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~帰路~

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「… たく、み …」

シンとした、店内…

違う…

本当は少し位置的には遠いが、他に客もまばらにいる店内…
周りは人の話し声で、ざわざわしている…

だけど私と拓海の間にだけ、しばらくの時間、静寂が訪れる…。

「はあっ… … 」
拓海が、深いため息をついて下を向いたため
その表情は見えない…。

怖い…
怒っているのかもしれないと、思った…。

「… たくみ… あの、… 」

「おまえの話って、それ…?」

「え… … 」

「前に電話で言ってた… 今度、俺んとこ… 福岡に来るって…来たいって、言ってたのもそれ…?」

「 … … 」

「…おまえ、飛行機嫌いなのに珍しいなって…俺が福岡に呼んでも全然来たがらなかったのに、なんでだろうって…」

「… … … 」

「それが理由、…なのかよ… もしかして… 別れたいって…俺に別れようって言うために、わざわざ俺んちに来ようとか、思ってたってこと…?」

「…  …えっと… … 」

その通りだ…でも、正確には、少しだけ違う…

福岡に赴き、拓海の家にはあがることなく、喫茶店のような場所で別れを告げようと思っていた…。

拓海の家にお邪魔して、どうやったらそんな雰囲気になるだろう…
ひざを突き合わせて…
小さな部屋で…お互いに顔を見つめながらそんな告白をすれば、拓海はどんな反応を示すだろう…。

怖かった…。

拓海は本来、優しい人間だ…。
ぶっきらぼうなところがあるが、とても…
だからこそ怖かった…。
私の申し出が、どれほど拓海を驚かせ、拓海にどんな表情をさせてしまうのか…

とにかく、二人だけの密室で…そんな深刻な話をするのが怖かったのだ…。

「… ん… そう、…本当は、そのつもり…だった…だから今日、拓海が突然こっちに来て、びっくりして…」

「… … … … 」

「もう…このままじゃ駄目だって思って… もう、言わなくちゃって…せっかく来てくれたのに、こんな話してごめん… たく、み… 拓海…? 」

「… … … 」

拓海は静かにうつむいたままだ…
こちらを見ようともしない… 

もう、目の前にいる拓海は、いつもの拓海とは違う…。
それだけはわかった…。




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