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~帰路~

言葉

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「は… 美味かった… けど、想像以上にボリュームあったわ…」

カチャと音をたてて、拓海がナイフとフォークを揃えてお皿に置く。

「ん… そうだね… 美味しかった…やっぱ、お肉がジューシー…人気なのがわかるね」

遂に…食事の時間が終わってしまった…。

ハンバーグが美味しかったのか…そうではなかったのか…
ジューシーなどとつい言ってしまったが、正直、味などよくわからなかった…

時間にして、食事の時間は30分程…
いつになく、沈黙していて…
何を話し出せばよいのかすら、わからなくて…

私と拓海の間には、ただただカチャカチャと互いの操るカトラリーの金属音が響き続けていた…そんな食事だった。

「ふう…」拓海が椅子の背もたれにもたれ、お腹をさするような仕草を見せる…。

顔を上げた瞬間、不意に拓海と目が合い…ドキリと心臓が跳ねた。

「あ… えっと、そうだ、食後に珈琲…ついてたんだった…もう持って来てもらうように言おう、かな…」

「… … … 」私の言葉に、なんの反応も示さない拓海に怖くなる。

「あ、あのっ… 」いたたまれないような気持ちになり、慌てて手を上げようとすると、店員がすぐさま私の動きを察知して、ゆっくりテーブルに近寄る。

「はい…お待たせしました…食後の珈琲…お持ちしてもよろしいですか?」

そう言って、にこりと微笑む笑顔が眩しかった。
「はい、お願いします…」私は直ぐに小さく頷く。

「では、すぐに…お皿、お下げしますね…」

カチャカチャと手際よく私と拓海のテーブルに並ぶ食器類を片付け、
「しばらくお待ちくださいませ」最後に丁寧にそう言って、店員が去っていった。

「… … … …」

店員さん、まだ…行かないで欲しかった…
本当は、そんなにも早く、てきぱきと片付けて欲しくなかった…。
まだ、この場を離れて欲しくない…
そんな気持ちが胸に渦巻くのを感じつつも、もう、既にここには…誰もいない…
ここには、拓海と私だけ…もう…これ以上、引き延ばすことは出来ない…

今すぐ、この場所で…言わなければ…

別れたいと、ただ、一言…。

私は再び気持ちを奮い立たせて、拓海を正面から見つめて「拓海…」と、言葉を発した。

「… … … 」拓海はじっと私の顔を見つめたまま、何も答えない…。

構わず言葉を続ける。

「あのね…前に言ってた…さっき言ってた、話…もう、ここでしていいかな… ?」

「… … …」
拓海の目が、私の目を射抜くように強く見つめ返してきたような、気がした…。

さっき…食事をしていた時とは違う、少し、鋭い目つき…

「あの… 」すぐに、自分自身の心が小さくしぼんでしまうような感覚を覚えるが、無理矢理に言葉を絞り出す。

「… なんだよおまえ… そんな、かしこまって…」

「あのね… 拓海… 私… … …」

「… あ…? …何、… 」
拓海の声が、低くなるのがわかった…
不機嫌な時の声に、近い…。 

だけど、もう発言は、止められない…

「私と… 別れて、欲しいの… 」小さく、呟く…。

やっと…やっとだ…  

やっと、口にした…
やっと、口にできた…拓海に対する、別れの言葉…

「… … は … な、んだ… なんだって… ?」

拓海が呆然とした表情で私を見つめ、気の抜けたような声を、発する…。

「…だから…私と…別れて欲しい…もう…拓海とは無理、なの…ごめん…ごめんなさい 」

「… … … … … 」

無言で私を見つめてくる拓海の視線に耐えられず、
私は思わず…

        拓海から視線を逸らした。














  
















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