。

「… っち… な、んだよ… 葉月…おまえさ…、なんなんだよ…マジで… 」

拓海があからさまに不機嫌な顔をして私を見下ろし、あまりにもわかりやすく舌打ちをする…。

拓海が、赤の他人に対してイライラした時に…たまにその人に見えないところで舌打ちをすることはあっても…
私に対して、こんな風に舌打ちするのは初めてかもしれない…

そんな、今本当にどうでもいいことを…頭の隅で考えてしまう自分がいる…。

「… ごめん… でも、…やめて… 」拓海を見上げる…。

充血したような目… 
眉間に、深いしわが刻まれている…。
怒っている…私がいつになく抵抗したことで、頭に来ているのは確実だ…。

「… はあ…  … ごめん、ごめんってさ…おまえ、今日会ってからそればっか…」

「… (ごめん…)… …」

また、同じように謝罪の言葉が口から飛び出そうになり、私は押し黙る…。

「も、…いい… とりあえず…とにかく、風呂…入らせて…すげえ疲れた…」

拓海がゆっくりと…いつものソファーの定位置に腰をおろす。

「 … うん…ちょっと、待ってて… 」 

なんとか、やめてくれた…

拓海が項垂れて、目を閉じる様子に内心ほっとしながらも…その態度は出さずに、
私はすぐさま浴室へ向かった…。




















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